日本訪問看護財団のデータによると訪問看護ステーションは2010年以降の10年で約2倍となっています。病院の入院期間の短縮に加え、在宅療養のニーズが高まっているなか、訪問看護師の需要も高まっています。
今回、看護師歴15年以上で現在訪問看護師として働く立場から、訪問看護師になるにはどのような仕事内容なのか、どのようなスキルが必要か、メリット・デメリットについて解説します。
初めに訪問看護師になる条件について解説します。
訪問看護師になるためには正看護師もしくは准看護師の資格が必要です。事業所によって訪問可能範囲を定めていることが多く、範囲の広さによっては自動車の免許が必要な場合がありますので事前に確認しておくと安心です。
また、訪問看護ステーションは病院と違って看護師の人数も少なく、そこでの人間関係も大切になってきます。働いている方の年齢層や相談しやすい環境かどうか、働いてからでないと分からない部分もありますが、可能な範囲でご自身の目で確かめておくと良いでしょう。
次に訪問看護師の仕事内容について解説します。
訪問看護師は疾患や障害を抱えながら生活しているご自宅に伺って看護サービスを提供します。車で移動することが多いですが、地域や事業所によってはバイクや自転車等を利用する場合もありますのであらかじめ確認しておくと安心です。一日の訪問件数は4?6件くらいです。
主治医から出される訪問看護指示書をもとに、基本的には看護師1名が訪問し、30分、60分、90分と決められた時間でサービスを実施します。記録もデジタル化してきていますが、手書きのところが多いのも現状です。
具体的には病状の観察、福祉用具の相談や療養する上での相談、内服確認やセット、排便コントロールや入浴・清拭など、爪切りの保清の介助、ターミナルケアなどを行います。他には、医師の指示で点滴やカテーテルの管理、褥瘡の処置や、人工肛門・人口膀胱等の管理を行うこともあります。
訪問中、何か気になることがあった場合はケアマネージャーや主治医、家族等に連絡することもあります。
訪問看護ステーションは平日の日中のみ訪問している事業所が多いです。しかし、訪問看護ステーションの営業時間外に体調が悪くなったり、看護師に相談したい事柄が生じる場合もあります。そのようなことが起きる可能性のある方やご自宅で最期を迎えたい方に向けて、24時間看護師に相談・訪問ができるサービスを提供している事業所もあります。その場合は看護師が仕事の携帯を持ち帰り、利用者やその家族からの連絡があった場合に対応することもあります。オンコールの対応については負担に感じる方もいると思うので、オンコールの電話の有無や当番制の仕方については事前の確認が必要です。
その他、月に1度訪問看護計画書や報告書の見直しなど事務作業もあります。また、退院カンファレンスへの参加やケアプランの変更時に行う担当者会議に出席し、訪問時の状況を報告したり、ケアプランの変更に関して意見を出すこともあります。
次に、訪問看護師に求められるスキルについてご説明します。
上記のような仕事内容を基本的には利用者さん宅で看護師一人で実施する必要があります。ご自宅によっては病院のようにケアに必要な物品がすべて揃っていないこともあります。
そのため、基本的な看護技術とともに、自宅にあるもので応用をきかせて使用するなど、柔軟に対応できるスキルが大切です。
そうは言っても、誰でも一人で訪問するのは不安が募るものです。利用者さんとの顔合わせや看護師同士の情報共有を目的に同行訪問を取り入れている事業所がほとんどです。
看護技術に不安がある場合は研修や教育・フォロー等の充実している事業所であるか確認してみて下さい。また、事業所に研修等がない場合でも看護協会等の外部の機関でも研修をやっていることも多いので確認すると良いでしょう。
訪問看護では利用者の年齢層も幅広く、多岐にわたる疾患を抱えた人が在宅療養しています。そのため、疾患に対する理解や基本的なバイタルサイン測定、フィジカルアセスメントは必要な看護技術と言えます。ただし、全ての疾患を完全に理解しておくのは難しいので、日々の業務を行いながら疾患の理解を深めたり、分からない点についてはその都度調べる等の方法を取るのが良いでしょう。
訪問看護では療養環境や家族関係、価値観など家庭それぞれで異なります。そのため、訪問看護師は利用者の方や家族の意思を尊重しながら個別性の高い関わりが大切です。医師の指示があっても守れていないことも多く見受けられ、教科書通りにいかないことも多々あります。利用者やご家族の意志を尊重し、どうしたら安心して在宅療養を続けられるか一緒に考えることもあります。
また、病識のない方にも分かるように、分かりやすく説明したり実施しやすい方法を提案する必要もあります。
また、利用者さんやそのご家族の他に往診の医師や薬剤師、訪問介護士、ケアマネージャー、リハビリなどを行うセラピストとも密に連携を取りながら仕事をしています。日頃の報告、連絡、相談を意識するとともに、関係機関とのコミュニケーションが一番大事です。
訪問時に発熱等の病状悪化に遭遇する場面もあります。その際は主治医や救急隊へ迅速に状態報告をしたり、家族への連絡など、緊急時に対応する能力も求められます。
最後に訪問看護のメリット・デメリットについてご説明します。
まず、メリットについてです。決められた時間ではありますが、1対1で目の前の利用者さんにあった看護の提供ができることです。この点は病院や施設での看護と違いで訪問看護の魅力の一つです。それゆえ、利用者さんとの信頼関係が生まれると「あなたに来てもらって良かった」「来てもらって助かった」などの言葉もいただけることがあり、とてもやりがいのある仕事です。また、病院では配属された科にはある程度限られた疾患の患者様を対応することが多いですが、訪問看護では幅広い疾患に携われるのも特徴です。事業所によっては小児や精神の疾患を受け入れているところもあります。
幅広い年代の方や価値観の違う方とのコミュニケーションは時に戸惑い、時に勉強になります。訪問看護師としてやりがいがあることはもちろん、人間としても大きく成長ができるのが訪問看護師ではないでしょうか。
訪問看護ステーションは夜勤がない、土日がお休みであることが多いです。お子様の急な発熱や学校行事など、時間の融通もきくのもワークライフバランスを考えるうえで大きなメリットと言えるでしょう。
次にデメリットについてです。事業所との雇用契約にもよりますが、利用者の入院やショートステイの利用等によって訪問件数が変動することがあります。また、インセンティブを設けている事業所もあり、訪問件数の変動によってインセンティブも変動し、結果的に月々の給料も変動することがあります。
また、オンコールの担当で電話が鳴った場合は対応しなければなりません。基本的にオンコールの電話は事業所の営業時間外の連絡です。時には夜中や明け方に連絡が入ることがあります。助言や相談のみで済むこともありますが訪問しなければならないと、それが負担になることがあることがあるかもしれません。
基本的に一人で訪問するため、アセスメント能力が必要になります。ただ、一人ではわからない点や気になる点は同僚・先輩看護師に相談することで解決できます。
また、人によっては車の運転がデメリットと感じる方もいるかもしれませんが現在はカーナビもありますので、慣れてくれば問題ないと考えられます。また、在宅療養の方は独居の方も多くいらっしゃいます。お宅によっては掃除が行き届いておらず、綺麗とは言えない療養環境の方もいらっしゃいます。訪問看護の場は在宅になりますので、潔癖な方には大変な訪問先もあるかもしれません。
まとめ
以上、訪問看護師になるための方法やメリットデメリットについて解説してきました。これから少子高齢化が進むにつれ、訪問看護師の需要は高まると考えられます。
看護師としての働き先はたくさんありますが、一つの働き先として訪問看護の案に加えてみてはいかがでしょうか?これから訪問看護を検討されている方の参考にしていただけたらと思います。
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