病院で勤務していると様々な方が入院してこられると思うのですが、その中には独居の高齢者の方も多いと思います。そう言った方が、自宅へ帰る為に必要なアセスメントをしなければならない場面は多いと思いますので、入院患者様が病棟に来てから、どのようにアセスメントをしているか流れを紹介したいと思います。
・様々な視点での情報収集
情報収集する内容としては、既往歴や現病歴はもちろん、オムツや排尿排泄の状況や、服薬管理方法、入浴の回数や方法、デイサービス等の通所サービスの利用状況等、確認する事はとても多いです。
独居で生活されていた患者様が入院したきた時、その方がどのように生活をされていたのかの情報収集が大切になってきます。本人から聴取できる場合は問題ありませんが、それが難しい場合には、外部の担当ケアマネジャーや患者様の家族様からの情報収集が大切になってきます。本人から聴取した場合でも、他者から得た情報と擦り合わせを行う事で、信憑性も高まります。
院内では、担当の医療ソーシャルワーカーやリハビリ担当者からも情報を得る事が可能となります。彼らの業務でも情報収集は必要不可欠なので、前のリハビリ担当者や入院していた病院等の私達が介入しにくい場所から情報を得ている場合があるからです。
・ADLの現状確認とアセスメント
入院前の情報を得た後は、現状を知る事が大切となってきます。オムツは着用されてるのか、トイレまで移動は可能なのか、トイレの中での排泄動作は安全に行えるのか等で独居の方にとっては間違いなく必要なスキルとなってきます。他にも入浴動作は安全に行えるのか、食事も1人で取る事が出来るのか等の現状確認も必要となってきます。ですが、ADL動作確認は普段のケアから大体は知る事ができますし、他にも担当リハビリの方に話を聞いて、どこまで自分の事が出来るようになるのかと予測立てているのか、リハビリの目標はどこにおいているのか等の確認もしておけば退院時の状態もイメージしやすくなりアセスメントに必要な情報が手に入ると思われます。このように在宅へ帰る予定の患者様のアセスメントを行う際には、リハビリのスタッフとの情報交換が大切になってきます。
・介入しやすい、服薬管理
最初は食事につけてお渡しするケースが多いのではないかと思います。ですが、食事と一緒に出てくる一包化された薬を開けて飲むだけといった受動的な服薬方法は独居の方の生活を思うと少し考えなければなりません。独居の方が自宅に戻ると言う事は、服薬は能動的に行なっていかなければならないタスクの一つだからです。なので、我々看護師から服薬管理には介入しやすいので、段階付けて服薬方法を変えるようにしています。まず初めに体が動かない状況であれば、袋から薬を出して口元へ運んで介助を行う、次に自身で袋を開けて薬を飲む。その次には服薬カレンダーに入っている薬を自身で取り出して飲むようにする、他にも服薬カレンダーの薬のセットから自身で行なってもらう。そして1週間分の薬を渡し、自身で飲んでもらうようにしたり、最後に出来る方には、別々の薬の袋に入ったままの状態でお渡しし、自身で飲む薬を選んで飲んでもらう等の方法を患者様に合わせながら調整を行うようにしています。飲み忘れが無いようしっかりとチェックを行わなければなりませんし、飲み過ぎも危険なので、服薬管理の段階を上げていく際は細心の注意をはらわなければいけません。
・実際に退院後をイメージしてADLを行ってもらう
様々な情報を得た後は、実際に在宅に戻った後の生活をイメージしながら介入を行います。トイレ動作は遠位見守りで行なったり、問題なければ自立、入浴動作も見守りでなるべく患者様本人に行ってもらいます。他にも、外出をされたり友人が多い患者様ならば、デイルームに待ち合わせ時間を設けて集合。そして、タオル畳みなどの簡単な作業を行ってもらったりしていました。それにより時間を守る事が出来るのか、簡単な作業なら取り組む事が可能なのか等を確認する事が出来るからです。担当の作業療法士にADLやIADLをあげる為に、病棟でなにかできる事は無いかとアドバイスをもらう事もあります。そこで、歯磨き等のセルフケアを毎朝自身で行ってもらって下さい、売店についていってあげて会計の方法を見てあげて下さいなどの指示を貰います。忙しい時は後回しにしてしまいそうな事ではありますが、患者様にとっては必要な動作だと思って、積極的に取り組むようにしています。
・アセスメント後に行う自宅訪問
在宅に戻る患者様の殆どは自宅訪問を行うケースが多いです。リハビリ担当者や医療ソーシャルワーカー、福祉用具業者、私達看護師と一緒に訪問する事が多いのですが、ここでは病院内で現在行なっているADLや服薬管理などを自宅でも行えるようにアセスメントを行なってから訪問しなければなりません。そして、在宅でも行えるように環境を整えるのか、方法を変えるのか、サービスを導入するのか等を新たにアセスメントし、訪問者同士で話し合います。そして、病院に戻った後は、退院に向けてラストスパートです。実際に見た在宅をイメージして食事場面の環境設定や排泄までの導線、セルフケアの方法等を調整します。このように退院前には必ず必要な訪問なのですが、こういった病棟業務や医療行為以外の業務も病棟看護師にはあるのです。
・退院に向けたカンファレンスで、病棟看護師の役割
退院前にあるカンファレンスでは、今までの病棟での様子を細かくお伝えします。すると、担当のケアマネジャーが必要なサービスを提案してくれます。入浴動作に不安があるのならばデイサービスでの入院や訪問入浴を検討したり、食事管理が難しいのであれば配食サービスの利用を検討したり、買い物が難しいのでれば家族様にお願いしたり、ヘルパーを導入したり、他にも服薬管理が難しいのであれば訪問看護師の導入を検討したり等の様々な介入方法があるのです。この場でその人に合った正しいサービスを導入してもらう為に、上記のような情報収集やアセスメントが必要となってくるのです。
・退院に向けた依頼
そろそろ退院の方向性も見えてきた頃、この辺りで看護師から依頼を行うようにします。たとえば喫煙されていた方なら、禁煙指導を依頼したり、食事の栄養面や食事形態の件で栄養士から本人・家族様に話をしたり、リハビリから介助方法の指導を家族様やヘルパーに行ったりと様々な依頼をかけなければなりません。これも普段の入院中の生活や訪問先の環境を加味し、アセスメントを行い、必要な依頼を行わなければならないのです。
・アセスメントし、行動した結果
実際に退院してから、私達がアセスメントし行っていた介入方法は正しかったのか確認する方法はあまりありません。病院と自宅では環境は全然違うでしょうし、病院では出来ていた事が帰ってから全く出来なくなってしまったという事もあり得なくはないと思っています。ですが、ケアマネジャーからの情報を得た医療ソーシャルワーカーから、家でもうまく生活出来ていて、問題ないみたいです。等の話を聞ける事があるのですが、本当に嬉しく思いますし、この仕事をしていて良かったと思える瞬間の一つでもあります。
まとめ
入院患者様が独居で在宅へ戻る際には、沢山の情報収集を行い、アセスメントを行います。そして、出来る練習を病棟で行う事が大切です。他にも医療ソーシャルワーカーやリハビリ担当者との情報共有も大切になってくるので、そういった色んな方達の意見を取り入れつつ、アセスメントする事が患者様が再び元の生活に戻れる可能性を引き上げる大きな要因となるのです。
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