近年ステーションの増えつつある訪問看護。まだまだ未知の領域なことが多い業界ですが、訪問看護に飛び込んで一番の不安は利用者さんの異変に気付けるかどうかではないですか?私も一番不安に感じていたのですが、異変を感じる為に必要なスキルは、何気ない日常の訪問にすべてありました。訪問看護を経験して分かった異変に気付けるアセスメントのポイントをお伝えします。
近年まち中に訪問看護ステーションを見かけることが増えたと感じませんか?
病棟での入院日数を減らす動きもあり、訪問看護は身近な存在になりつつあるなと感じます。
しかし「訪問看護って何するの?」と興味がありつつも一歩前へ出せない方が多いのではないでしょうか。
足が出ない理由として、「人の家で一対一で看護すること」や「訪問した時に自分だけで異変に気付けるか」ということに不安を感じている方も少なくないですよね。
実は、訪問看護への不安はすべて「知らない」ことから来ていますよ。
今回は、私が訪問看護で経験した「人の家で看護することで見えてくる利用者さんの全体像」と「訪問していたからこそ異変に気付けたアセスメント方法」についてご紹介します。
読んでくださった後には、きっと訪問看護への不安が和らいでいますので是非ご覧ください!
まずは「人の家で看護することで見えてくる利用者さんの全体像」です。
人の家にお邪魔すること自体、なかなか日常生活でも気が引ける行為ですよね。
私も訪問看護を始めたころは、利用者さんについてもよく分かっていないのに、家へ入るのは不思議な感覚でした。
しかし、相手である利用者さんも実は同じなのです。
ある利用者さんから「慣れた看護師さんが来るのは安心だけど、やっぱりいつまでも人が来るというのは緊張するもの」と言われたことがあります。
たしかに、自分が利用者でも「きれいにしておかないと」と少しは思うものです。
だからといって、いつまでも距離感があっては看護にはなりません。
最初は身体のことや、今日食べたものでも何でもよいのでお話をしてみてください。
徐々に利用者さんの性格や、生活スタイルなどが見えてきますよ。
訪問看護には利用者さんの全体像を把握していることが、アセスメント上とても重要です。
看護学校で教わった関連図を思い出してみてください。
本人と病気をつなぐには様々な関連がありましたよね。
病棟勤務などではなかなか見えてこなかった、関連キーワードが利用者さんの住む家にはたくさんあるのです。
例えば、「毎日疲れてヘトヘトだ」と話す片麻痺のある利用者さんの例をあげてみます。
“自宅に老夫婦で住んでおり家事は健康な夫がしているのかと思っていたら、利用者本人が数時間かけて家事をこなしていた。夫は日中でかけており帰宅しても何もしない。部屋の中には麻痺側の動きを補うために家のあちこちに棒が置いてある。”
という事例がありました。
なぜ「毎日疲れてヘトヘト」だったのか、これで分かりましたね。
こうして何気ない言葉や、生活部分を見て、話して、触って感じることができるのが訪問看護の醍醐味です。
何気ない言葉や生活に表れたキーワードは、次に話す「訪問していたからこそ異変に気付けたアセスメント方法」にも活きてきます。
具体的な例を話しつつ、次のアセスメント方法についてもご紹介していきます。
利用者さんの住む家には、アセスメントにつながるキーワードがたくさんあると言いました。
さらに、具体的な例を上げて一緒に見ていきましょう。
“独居だが、自宅近所にご家族がおり定期的にサポートしてくれている。
自身でも買い物に行くなど、「生活上困ったことはない」と最初は話される。”
ここまでは、一見何不自由ない生活で、看護の必要性は感じないかもしれないですね。
しかし、訪問を重ねて話を聞いていると
“「実は家族には言えないけど、◯◯が痛い。病院に行きたい」
「自力でなんとかやってるから大丈夫」といいながら訪問者が来るので部屋はきれいにしておきたい。でも風呂や、好きに食事を摂ることは贅沢だから我慢している。
”
ということが分かってきました。
よく部屋の中を見ると、部屋内はきれいに整頓されているが、風呂はしばらく使われてない上に衣服の汚れが先週と同じだったり、冷蔵庫の中身がいっぱいに見えていたが数年前に賞味期限が切れたものなどでほとんど食べられないものばかりだったりという状態が見えてきたのです。
こうした発見が、本人に関連づいた日々の生活から見えるキーワードです。
この利用者さんの場合、体力不足や独居での生活が少しずつ難しくなっているとアセスメントし、訪問看護の時間内で入浴介助などを提案しました。
しかし、遠慮気味な利用者さんであり「まだ大丈夫」というのです。
本人と何度か話し合いを重ね、状態をご家族やケアマネジャーと共有することにしました。
その後数カ月経って、介護サービスで入浴介助や買い物の補助を導入することができ、一旦生活は持ち直すことができたのです。
利用者本人としても、最初は遠慮していたが「早く頼めば良かった」と安堵された表情を見ることもできました。
しかし数カ月経過後、再び生活が乱れ始め、最終的には部屋内に物が散乱し「どうしたらいいかわからない」とパニックを起こしている状態が続くようになりました。
以前の遠慮気味な性格で、部屋も几帳面に片付ける方であることを知っていたからこそ「何か違う」と気付けた異変でした。
異変は前述のように、突然ではなく徐々に来ている異変もあります。
突然ではない異変こそ気付けるのが、普段訪問して状態を知っている看護師であることもあるのです。
訪問看護として日々の訪問からキーワードとなる情報を集めてアセスメントし続けることは大切です。
「そんなことできるかな」と不安に思ってしまいますよね。しかし、何気ない日々の訪問があるからこそ、こうして気付ける異変は多くあるのですよ。
そして、訪問看護は一人ではありません。
実質は一対一の訪問で、自身の知識やアセスメント力が試される現場でもあります。
「もし自分のアセスメントが違っていたらどうしよう」と私も最初の頃はずっと不安でした。
しかし、利用者さんをサポートしているのは訪問看護だけでなく、医師、ご家族、ケアマネジャー、デイサービス、ヘルパーさんなど多くのサポーターがついています。
時に情報交換していると「そんなこともあるのか!」と利用者さんの知らない一面を知ることができたり「そんな考えもあるのか」と、違う視点から利用者さんの状況を考えることにつながったりすることもありますよ。
なにより、利用者さんを支えるチームの一員として訪問看護を考えることは、不安をなくしプレッシャーを少し軽くしてくれます。
積極的な情報共有と、アセスメントしたことを「間違えていないか」と抱え込まずに発信していくのも訪問看護の役割の一つです。
ここまで、訪問看護のアセスメント方法について具体例を交えてお伝えしてきました。
訪問看護について少し身近に感じてもらえたでしょうか?
まだまだ訪問看護について知ってもらいたいことはたくさんあるのですが、今回は訪問看護が日々の何を見ているのか、どうやってアセスメントしているのかについて理解してもらえていたら幸いです。
訪問看護は責任ある仕事ですが、気負いしすぎず利用者さんを支えるチームの一員として自信を持って利用者さんと接してもらえたらと願っています。
まとめ
訪問看護という業界に対する漠然としたプレッシャーは、利用者のことを少しずつでよいので知り、ご家族やケアマネジャーなど利用者をサポートする方々と情報共有することで「一人じゃない」と感じることができ軽くなる。
異変に気付くためには利用者の全体像を掴んでアセスメントし続けておくことが大切。
チーム内でも細かに情報共有していると異変が起きたときに「何か変」と気付けて次の手立てを速やかに考えられることにつながる。
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