IoTは身近なところでも使われるようになり、医療での応用も進められています。IoTは看護アセスメントにも利用できます。看護アセスメントをスムーズに進めつつ、的確なアセスメントをできるようにするツールとしてIoTをうまく使っていきましょう。
#IoTとは
IoTとはInternet of Thingsの略称で、モノのインターネットとも呼ばれます。インターネットを通してつながり、データを送受信して連携することができるようにシステムが設計されているデバイスです。デバイス自体がデータを取得し、インターネットを介して接続している他のデバイスにデータを送ることができます。また、接続している機器からのデータを受けて動作を変更する機能も備えているのが一般的です。一般的にIoTではインターネットを使って複数のデバイスが同時に接続し合い、ネットワークを形成して稼働するシステムが整えられています。
IoTにはさまざまな技術が取り入れられています。例えば、照明器具の中には周囲の明るさをセンサーで検知して自動的に明るさを調節したり、人勧センサーによって人が近づいたときにだけ転倒したりする機器があります。さらに、スマートフォンにつながっていて、アプリで照明のオンオフや明るさの調整などのリモートコントロールをしたり、一日の消費電力などを計測して確認したりすることができるスマートなデバイスもあります。インターネットを使っているので、リモコンのように近くからでなくても制御することが可能です。IoTはインターネットを介して今までのITではできなかったことを次々に現実のモノにしてきています。
#看護アセスメントに使えるIoTの例
IoTは看護アセスメントでどのようにして使うことができるのでしょうか。ここでは看護アセスメントに応用できるIoTの例を紹介します。
・センサー
IoTセンサーは看護アセスメントに利用できる代表的なツールです。センサー技術が発達してさまざまな情報を高い感度で検出することができるようになりました。明るさセンサー、人感センサー、温度センサー、開閉センサー、圧力センサー、振動センサー、体温センサーなどのさまざまな種類があります。
看護アセスメントではセンサーを患者情報の収集に活用できます。例えば、ベッドセンサーシステムを利用すると、ベッド上での患者の動きをリアルタイムで記録できます。寝返りの状況、患者の活動の様子、睡眠の深さなどについて考察できるデータを取得可能です。寝返りを打てていないときにアラートを出し、現場に行って寝返りをさせるといった対応もできるでしょう。
・体温計
体温計は看護アセスメント出の用途がわかりやすいIoTデバイスです。非接触でセンサーによる自動計測ができる体温計がよく用いられています。バイタルチェックのときに毎回患者の体温を個別に測る必要がなく、自動で体温のリアルタイムデータが集められていきます。バイタルチェックの業務負担を減らせるだけでなく、体温の日内変動に基づく考察もできるようになるツールです。
・スマートバンド
スマートバンドは患者が腕に取り付けることでヘルスログを記録できるIoTデバイスです。Apple Watchのようなスマートウォッチを日常的に使っている人も多くなり、一般の方にも浸透してきています。ヘルスログの記録ではパルスオキシメーターの機能を搭載していて、心拍数や歩数だけでなくSpO2などの値も遠隔モニタリングできるIoTも開発されています。入院患者の検査データの取得では患者の負担を軽減できるツールです。在宅医療でも検査データを自動取得して確認できるので、看護アセスメントをしやすくなります。
ウェアラブルデバイスのIoTは位置情報システムを使用することも可能です。徘徊のリスクがあるときには患者の行動を分析して看護計画を立てるといったアプローチができます。
・スマートカメラ
スマートカメラは見守りに有効活用できるIoTです。カメラを設置して患者の様子をモニターで確認できます。明るさセンサーで部屋の照度に応じて撮影モードを自動で切り替えたり、モーションセンサーによって移動した患者を追跡したりすることも可能です。部屋の中での患者の行動について情報を集められるので看護アセスメントに応用できます。
・スマート医療機器全般
IoTとしてスマート医療機器が開発されてきています。スマート医療機器では病院のシステムに測定データを取り込んで管理したり、看護師や医師が手元のスマホなどの端末から医療機器を制御したりすることが可能です。看護アセスメントでは検査結果の自動取り込みによって必要なデータを取得しやすくなるメリットがあります。
#IoTを看護アセスメントに使うために必要なこと
看護アセスメントに有用なIoTデバイスは開発が次々に進められています。IoTセンサーやスマートバンドのようにすぐにでも応用可能なIoTデバイスもあります。ただ、看護師がIoTをアセスメントに使うのは一筋縄ではありません。IoT活用にあたって乗り越えなければならないことを確認しておきましょう。
・施設によるIoT導入
IoTは施設全体での導入が必要です。試験的に一部の診療科で導入するといったことはもちろんできます。しかし、最終的には施設全体で導入する必要があります。IoTを通して収集したデータを有効活用するには、IoTの利用を前提とする業務フローを整えなければならないからです。IoT化された医療機器のように価格が高い製品では導入しづらい面もあります。勤め先の施設に提案をして必要性の高いIoTデバイスから導入していくことが重要です。
・インフラの構築
IoT活用にはインフラの構築が必要です。IoTデバイスによって収集されたデータのストレージを確保し、高速通信が可能なネットワークを構築することが求められます。使用するIoTデバイスが多く、画像などのデータサイズが大きい情報を利用するときほどストレージもネットワークも負荷が大きくなります。データのセキュリティ対策も講じなければならないので、IoTを導入する時点でのインフラ整備が大きな負担です。大学病院などの一部の病院でしか導入が進んでいないのはインフラの構築に困難があるのが原因の一つです。
・IoT運用体制の確立
IoTは運用体制を確立してトラブルが起こらないように運営することが必要です。導入したIoTデバイスが不具合を起こすと、臨床データの正確性が失われるリスクもあります。IoTは常に信頼できる状態に保たなければなりません。ネットワークについても同様で、常時監視をして安定的に運用できる体制を整えなければIoT活用は困難です。IoTの使い方についての講習をして看護師や他の医療スタッフにも周知するといった対応も必要になります。
・患者によるIoT利用の合意
IoTを看護アセスメントに使うときには患者による合意を得ることが課題になります。例えば、入院患者の病室の様子をスマートカメラで撮影するときにはプライバシーへの配慮が必要です。スマートバンドの着用についても患者が拒否したときにはあきらめなければならないでしょう。患者にとってIoT活用がベネフィットになることを伝えて説得しなければならない場合も少なくありません。IoTは悪用もできるデバイスなので、合意を得るために実績を築き上げることが必要になります。
まとめ
看護アセスメントでのIoT活用について紹介してきました。IoTが看護アセスメントを円滑にするツールになることがわかったでしょうか。ただ、IoTを本格的に導入するには施設による投資と患者による合意が必要です。看護師が1人で導入できるわけではないので、上司や担当部署とコミュニケーションを取って導入してもらいましょう。
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