手術室看護師は看護師の中でも限られた存在だと言えます。ドラマなどで知る人も多く憧れを持っている方も多いのではないでしょうか。ここでは手術室看護師の実際の業務、勉強方法、メリット・デメリット、私が経験して感じた事についてお伝えしていきます。
よく一般のイメージでは「先生にメスと言われて渡す人だね」と言われる手術室看護師ですが、業務はそれだけではありません。病院でも閉ざされた場所であり気軽に入れる場所ではないので就職先としては不安に思う方も多いかもしれません。
手術室看護師の業務は大きく2つに分けられます。
1、器械出し業務
手術で医師に器械を渡す業務です。
ただ渡すだけでも膨大な器械があるのでその中から間違えずに器械を渡す事が最も重要と言えます。さらに手順や解剖を覚え、今どのような事が術野で行われているか把握して、どの器械が必要とされているかを予測する事でスムーズに医師に器械を渡す事が出来ます。表すならば器械出しは業務は、医師に器械を出す事に徹した職人のようだと思います。医師一人一人も個人差があるので、その医師についていけたと思えると楽しいと感じる事が出来ると思います。病院によって異なるとは思いますが、私の病院の場合は最初から全部の科をまわるわけではなく、3週間ごとに科をローテーションしていく指導法でした。大きい手術(肝臓、膵臓、脊椎、心臓、脳など)は2年目以降にやる事が多く、全ての科が出来るようになるには3年かかるシステムであり、出来る手術が増えていくと徐々にレベルアップ出来ていることが実感出来ます。
もう一つ大切な事は清潔を維持する事。無菌を保つ仕事のため、清潔不潔に敏感である必要があります。手を洗う方法やガウンを着る方法、手袋をはめる方法なども全て特殊であり習得する必要があります。
勉強内容としては、
・器械
・術式と手順
・解剖整理
・ガウンテクニック など
器械出しの勉強方法は大体どの病院にも、そこの独自の手順書というものがあるので、コピーさせてもらったり、紙に起こしながら暗記します。途中出てくる血管の名前や器械の名前はその都度調べたり、先輩に教えてもらいながら一連の流れをイメージします。大切なのは文字を丸暗記するのでは無く、解剖と照らし合わせて想像し、動けるようになる事です。最初は先輩が後ろから手を出してくれて一緒に器械出しをすると思うので、その都度フィードバックをもらう事ができます
2、外回り業務
手術室のマネージャーとも言える仕事です。
なかなか知らない方が多い業務ですが、患者さんの精神フォロー、バイタルサインのモニタリング、医師指示のもと薬剤や血液製剤の使用、体位モニタリング、体温調節、機材のセッティング、患者記録、コスト管理など手術室内の全体を見ながら動く仕事になります。記録を書いていると麻酔科にあれが欲しい、器械出し看護師にあれが欲しい、など言われますが無視して記録に集中する事は絶対NGです。少しでも反応に遅れるとバイタルサインが乱れたり、手術が進まなくなる可能性があるので常に周りを意識して動くことが大切です。また体位モニタリング?と思った方もいるかもしれませんが手術中は、手術部位によって体位が変わります。仰臥位、側臥位に加え、足を大きく開く砕石位、うつ伏せになる腹臥位など特殊な体位も多く、手足が落ちていないか、挟まれて皮膚損傷を起こしていないかなど確認する事も外回り看護師の仕事です。
勉強内容としては、
・術式と手順(術操作の内容によってバイタルが変動するタイミングが違うため)
・それぞれの麻酔、影響
・挿管介助手順
・薬剤
・体位(圧迫してはいけない神経はどこか) など
外回りの勉強方法はとしては、本やネット、教科書から学びます。オススメの本としては「オペナーシング」です。特に麻酔について、基礎疾患(既往歴)については今でも振り返るくらい詳しく載ってあり使えると思います。基礎疾患は普通に調べたら良いじゃんと思うかもしれませんが、その基礎疾患がこの手術の時にどう影響してくるのか、だから何に備える必要があるのかまで詳しく説明してあるものはなかなかありません。しかし、現場で必要になるのはまさにその手術との関わりです。例えば重症筋無力症の基礎疾患がある患者に筋弛緩薬を投与したらどうなるのか、ステロイドを長期的に内服している患者さんの手術の影響とやる事など。知らない、分からないで済むものでは無く、手術中は容易に出血し、容易に急変します。そのため、しっかり勉強して準備しておく必要があります。
手術室のメリットとしては
・土日休みなことが多い
・全科に関わり、解剖にも詳しくなる
・ケアは殆どした事ないです(陰洗など)
・患者の暴言も殆ど聞きません
こんな人にオススメ
→・体の中に興味がある
・やりがいや刺激を求める
・病棟に行きたくない
手術室デメリット
・プレッシャーと勉強量が多くて最初は大変
・患者とゆっくり関われない、寝ちゃうから
(でも意識下のオペならずっと付きっきり)
・長いオペだと体力使い果てる
こんな人は考え直した方がいいかも...
→・ケアが好きで患者さんに多く関わりたい
・仕事量は少ない方がいい
・極力勉強したくない
・血を見るのがダメ
でも長く働くにはオペ室とても良いと思います!患者からの暴言や腰痛に悩んで殆どの同期は疲れ果てて病棟を辞めていきました...。それに比べてオペ室は辞めていく人が少ないので20年以上勤めている方も割と多いです。実は私も第3希望まで内科病棟希望にしていたくらいオペ室は無縁だと思っていた人間ですし、勉強もとっても苦手でしたし、マイペースでおっとりした性格だったんですよ(笑) でも最初の1年さえ乗り越えてしまえば、私は楽しく働いております!
ならば就職する前から勉強しなければ!と思うかもしれませんが、正直専門的な事は就職してからで良いと思います。なぜなら病院によって薬も器械も手順もさまざまだからです。そして実習で経験していない事は分かっているので、一からしっかり教えてくれます。なので、逆にそれは授業で習わなかった?というところを聞かれたりします。なので解剖の資料を全科まとめてすぐに見れるようにするとかが一番良いのではないでしょうか。
新人に一番大切な事はやる気!では無く素直な事です。もちろん積極性は大事です!ですが頑張り過ぎてパンクしては意味がありません。困っているなら聞く、やり方が分からないなら相談する、など素直に打ち明けることが先輩とのコミュニケーションの取り方であり、距離を縮めるポイントだと思います。手術室はコミュニケーション力いらないから良いよねとよく言われますが、もちろん人同士の職場なのでそれなりにコミュニケーションは必要だし、愛嬌も必要です。自分が気持ちよく仕事できるための術として好かれる努力も必要だと私は1年目で特に実感しました。
また患者さんと殆ど話さないから、そこに看護ってあるの?とも思われがちですが、もちろん有ります!患者さんが手術に対して不安や疑問がないか、前日に病棟で訪問して会話する術前訪問。これは、顔を見せておくだけでも当日に安心が得られる効果や、先に知っておきたい情報を収集するためにも行なっています。
術前訪問やカルテから得た情報を活かして自分はこの患者さんに対して何が出来るのか考え、計画を立てて、行動する。それは病棟の看護となんら変わりありません。例えば、腰痛持ちの患者さんに対し腹臥位での手術が必須だった場合はクッションやバスタオルを準備して患者さんに聞きながら体勢をとったり、初めての手術で不安いっぱいの患者さんに対しては好きな音楽を聞いて流してあげたり、マニュアルには無い個別性の看護を提供するところは看護師それぞれの見せ場であり、看護の面白いところだと思います。その看護師に自分がどれだけ尽くしてあげられるか、そのためには経験や知識がレベルアップの方法ではないでしょうか。そう考えると自然と勉強へのモチベーションが出てきませんか?^_^
まとめ
いかがだったでしょうか?
手術室看護がどういうものか、少しでも明確になり興味を持って頂けたでしょうか。焦る気持ち、不安な気持ちはもちろん分かりますが、今は「自分が今できる事」という土台をしっかり作って頂けたら良いと思います。そして新人看護師でも全然働けるくらい怖いところでは無く、やり甲斐を感じれる場所だと伝わると嬉しいです。
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