看護アセスメントのやり方を実践的に身に付けるには成功例と失敗例を対比してみることが大切です。この記事では代表的な成功例と失敗例を紹介し、比較して考察した内容を説明します。看護アセスメントが安定してうまくいくようにならずに悩んでいる人は、ここで紹介する典型例の比較を通してより良いやり方を身に付けましょう。
#看護アセスメントの実践力は例から身に付けよう
看護アセスメントを実践的にこなせるスキルを身に付けるには、類似の症例での成功例と失敗例を比較して、何が違うのかを考えて学ぶことが大切です。ここでは腎臓を患っている患者の症例を挙げて、成功例と失敗例を比較して紹介します。
#看護アセスメントの成功例
夜になるとトイレの回数が多くて眠れない患者が来院したため、医師の問診を受けて血液検査や尿検査を実施しました。そして、検査結果としてGFRの顕著な低下が見られていました。
そこで、看護師が患者に「今、何が一番つらいと感じていますか?」と質問したところ、「夜に何度もトイレに行かなければならなくて眠れないのがつらい」、「眠れないせいかいつもだるくて体もむくんでいる」という回答を得ました。
その質問を受けて「いつから眠れなくてつらくなっていましたか?」と聞いたところ、「半年くらい前からです」という答えがありました。さらに、「眠れなくなってから何か頑張っていたことはありますか?」という問いかけに対して、「眠れるというサプリメントを摂っていましたが、特に効果があったとは思いません。」という回答が返ってきました。
そこで、「治療でどのくらい回復できたら良いと考えていますか?」と聞いたところ、「眠れないのは昔からなので、とりあえず夜中にトイレに行かずに済むようになりたいです」という患者の希望が返ってきました。
このような患者とのやり取りから、腎機能の低下による頻尿が大きな悩みと考えて、夕食から就寝前の飲み物の摂取量を指示したことで一時的な回復が認められました。そこで患者に「体調は良くなりましたか?」と質問したところ、「眠れるようになったのに疲れが取れない」という回答が返ってきました。
患者の悩みから血液検査の結果を見直すと肝機能の低下も認められていました。
担当医に患者の主訴を伝えました。すると医師は慢性腎不全の治療に重きを置いていたことがわかり、肝機能の改善も並行して進める医療方針が立てられました。看護では肝機能の保護のためにお酒を控えることを患者に伝えました。
このような看護によって患者の血液検査のデータが徐々に改善し、患者も「だいぶ良くなりました」と話すようになりました。
#看護アセスメントの失敗例
夜になるとトイレに行きたくなるのが困ると言って受診した患者の看護を担当する際に、主訴は頻尿と考えてミネラルバランスや水分摂取量の調節をするように促しました。
速やかなアドバイスによって患者の反応として夜にトイレに起きることがなくなりました。看護師として適切なケアができたと考えて、同じアドバイスを継続していきました。
しかし、あるとき患者から「いつも疲れていてつらい」と言われて原因を調べたところ、入院当初と比べてGFRが低下して腎不全が悪化しているだけでなく、肝機能の数値も低下していることがわかりました。
患者を視診してみると黄疸が見られていて、腎不全と肝不全が同時に進行していることが推察できました。
この時点で医師に相談したところ、医師は初期検査で腎不全が頻尿の原因と考え、患者が特に頻尿以外の症状を訴えていなかったので投薬治療で経過観察を続けていたことがわかりました。肝機能の低下が進んでいたことを受けて消化器内科との連携を取って腹部超音波検査をしたところ、肝硬変が始まっている様子が見られました。
この時点で医師から患者に病状を説明し、同病院では適切な治療ができないことを伝えて紹介状を書いて転院させました。
#成功例と失敗例からわかる違い
同じ主訴の患者でも看護師の対応の違いによって結末が変わる可能性があることがわかったでしょうか。看護アセスメントを適切におこなえていたかどうかが大きな分岐点になっています。これらの成功例と失敗例から看護アセスメントで何が違ったのかを見ていきましょう。
・検査結果を頭に入れていた
看護アセスメントを普段から念頭に置いて、患者の検査結果を頭に入れて看護アセスメントで重視できるようにしていたのが大きな違いです。成功例ではGFRの低下だけで判断してしまわずに、継続的に検査結果を追跡したことで肝機能の低下に気付いて看護診断ができました。血液検査などの基本的な検査結果から読み取れることはたくさんあるので、深く掘り下げて可能性やリスクを考えることが看護アセスメントでは大切です。
・患者に積極的に質問していた
看護アセスメントの成功例と失敗例では、看護師の患者に対する姿勢が違いました。患者に対して積極的に質問をしていたのが成功のポイントです。看護アセスメントでは看護師が患者の考えや期待を把握することが重要です。医師による診察のときには患者の口から出てこないことも、看護師が問いかけると出てくることがよくあります。患者を理解したいという気持ちを持ち、質問を繰り返していたことで「まずは頻尿の悩みを早急になくす必要がある」という目標が明らかになりました。ただ、患者の発言内容から、とりあえず解決したいことを教えてくれただけで、患者が他にも悩みを持っていそうなニュアンスがあったのは明らかでしょう。頻尿が解決されても看護ケアは終わらないという意識を持つことができ、質問を継続するきっかけになっています。
・患者がどうなりたいかを適宜確認していた
夜間頻尿で眠れない悩みを抱えていることはどちらの例でも看護師が把握できていました。頻尿対策が必要なことは明白だったので失敗例でも対応できていましたが、その看護介入後によって容態が改善した後に患者の希望が変わったことに気づいていなかったのが失敗につながりました。患者は最も不満なことを主張することが多く、軽減されてくると他の不満も募ってくるようになります。成功例では看護師が患者に再び質問をして、疲れが取れない悩みがあることを聞き出したことで看護計画に変化が生じました。患者の意識の変化を考慮して適宜話をしていたことが功を奏しています。
・医師との連携を取っていた
看護師が医師に率直に話をできる連携体制ができていたのも看護アセスメントの成功可否を分けています。成功例では患者の疲れが取れないという主訴に気付き、医師に相談したことで治療方針が変わりました。頻尿という初期の主訴からは肝硬変を想定することは容易ではありません。看護師が患者の声を聞いて、疲れが取れないことがつらい状況を改善しようという意欲を持ち、医師に相談したことがきっかけになっています。特に高齢者の場合には腎機能の低下と合わせて肝機能の低下が見られることがよくあります。腎機能が低下している患者の症例で肝臓の血液検査の数値が上がっているのを見ても、あまり深刻に考えない場合もあります。看護師が患者の症状と合わせて医師に相談できる連携体制が整っていたことで患者が救われる結果になったと言えるでしょう。
まとめ
看護アセスメントの成功例と失敗例を比較して看護師が何をしたら良いかがイメージできたでしょうか。看護アセスメントでは患者と密接に寄り添う関係を築き上げて情報を集めることがまず大切です。そして、看護アセスメントをした結果を踏まえて医師と常に連携できるようにすることが成功につながります。患者と医師とのつながりをいつも意識し、看護アセスメントに生かしましょう。
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