認知症患者のアセスメントとケア

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#2208 2023/06/02UP
認知症患者のアセスメントとケア
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認知症患者さんは、その程度によっては本来の疾患に大きな影響を与えます。治療をしたくても認知症があるために上手くいかない、ケアが出来ないといったことも少なくありません。そんな認知症患者さんにどのように対応していくといいのでしょうか。

著者である私は、これまで内科や整形外科、訪問看護といった分野で勤務をしてきました。いずれの病棟でも、基礎疾患と認知症があるという患者さんは多かったですね。認知症というのは、今やだれもがなる可能性があるものであり、入院してくる患者さんに認知症があっても不思議ではありません。 高齢化が進み、80代、90代でも外科的手術をしようという場合も少なくなく、高齢であるほど認知機能が低下していることが多いのです。そのため、どの病棟でも疾患の治療を行う上で認知症があるということが問題になる場合があるのです。 少しでも円滑に治療やケアを行っていくためにはどのようなことに注意していくべきでしょうか。ここではそんな認知症を持つ患者さんのアセスメントと看護について紹介していきます。

・認知症がある方のアセスメント

認知症と診断されていなくても、看護師が患者さんと話をしているとこの方は認知機能が低下しているなと感じることがあります。それは経験から感じられることであり、この予想は当たることがほとんどです。しかし、家族に聞いてみると「しっかりしている」「まだ大丈夫」といったように、認知機能の低下を全く自覚していないことがあります。それはいつも身近でみているから。気が付かないだけなのです。また認知機能の低下があっても、普段の生活はルーチンであるためこれまでと同じようにできることから、周りが「あれ?おかしいな」と感じることがないことも多いです。 病院やクリニックで初対面で会う医師や看護師は、敏感に感じ取ります。なんかおかしい、なんかこの患者さんは要注意といったように。そして認知力に合わせた説明などを自然と心掛けることが多いです。 ただ認知力が低下している人の中には、自分は認知症と診断されたことはないということにプライドを持っていることもあります。自分はしっかりしているから何でもできる、大丈夫とさえ感じていることも多いです。そのような自尊心を傷つけないような対応が、私たち医療従事者には大切だと思っています。

・入院すると状況が変わるので誰にも予測が出来ない

認知症の方のアセスメントをする上で大切なことは、もしも入院などをしたらどのような状況が起こりうるかを予測することです。これまでの生活環境が大きく変わることから、せん妄などを起こすことが少なくありません。 ただこれらは、ある程度リスクは予測できるものの、実際は入院してみないと状況はわからないのです。ただ可能性があるものは、事前にご家族に説明しておくことがとても重要です。また入院中に予測できることを説明し、必要な同意書や緊急の連絡先を聞いておくことも大切なことの一つです。 患者さんの中には、入院しただけでは状況は悪くならなかったのに、手術をきっかけにせん妄を起こすようになったという人もいます。手術後は点滴やドレーンなど、さまざまな医療器具、医療機器を使用していますし、生命の危険性にも直結をする可能性もあるので特に注意が必要です。 バイタルサインや身体的な状況が落ち着いていたとしても、精神的な状況が変化する場合も多いので、術後は特に注意をするべきでしょう。必要があれば生命の危険性の方を重視して、最小限の拘束をすることも重要です。そのあたりは、事前に本人やご家族に説明し、同意をとっておかなくてはいけません。

・認知症の患者さんの不安の軽減に努めることが一番の鍵

認知症患者さんに限らず、入院するということに不安を感じる人がほとんどです。不安を感じても、必要な治療が優先されるからと自分で優先順位を決めて、入院して協力的に治療を受ける人が多いですが、認知症の患者さんは、その不安に対処することが難しいのです。大丈夫だろうか、どうなるのだろうかと先が見えない状況に混乱し、不安がせん妄などを助長しかねません。 そのため、認知症患者さんのアセスメントをするときには、より詳しく分析し、それをわかりやすく説明することがとても重要です。 例えば、次は何をしますよと必ず声をかける事。声をかけることで、忘れてしまうかもしれませんが次にすることがその時には理解できるので、安心感を得ることができます。ただ重要なことは、あまりたくさんのことを一度に説明しないことです。 不安を抱えているときに、たくさんのことを説明されても、普通の患者さんも理解できないことが多いです。ましてや認知症患者さんは混乱を招いてしまうだけなので、今の状況から一番近い計画を丁寧に伝えるだけでいいのです。誰かがそばにいてくれる、誰かが心配をしてくれる、気にかけてくれるというだけで安心する患者さんも多く、それが精神的な安定につながるのです。

・入院中に徘徊をしてしまったら?

例えば高度な治療を行っている時期を過ぎて、身体が自由に動かせるようになってきたら、徘徊をするという認知症患者さんもいます。入院中の病棟では、看護師を始め看護助手や事務の人もいるので、徘徊をしている患者さんがいるとすぐに見つけることはできるでしょう。しかし、それをなだめて病室に返してあげるのが意外にむずかしいのです。特に自分が元気になった、もう動けると思っている患者さんにとっては。 そんな間にも、看護師は他の患者さんのケアをしていかなくてはいけませんね。そのような場合、どのように対応すればいいのでしょうか。もちろん頻回に病室をラウンドするということも重要です。また眠前などであれば、医師の指示で眠前薬を使用するといったこともあるかもしれません。 それでもなかなか入眠できず落ち着かない、目が離せないというときには、転倒リスクなどを考慮して、車いすやベットでナースステーションに一時預かりとすることもあります。特にマンパワーが不足している病院や病棟では、それしか方法がないといった場合もあるのです。 著者である私は、病棟内のラウンドをするときに、目が離せない認知症患者さんを車いすにのせて一緒にラウンドしたことがあります。ラウンドすれば認知症患者さんの気分転換にもなります。私も徘徊をされないので転倒リスクがなく安心してラウンドをすることができました。 認知症患者さんがいて、せん妄や徘徊が落ち着かず目が離せないといったときでも、他の患者さんのケアや看護を平行して行っていかなくてはいけません。特に重症患者さんが他にいたら気にかかりますね。認知症患者さんだけにかかりきりになるわけにはいかないのです。 しかし、その状況が永遠に続くわけではありません。大変な状況がある反面、そのあとに認知症患者さん自体が疲労でぐっすり入眠するという場合もあるのです。そうすれば看護師は他の業務に集中して取り組むこともできます。そのような状況を繰り返しながら、認知症患者さんの看護を乗り越えていくしかありませんね。他の看護師と協力もしながら、その時に必要な対応をしていかなくてはいけないと思っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本来の治療のために入院してくる患者さんで認知症があるという人は増加傾向にあります。その際には、その程度、入院によって考えられるリスクなどを考慮してしっかりとアセスメントをしていく必要があります。また患者さん一人一人状況が異なるので、個別性を考慮した対応が重要になってくるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

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