手術室の手前までは誰でも行くことはできます。でも、その向こうで何が起きているのか、実際に見る経験は少ないかと思います。それは看護学生の間もです。看護師になり、手術室の配属になったからこそ経験できるの手術室看護の特徴と、手術室看護師になるための方法、勉強の仕方などをお伝えします。
手術室看護師の特徴
手術室看護師(以下、オペ看)は、全身麻酔、それから局所麻酔で行われる手術に看護師として関わる、手術室専門の看護師です。この分野の勉強は、恐らく看護学生の時は行わないと思います。私も、学生の時、一度さっと見学しただけでした。しかし、実際には、大きな病院では毎日何件も、場合によっては何十件も手術を行っている病院もあります。医師の隣で器械を出す直接介助(または手洗い)と、間接介助(または外回り)と呼ばれる二役のどちらを担当します。経験を積めば、滅菌室や、また術前訪問、リーダーなど、手術周辺の仕事を行うこともありますが、メインはこの二役を行うことです。オペ看になる方法、またオペ看になるために求められることについて、ご紹介したいと思います。
オペ看になるための直接的な方法
オペ看になるためには、自分が就職したいと思う病院が、まず手術を行っているかの確認が重要になります。次に、手術室に専属に看護師を置いているか、というのも重要になってきます。オペ室専属の看護師になるためには、そのような配置をしている病院かを確かめる必要があります。というのは、規模が小さく、週に1~数件しか手術をやっていない病院だと、専属で看護師を置いておらず、手術をする日にだけ、病棟などから、手術も対応できる看護師を呼んでくるという可能性もあるからです。ですので、オペ看になりたいと思う場合は、まずしっかりと、自分が就職したいと思う病院が、手術を行っていることや、手術室に看護師を配置していることを確認し、就職することを強くお勧めします。そして、自分が手術室に就職したいと思っていることを、きちんと要望で伝えましょう。
病棟の勤務経験が必要か
これに関しては、どちらもでよいというのが、私自身の考えです。病棟を経験してからオペ室に来ることによって、より一層、患者さんの病態の理解や、術前、術後の様子をしっかり把握できているというメリットもあります。一方で、先にオペ室を経験してから、後で病棟に行くと、病棟では抜けている術中のイメージをしっかり持ち、術後の状態への理解をさらに深めることができるでしょう。また、医師の説明についても、一層理解することができるようになります。これについては、絶対に病棟を経験してからのほうがいいとか、そうではないとか、そういったルールは特にないと思うので、病院の方針、看護部の方針に沿いつつ、ご自身の希望で決めることができると思いますので、安心してください。
オペ看になるために求められること
オペ看になるために、私は以下の3つのことが、特に必要であると考えています。
・学習に対する意欲と向上心を絶やさないこと
・しっかりとしたコミュニケーション能力を持っていること
・その場のニーズに気付き、行動できる能力
順番に、ご説明していきたいと思います。
学習に対する意欲と向上心を絶やさないこと
オペ看になるには、「学習に対する意欲と向上心を絶やさない」人であることを強くお勧めします。なぜなら、看護師としてどの分野でもそうなのですが、手術室は特に、日々の勉強が欠かせないからです。病棟にいれば、ある程度同じ科、同じ疾患の人を担当することもあるでしょう。しかし、手術室の場合、病院にもよりますが、大病院の場合、今日と次の日で、全く違う科の全く違う疾患に対する手術を担当するということは、普通のことだからです。緊急手術もありますし、予定していた手術がなくなり、突然別の手術を担当する、なんていうこともあるからです。日々違う手術に向き合っていくため、一度経験した手術はしっかり振り返り、経験としてストックすることと、次の新しい手術のためにしっかり予習して臨むことは欠かせません。また、手術ごとに違うたくさんの器械の名前を、手術の手順のどこで使うのかも一緒に覚えていく必要があります。そのため、日頃からしっかりと自分で学習し、意欲的に取り組んでいく姿勢が求められると思います。
しっかりとしたコミュニケーション能力を持っていること
オペ看には、「しっかりとしたコミュニケーション能力」も求められます。手術室では、患者さんとの関わる時間はとても少ないです。麻酔がかかる前の少しの時間しかありません。しかし、その時間にできる限り、患者さんの不安に寄り添うような声掛けができるかどうかは、マニュアルのようなものはなく、その看護師のコミュニケーションスキルだなと思っています。同じ看護師とのコミュニケーションはもちろん、外科医、麻酔科医、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師など多くの職種と一度に関わる可能性があるのが、このオペ看の特徴でもあります。いわゆる「報連相」をすべきことをしっかり判断し、伝えていくことが、オペ看には求められます。時に緊急な場面もありますので、何をどのように報告したり、連絡したりすべきか、適切な判断力が求められます。いつでも面倒がらずに、しっかりと他の人とコミュニケーションを取っていくことが求められます。
その場のニーズに気付き、行動する能力を持っていること
オペ看になるには、「その場のニーズに気付き、行動できる能力」も必要だと思います。誰のニーズかというと、まず何より患者さんのニーズです。手術中、患者さんは麻酔下のため、自分で声を上げることができません。だからといって、何もニーズがないわけではありません。患者さんのバイタルはどうか、体位は可動域の範囲内か、皮膚の圧迫はないかなど、声を出さない患者さんのことを、モニターと、そして自分の目で見た患者さんの様子から、しっかりと判断することが必要になります。観察力や、データからの判断力が必要となってきます。
また、もう一つのニーズとして、医師や同じ看護師のニーズというのもあります。直接介助であれば、医師がスムーズに手術できるように、次は何の手順であり、何が必要になってくるのか、先を読む力が必要となりますし、手術の流れによって何が必要となってくるか、臨機応変に対応することも必要になります。
また、間接介助であれば、さらに全体を見て、医師、直接介助の看護師が何を必要としているのか、手術室全体を見回して判断し、ニーズを満たしていくことが必要となります。
これは全て、手術が滞りなく、スムーズに終わることが、ひいては患者さんのためになるんだということをいつも念頭に置いて、医師や同じ看護師のニーズまで考えているからです。このように、相手の思考や要求を考え、ニーズに気付き、それを満たす行動を取るところまでできることが、オペ看には求められます。
このように、オペ看は、実際に就職して配属されてから学ぶことが多いですし、看護学生の時の実習で見た病棟の様子とも随分違う仕事内容となります。
その分、毎日変化に富み、多くの科に関わることができ、手術室の向こう側の、なかなか見る機会のない手術そのものに携わることができます。
麻酔科の先生や外科医の先生からの信頼を得ていく看護師は、手術にとってなくてはならない存在となり、それはひいては、病気に立ち向かい、手術という重大な決定をした患者さん自身を支え、回復につなげていくことにもなります。関わる時間は短くても、これは患者さんのためになっているんだという思考回路を持ち、日々、仕事することができる場所です。ぜひあなたも、オペ看を目指してみてくださいね。
まとめ
いかがでしょうか。オペ看は、看護師であったとしても、手術室に配属されない限り、経験できないことがたくさんある場所です。手術室には多職種が関わりますが、手術室にずっといて、手術室に入った患者さんと誰よりも長くいるのはオペ看ですし、手術中も看護の視点があるからこそできることがたくさんあります。看護師としてとてもやりがいのある仕事ですので、ぜひ目指す看護の一つとして、オペ看も目指していただければうれしいですし、この文章が、そんなあなたの一助になれば幸いです。
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