退院して在宅でみたいという家族を理解する

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#2563 2024/05/16UP
退院して在宅でみたいという家族を理解する
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訪問看護をしていると、家族から相談を受けることがよくあります。それは、現在対象となる患者は入院中だけれど、余命宣告を受けたので在宅でみたいというものが比較的多いです。しかし、現実的には、その希望をすべて叶えることはできません。今回そんな事例を紹介したいと思います。

・余命宣告を受けた患者

ある疾患により闘病生活をずっと送っていましたが、年齢も増して体力も低下。そしてだんだんと病状も悪化してしまい、入院を余儀なくされた患者がいました。もともと自営業をやっていて、自宅で過ごすことを何よりも望んでいた患者。仕事をしながら通院し、何とかぎりぎりまで自宅で生活をしていましたが、やはり病院での入院治療を受けなくてはいけない状況になったのでした。

そんな患者は、辛い治療を繰り返し、それを乗り越えてきたけれど、病気の進行に伴い病状の改善がなかなか望めず、今後を考えるともうあまり長くはないと余命宣告を受けたのです。そこでその患者家族から訪問看護に相談がありました。

・家族の相談と今後の要望

家族の相談の内容は、病院から余命宣告を受けたため在宅に連れて帰って家で最期までみたいということでした。

このような相談は実はよくある事です。これまで病院で症状の改善を望んで治療をしてきたけれど、もう治療の方法がない…といわれると病院で過ごす意味が見つからなくなります。また病院にいると、感染のリスク等を考え、なかなか家族の面会も簡単ではありません。ならば最後に自宅でみんなで過ごしたいと思うのは、多くの人の希望でもあるのです。

では、訪問看護ではこのような希望を聞いてどのように対処するべきでしょうか。希望を叶えるために引き受けたいところですが、実際にこのようなケースを引き受ける時には、きちんとしたアセスメントをして依頼を受けるか否かを対応することが重要になります。

・病状の把握と退院後の生活をアセスメントする

まず一番重要なことは、患者の病状把握です。現在はどのような状況なのか、どんな治療をしているのか。在宅に帰って継続するべきことは何かといったことです。
実は患者家族は、「連れて帰りたい!」の一心で、病状を的確にとらえていないことが多いです。確かに入院中は患者との面会の回数も少ないですし、状況をきちんと把握できているとはいえません。
また病院から帰って、自分たちで介護をすることは理解できているけれど、今後在宅生活で起こりうることとして褥瘡が発生したり、疼痛があるために疼痛コントロールが必要となるケースもある事は全く理解できていません。そのため、在宅に帰ってから介護を始めて、あまりの大変さに辟易してしまう家族も少なくないのです。

そのような状況を少しでも理解するため、また患者の様子をしっかりアセスメントするために、退院前に病院に訪問して患者家族、ケアマネ、看護師などを交えてカンファレンスをすることはとても重要です。私たちは事前に患者の情報をもらっておきますが、単に紙面上の情報を見るだけではなく、実際に話を聞いて、どのような状況か、そして今後在宅で続く処置や今後起こる問題は何があるのかといったことをみんなで共通認識しておくことが大切なのですね。

このカンファレンスでは、もう一つ重要なことがあります。家族の中には、時々訪問看護師が来てみてくれたら、あとは自分たちでできるだろうと考えている家族も少なくありません。しかし、実際は清潔や排泄の介助も多く、家族が全部できないということも多いです。そのような場合は、カンファレンスの際に訪問介護や訪問入浴、また訪問リハビリや訪問マッサージなどを検討することもあります。

患者にも家族にも有益だと考えられることですが、実際はどれを利用するにしてもお金がかかることです。それを考えると、こんなにお金がかかるのか、このお金をどう工面するのかと家族間で話し合いをする必要もあります。時には経済的なことを考えて必要最低限のサービスだけを検討するという場合もあります。そのような退院後の生活を予想してアセスメントして計画を立てていくことがとても重要なことなのです。

・在宅診療を引き受けてくれるところを探すのが実は難しい

在宅で生活をするという場合、現在入院中の病院に退院後も通院できるという場合は何の問題もありません。しかし、もう体力的、ADLに通院できる状況ではないという場合は、在宅診療を検討しなくてはいけません。今入院している病院の医師が、そのまま在宅診療をしてくれる場合もありますが、すべての医師が在宅対応してくれるわけではありません。

その場合は、まず在宅診療できる医師を探すこと。そしてそれが見つかった後は、紹介状のやり取りをして連携をとることが重要になります。そして初めて在宅で受け入れることが出来るという体制が整うのです。在宅に戻るという場合、看護のアセスメントはとても重要になりますが、多職種連携、や在宅診療などのアセスメントもとても重要になります。

・果たして本当に自宅で介護できるのか

在宅に戻りたい。これは患者も家族も一番の願いだと思います。しかしそこで考えるべき問題は、自宅に受け入れるだけの介護力があるかどうかといったことも重要です。
時に初めての面談で、自宅に帰った後は誰が見るのですか?といった質問に、兄弟で交互に見にいくけれど、基本的には患者一人で生活しますと答える場合があります。患者のADLによっては、それでもまだ生活が出来るでしょう。自分でトイレに行く、誰かが食事を用意してくれたらそれを食べることが出来るといった場合です。

しかし、退院後どのように体調が変化していくかわかりません。その中で介護力がないという場合は、急変が起こった時に誰が対応するかということが問題になります。退院前にもちろん調査して、キーパーソンを決めておくのが鉄則です。しかし、その話し合いの過程で、家族のうちだれとだれが交代で介護するという表現をする場合が見受けられます。ただその場合、注意したいのがお互いに責任を押し付けているという場合。もしもと場合を考えて、私たちが想定しておくことはとても重要です。しかし家族に詳しく聞いてみると、お互いが責任を押し付けていて、では実際どうするかということが何も決まっていないことも多いのです。

在宅に帰るという目標を達成する場合、介護は誰が鍵を握るのかということがアセスメントをする上でとても重要となります。むしろ、その軸をしっかりと決めておけば、何かあったとの対応がスムーズになります。

・まとめ

一番始めに述べたケースでは、実は自宅に帰ることが出来ませんでした。それは、在宅に戻った時のキーパーソンが決まらなかったから。
本人は自宅に戻りたいという希望はあったでしょう。また自宅で待っている妻も夫を自宅に返したかったでしょう。しかし、帰りたい、帰したいという思いだけではなかなか在宅生活に戻すことはできないのですね。

私たちが訪問看護をする場合、在宅診療をしてくれる医師、介護を担う家族、そして協力サポートをする介護事業所など連携をとらなくては在宅生活を支えていくことは難しいのです。そこを家族に理解してもらうことが一番重要です。

まとめ

訪問看護をする上で重要なことを紹介しました。入院中の状況を把握し、アセスメントすること。また退院後の状況をさまざまな観点から予測してアセスメントしておくことはとても重要です。家族、患者の希望を叶えるためには、在宅を支える多職種の人と連携を取りながら、状況が変わったらその都度アセスメントをして対応していくことが重要になります。

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