「子供のころからの夢を叶えたい!」、「生きていくために手に職をつけたい!」、「AIが発達してもなくならない仕事に就きたい!」などなど。社会を経験したからこそ、看護師を志そうと考える方も多いでしょう。じゃあ具体的に看護師になるにはどうしたらいいの?試験なんてもう何年も受けてないけど…。学校に入ったら浮くんじゃないかな?といった、社会人が感じる疑問にお答えしていきます。
看護師養成学校の種類と違いは?
学校のお話の前に、まずは看護師資格の種類について説明します。看護師は厚生労働大臣の免許である正看護師と、都道府県知事の免許である准看護師があります。どちらも業務内容は大差はないのですが、養成年数が正看護師は最低3年、准看護師は2年になり、給与は多くの施設で正看護師の方が准看護師より高く設定されています。ここでは正看護師に関する内容に絞って説明していきます。
正看護師の養成学校として、3つの学校が選択肢として挙げられます。4年制大学、3年制短期大学、3年制看護師養成所(いわゆる専門学校)です。一つずつ説明していきます。
4年制大学:近年でもまだまだ新設の大学が増えています。私立、国公立いずれも設置されています。看護学部として設置されていたり、医学部看護学科というくくりで設置されていることもあります。
大学は文部科学省の管轄であり、「看護学を学ぶための場」なので、専門学校と比較すると1度の実習期間は1つの領域で2週間程度と短く設定されている学校が多いです。また、大学は研究機関でもあるので、看護研究に関して基礎から学ぶ時間が多く取られているのも大きな特徴です。4年制大学に行くメリットは、一般教養を学びなおせたり、保健師や助産師など、看護職としての更なるキャリアアップを目指しやすくなります。
また、専門学校よりは時間的余裕が多少あるので、アルバイトもしやすいです。社会人学生の方は学費や生計を自分自身で稼がなければならない方も多いでしょうから、アルバイトができるのは大きいかもしれません。大学の先生と信頼関係ができれば、研究の手伝い等で大学内でアルバイトができることも。
デメリットは、社会人から看護師を目指す方にとっては、専門学校との1年の違いが大きく感じるところでしょうか。あとは、市町村など公的団体が設立している看護専門学校と比較すると、どうしても学費が割高に感じるかもしれません。また、社会人学生の割合が少ないというのも特徴です。(詳細は後述します)
3年制短期大学:一般的に短期大学というと2年課程をイメージしますが、看護師の場合は国で3年の養成期間が定められています。短大は大学と同様に文部科学省管轄なので、一般教養科目が多く履修できるようになっていること、実習期間も大学と同様に専門学校に比べると短期間であることが多いです。
ですが、3年間で看護師資格取得に必要な学習を行うため、大学より時間はかなりタイトです。看護系短大の数は年々減少し、徐々に4年制大学へとシフトしていっている傾向があります。ですので、短大に行きたくてもそもそも近くに短大がない、ということもあると思います。
3年制看護師養成所:いわゆる専門学校です。大学とは異なり厚生労働省の管轄で「看護師資格を取得するための場」です。設置主体は学校法人だけではなく自治体、医療法人、医師会など様々です。
ですので、学費も学校によって多様。
自治体運営の学校は年間学費が10万程度のところもありますが、私立の学校は100万円程度かかるようなところも。専門学校のメリットは、なによりも最短で看護師資格が取れること。社会人にとっての1年間は大きいですよね。そして、専門学校の入学者は社会人学生が多いです。
大学よりも受験の難易度は比較的易しい学校が多いことが理由の一つだと思います。やはり高卒のフレッシュな若者の中で一人より、同じように社会人を経験した仲間がいるだけで頑張れますよね。デメリットとしては、とにかく忙しい。イメージとしては、高校のカリキュラムのように朝から夕方までみっちり講義や実技の授業が組み込まれていると思って頂いていいと思います。
実習期間も大学、短大よりも長く1つの領域で3週間ほど。1~2年生で専門知識を叩きこみ、2年生の最後~3年生の12月くらいまで実習漬け、3年生の2月に国家試験という超ハードスケジュールです。長期戦を走り抜ける持久力が必要となります。
学校についての話から、奨学金についても少し触れておきます。大学・専門学校ともに奨学金を借りるという方法もあります。学校によって様々で、独自の奨学金を設けている学校もあります。
また、特に専門学校では自治体や病院が奨学金制度を作り、指定した就職先と就業年数をクリアすれば、返済が不要になるという制度もあります。安価な専門学校では奨学金で学費をまかなえてしまうことも。学校や自治体、気になる病院のホームページで情報収集をしてみてください。
社会人から看護師になる人ってどれくらいいるの?
厚生労働省の看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査によると、大学では約4%、専門学校では約23%が、高校新卒者を除いた入学者の割合です。こうして比較すと、明らかに専門学校の方が多い割合ですね。上の項目でも述べていますが、この違いは大きく入試制度にあると思います。
専門学校の入試は基本一般入試で、国語、数学、英語と面接というパターンが多いです。科目だけ見ると抵抗を感じますが、難易度は易しい学校が大半です。現役高校生と戦う!と考えると気負ってしまいますが、過去問で対策すれば十分対応できると思います。
大学では社会人向け入試制度を設けていることが多いです。多くは小論文と英語、面接というパターンです。募集人数は、若干名の募集としていることが大半です。
もちろん大学にも一般入試で入ることは可能ですが、共通試験対策などを考えると、かなりハードルは高くなるかと思います。
学歴が欲しい!という方には、有名な国公立や私立大学にも看護学科が設置されていることが多いです。看護学科は他の学科と比べて難易度が低めなことが多いので、科目数の少ない社会人入試の試験だけで超有名大学に入学できる!なんてこともあります。また、既に4年制大学を卒業している人には、学士編入という選択肢もあります。卒業した大学の単位を一部認定してくれ、2年次に編入するという制度です。「一般教養はもういいから、看護の知識を学術的に大学で学びたい!」という方にはぴったりな制度です。
入試対策として、社会人入試や看護専門学校受験に特化した予備校に通うという方法もあります。
このような場では、志望校に合わせた対策をしてくれるため、試験に不安があるという方には向いていると思います。
また、同じように社会人から看護師を目指す仲間にも出会えるので、試験勉強のモチベーション維持にも役立つでしょう。多くの学校では過去問題を公開していますので、過去問題を取り寄せて自分で対策するだけでも、個人的には十分有効だと思います。大事なのは、オープンキャンパスや見学会などに参加したり、ホームページで情報収集を行い、志望校を数校に絞って、その学校に合わせた傾向と対策を練ることです。
学校に入ってどんな勉強をするの?社会人学生として心がけておいたほうがいいことは?
看護師資格を取るためのカリキュラムは、国で決まっています。人間の身体構造や機能について学ぶ解剖生理学、薬物が生体に及ぼす影響について学ぶ薬理学、看護の基本を学ぶ看護原論など。また、看護師は様々な看護技術の習得が必要ですので、それらを学ぶ技術の授業もあります。
そこから発展し、対象(患者さんなど)を医療知識を駆使してどのように捉え、分析し、その対象の持つ課題や目標に対してどのような看護を提供していくべきか、というところまで考えられる事が最終目標となります。
そして、それを考える訓練としてグループワークをしたり(演習)、実際の臨床の場に出て患者さんに看護を行ったり(実習)します。
これらの過程を経て得た知識を総動員して臨むのが、最期の難関の国家試験です。医療に馴染みのない人にとっては、難易度が高く感じるかと思いますが、基礎からしっかりと体系的に学んでいくので、それほど不安に思わなくても問題ありません。
これは社会人の方だけではないのですが、看護師養成課程を乗り越えるには、とにかく一つ一つこなしていくしかありません。
耳馴染みのない呪文のような言葉の授業、鬼姑(笑)のように厳しいチェックの入る技術試験、そして記録の山と臨床独特の緊張感に飲まれて精神的に追い込まれる実習。
これらをこなしていくためには、同級生と年齢性別問わずに切磋琢磨しながらも協力していくことが一番です。なので、年齢を気にしすぎないでほしい、ということをお伝えしたいと思います。
若い子たちと一緒に騒ぐ必要はありません。ですが、壁を作ることも不要です。最初は距離があっても、必ず打ち解けていきます。また、社会人学生の強みは、社会人として他者と関わった経験だと思います。
分野は問わず、このような経験があることは、看護をしていく上で大変重要です。看護は閉鎖的な世界です。そして非日常が日常です。そんな世界で「普通の視点で相手を捉える」ということが、とても大切なのです。また、社会を知らない新卒の学生たちにとって、厳しい社会を知る大人の余裕は、心のよりどころにもなります。これまで経験してきたことに無駄はありません。社会人としてのあなたの経験は貴重なものです。その経験をぜひ、看護の世界で活かしてください。
まとめ
社会人から看護師になるための基本的な流れや心構えについて、簡単に説明させていただきました。今回は記述していませんが、看護師資格取得後も多くの選択肢があります。看護師が働く場は臨床だけではないのです。大切なのは、なぜ看護師になりたいのか、看護師になった後にどうしたいか、です。看護師になるには、一筋縄ではいかないことも多々あります。社会人経験者としてのご自身の強みを生かして、なりたい自分になってください。応援しています!
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