私は、看護師4年目でメンタルクリニックにて働いています。元々は療養型の病棟で勤務していました。全く違う分野に入ったからこそわかった経験をもとに、精神科の看護師について解説していきます。
①精神科看護とは
現代社会はストレスで、かなり需要が高まっているのが精神看護の分野です。今やありふれた疾患となっています。日本は世界から見ても、トップクラスで精神科の病床が多いと言われています。主に、統合失調症、うつ病、双極性障害をはじめとして、疾患も多様です。患者さんの心に寄り添って看護を行うことが重要となります。精神疾患はかなり長期戦で、多くの時間をかけて治療を行うことになります。他の診療科と比べても、精神科の在院日数はダントツに長いです。1人の患者さんとじっくり関わって看護をしていきたい人におすすめと言えます。また、長期間に渡って関わって、回復が見込まれ元気になった患者さんを見ると、とてもやりがいを感じることができます。根気強く患者さんと向き合った先には、笑顔で社会に戻られる方も多くいて、その時の喜びはとても大きいです。
②精神科の看護師になるための方法・必要な資格など
免許さえ持っていれば、あとは精神科のある病院やクリニックの求人に応募するだけです。
・看護師国家資格
・准看護師免許
↑上記の2つの資格のうちどちらかは必須です。
・精神科認定看護師(これがあると活躍の場が広がります。)
→小論文(オンライン)と、書類審査の2つがあり、受講期間は8ヶ月で資格取得が可能です。「実践」「相
談」「指導」「知識の発展」の4つの役割を担っています。
経験年数は主に病棟だと幅広く、新卒採用でこの世界に飛び込む人もいます。クリニックや訪問看護の分野では、1人でも問題なく看護行為を行えることが前提となるため、臨床経験が多少必要となりそうです。
③活躍の場は大きく分けて3つある
・精神科病棟
こちらは、病院の精神科病棟で、入院適用となった患者さんの看護を行います。一般病棟とは違い、ケアや医療処置は少なめです。
【主な仕事内容】
・服薬管理…精神科特有の薬の服薬に抵抗感がある患者さんや、薬物依存によって過剰摂取をする患者さんもいます。そういった患者さんたちが、きちんと用法容量を守って薬を服薬できるよう、飲み込むまで確認をします。
・日常生活の見守り…食事では、過食嘔吐、拒食の症状がある患者さんの摂取状況の観察、調整を行います。また、食事を取られてしまうかもしれないという妄想から、焦って食事をすることによって誤嚥を招きかねないため、観察が重要です。また、特に閉鎖病棟では入浴時なども患者さんが病院からどこかへ行ってしまうのを防ぐために、終始見守りを行います。社会生活に戻るための買い物では、適切にお金を使えるかを観察します。
・患者さんとのコミュニケーション
長期に渡って治療を行っていくからこそ、患者さんと信頼関係を築き、コミュニケーションをとっていくことが大切です。精神状態は目に見えないことも多く、患者さんとお話することでわかることがたくさんあります。
・アセスメント
上記で観察したことから、患者さんの身体的側面も含めて全体像を把握し、他職種と連携して、患者さんの治療方針を考えていきます。
・精神科・心療内科クリニック
こちらは、社会で生活している人が、外来受診としてくる施設です。
【主な仕事内容】
・採血…長期に薬を服薬して治療していくため、肝機能や腎機能をはじめとした全身状態の観察のために、採血を適宜行います。精神疾患を抱えていると、採血によってパニック症状が出てしまったり、取り乱すこともあるので、最初の声かけや観察はより重要です。また、精神科での採血のイメージが薄いためか、患者さんから採血の了承を得られない場合もあるため、適切な説明が必要です。
・注射…双極性障害などでは、筋肉注射による薬物治療もあります。
・予診…医師に代わって、予め質問してカルテに残しておくことです。クリニックでは、患者さんの回転も重要になってくるため、医師の診察の手助けとして行う方法をとっている場合もあります。
・入院調整…希死念慮が強かったり、依存や妄想の症状が強くて、入院適応となる患者さんもいます。医師から指示が出たら、提携している病院などを探し、入院できるように引き継ぎや、患者さんへの説明を行います。
・精神科訪問看護
こちらは、地域で生活をする患者さんたちの健康状態の見守りを行います。
・バイタルサイン…全身状態の観察をします。
・服薬管理…きちんと薬が飲めているかを確認します。
・日常生活の確認…食事、睡眠がとれているかや、普段はどう生活をしているかをコミュニケーションの中で把握します。
・カンファレンス…地域のソーシャルワーカー、保健師、相談員などと問題解決に向けて話し合い、患者が自立できるように一丸となって促します。
④精神科看護師のメリット・デメリット
・メリット
精神科という他の科にはない特殊な部分があります。ここでの業務内容から見ても、傾聴スキル、コミュニケーションスキル、観察力が身に付きます。また、在院日数が長く、緊急入院やオペ、急変も少ないため、残業はかなり少ないです。そのため、自身のワークライフバランスを保つことができます。また、病棟特有のモニター音などもほとんどなく、ゆったりとした空気が流れていることが多いです。患者さんの療養生活の一環として、レクリエーションなどに参加することもあり楽しい行事ごとへの参加も多いです。
・デメリット
医療行為がかなり少なく、経験する機会が少ないです。医療行為のスキルを磨きたいのであれば、難しいところがあります。最新の医療の情報に触れる機会もかなり少なく、知識を得るためには自己研鑽が必要となります。また、患者さんの病状によっては、暴力・暴言を受ける機会も多いです。しかし病院側もそのようなことが起きるかもしれないと想定して安全対策は取られています。
⑤精神科看護師になるとつらい・・・?
筆者は、精神科の分野に行こうと思うと周りに相談した時に、「患者さんの辛い気持ちをもらってしまうからやめておいた方がいい。」「心に寄り添うのは大変だ。」と言われました。一度は諦めましたが、やっぱり諦めきれず、精神科の世界に飛び込みました。最初は戸惑うことが多かったです。希死念慮が強く、それを訴える患者さんもいますし、こちらに依存してしまう患者さんもいます。関わり方に苦戦しながら、自分自身も強くなっていきます。私は、冷たい言い方になるのかもしれませんが人の事情は人の事情、そこまで自分が背負わなくていいと考えて仕事に当たっています。傾聴はするけど、共感はしないと言ったように、自分の心にバリアを張って、患者さんの全てを受け止めないようにしています。精神科の看護師になるためには、タフな精神力と防御力が必要であると思います。
⑥精神科で勤務するために勉強しておいた方が良いこと
・精神科に多い疾患
多い疾患は、統合失調症、うつ病、双極性障害です。この疾患の特徴や関わり方、治療法をまとめておくと良いでしょう。
・精神科でよく使う薬
精神科でよく使われる薬の作用と副作用を知っておくと、いざという時に対処しやすいです。例えば睡眠薬では、マイスリー、デエビゴ、など、抗うつ薬では、セルトラリン、サインバルタ、抗不安薬では、ワイパックス、メイラックス、抗精神病薬では、エビリファイ(注射もあります)、気分安定薬では、リーマス、デパケンなどがあります。
・書類関係(クリニック勤務の場合)
受付の方が行うことがほとんどですが、患者さんから聞かれて答えられるようにするためにも、診断書、障害年金、傷病手当金についての書類の特徴やどんな感じで書くのか、簡単でも良いので知っておくと便利です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?精神科とは、特殊だから経験がないと出来ないのかや、何か特別な知識が必要か、はたまた患者さんの不調を受け取ってしまったらどうしようと色々考えていましたが、今楽しく仕事をすることができています。自分に合った科を見つけることが出来たなと思いました。皆さんもこの機会に、精神科の看護師を考えてみてください。一緒に患者さんを支えていきましょう。
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