壊死性筋膜炎で入院していた患者さんですが、既往歴にAfがありました。鎮静薬使用中、リハビリをしていましたがなんとなく反応がいつもと違う、鎮静薬の影響であってもいつもと異なると感じ、Afもあることから脳梗塞を疑い神経学的所見を観察すると異常があり、すぐに検査を行い、脳梗塞を早期発見できました。
タイトル:脳梗塞を早期発見した際のアセスメント
・患者さんの状況
対象の患者さんは左下肢の壊死性筋膜炎で入院していました。壊死性筋膜炎は痛みを強く感じる病気であるため、麻薬以外にも鎮静薬を使用して痛みのコントロールをしていました。私は痛みを軽減する看護を行うため、医師にRASSの目標を確認し呼吸状態や心拍数、不整脈をアセスメントしながら鎮静薬をコントロールしていました。患者さんは鎮静薬を使用している中でも、意思疎通が図れる状況でした。自分自身で両上肢、右下肢を動かすことができ、ゆっくりだと左下肢も動かすことができました。意識レベルもしっかりされており、鎮静薬使用中ですが、JCSで表すとI-1でした。既往歴でAfがあり、常にAfで経過していました。
・異常を発見した時の状況
上記のような状態の患者さんのリハビリは毎日行われていました。左下肢の壊死性筋膜炎であり、鎮静薬を使用中であるため、立位や歩行は難しい状況でしたがROM訓練は毎日実施されていました。理学療法士の方が毎日午前中約20分、午後約20分来て実施していました。
理学療法士さんの声掛けで両上肢、右下肢の屈曲、伸展をしたり、ダンベルを使用したりして筋力を保つリハビリをしていました。異常を発見した日の午前中のリハビリでは理学療法士とお話しながらリハビリを実施していました。
午後のリハビリでも初めはお話しながらリハビリしていましたが、急に入眠様となり、声かけへの反応が緩慢になりました。同時に自身で両上肢、右下肢の屈曲、伸展をされなくなりました。
私は少し離れたとこらからモニターで心拍数、不整脈、Aラインの血圧、呼吸状態がリハビリによりどのように変化するかアセスメントしながら観察をしていました。患者さんのことも見える位置で観察していたこともあり、意識レベルが悪くなったとすぐに気がつきました。
鎮静薬の量を増量したわけでもないため、意識レベルが悪くなるのはおかしい思い、バットサイドに行きました。
既往歴にAfがあるため、なんらかの刺激で血栓が脳に飛び脳梗塞になった可能性を考え、神経学的初見を観察しました。
瞳孔は左右差なく、反射も迅速でした。しかし、徒手筋力テストを実施したところ両上肢、右下肢MMT5だったところ、右上肢、右下肢は痛み刺激に逃避のみで挙上の維持ができずMMT3、左上肢はかろうじて挙上できるが力に反発する力がとても弱くMMT4でした。
左下肢は元々痛みがあり挙上できないためMMT3でした。
異常を感じた時の観察でも痛み刺激に逃避行動あり、MMT3でした。意識レベルの確認のため、名前や生年月日、日付、今いる場所を尋ねましたが呂律不評でとても聞きづらい発声での返答でした。上記を観察し、脳への異常があると判断し、その日のリーダー看護に状況を報告し、主治医に報告してもらいました。すぐにCT検査に下りることになりリハビリは中止になりました。
CT検査をすると脳の左に脳梗塞が完成されていることがわかりました。検査後、脳外科が介入しt-Paでの治療が開始になり、治療開始後は意識レベル、神経学的所見ともにもとの状態に戻りました。
・今回の患者さんを受け持つ際に考えていたこと
私はICUで勤務しています。
2:1の看護になるため、基本的には患者さんの側で状態のアセスメントや、看護の提供ができます。
今回の患者さんはまず、主疾患が壊死性筋膜炎であったため痛みの場所が拡大する可能性があることを考えていました。
痛みの範囲が広がることで壊死部分が広がり、状態が悪化しているかもしれない、もし悪化していたら敗血症性ショックに移行するかもしれないと考えていました。
痛みは観察以外のタイミングでも四肢を動かす時の表情やCPOTを観察して評価していました。状態が悪化し敗血症に移行していたらバイタルサインが変動するかもしれないと思い、Aラインのゼロ点を合わせ、心拍数、血圧の変化を観察していました。また、敗血症になれば初めは抹消がホットになるため四肢の冷感の有無、LOS兆候がないか注意して観察していました。
そして既往歴にAfがあり、左下肢の壊死性筋膜炎により痛みが強く自身で積極的に動かすわけではなかったので血栓が形成されるリスクを考えていました。
鎮静薬を投与中だったので意識レベルが変わった時に気がつけるかわからないとも考えていたので、鎮静薬の投与量とその時のRASS、返答状況、四肢の動きをポジションや声をかけたタイミングで意識的に観察していました。
致死性の不整脈が出た時の対応についても受け持ち開始時に自分自身の中でシミュレーションしていました。
また、患者さんがどんなふうに急変するリスクがあるか考え、それが起こった時の具体的な対応についても考えました。敗血症のような症状が出てきたら、バイタルサインと痛みを連動させて報告をする、脳外科の症状が出たら意識レベル、神経学的所見を観察して報告するとシミュレーションしていました。
・普段の受け持ちで看護師として意識していること
①急変時どのように対応するか考える
ICU入室中の患者さんは急変リスクが高い患者さんが多いです。そのため、生命の維持を目的に入院している患者さんが多いことになります。
普段、患者さんの1番近くにいるのは看護師になります。必然的に急変に対して1番に対応するのは看護師が多くなります。
このようなことから、まずはどのような患者さんにも起こりうる致死性不整脈が起きた時の対応について考えるようにしています。全ての患者さんに胸骨圧迫を行うのではなく、疾患によっては胸骨圧迫してはいけない患者さんもいるのでどのような対応をするか考えています。
同時に胸骨圧迫してはいけない患者さんに対してはペーシングの設定を確認するようにしています。
次にその患者さんの主疾患から起こりうる急変リスクについて考えています。術後であれば出血リスクが高くなります。どのくらいの出血量や性状で医師に相談すべきか事前に考え、1時間ごとに観察しています。また、出血量や性状だけでなくそれに伴うバイタルサインの観察もしています。
このように急変時に何を観察して、どのように動くか行動レベルで考えるようにしています。
②患者さんの安楽について考える
ICUであるため、オープンフロアになり一般病棟と比較するとプライベートがない状況になります。ICUに入室する患者さんはストレスを感じやすい状況になります。このことから、環境整備を実施します。危険行動がない、急変リスクが比較的少ないと考えられる患者さんのベット周辺はパーテションで囲ったり、周囲からの目が隠れるように工夫しています。
また、安静度が厳しくされている患者さんも多いです。意識がしっかりしている患者さんにとっては特に安静度が厳しいことはストレスになると思います。そのような時はこまめにポジショニングを提案するようにしています。それでも腰が痛かったりストレスが溜まっているように感じると医師に鎮静薬の使用を相談するようにしています。
痛みに対しては、どのような痛みなのか、心理的なことが影響している痛みなのか、様子観察しても良い痛みなのか疾患からアセスメントしています。心理的な痛みであれば、不安や思いを傾聴するようにしています。術後や治療後の痛みであれば薬を検討して痛みの軽減を図れる看護について考えます。内服して良い患者さんなのか、内服はしてはいけないのかそこを確認後、医師の指示を確認するようにしています。それでも痛みがおさまらない状態であれば他に使用できる鎮痛薬はないか医師に確認します。
③患者さんらしい生活になるように
状況によりますが、ICUに30日以上滞在する患者さんもいます。一般病棟と比べると患者さんの荷物を置く場所が少なく、非日常の空間になります。そのような時は点滴台にかけれるような写真を持ってきてもらったり、時計を持ってきてもらうようにしています。またどのような生活をしていたか家族から情報収集し、好きなTV番組を見る時間やラジオを聞く時間を確保して、なるべく日常に生活リズムを近づけるような関わりを心がけています。
まとめ
アセスメントは普段からいかに考えるかだと思います。また考えるだけではなく、それが起こった時にどのように動くかまで行動レベルで考えることだと思っています。些細なことから、たとえばリハビリ中頻呼吸になったのはなぜか?心拍数が上がったのはなぜか?と考える癖をつけることがアセスメント能力を伸ばすことにつながると思います。
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