発熱のアセスメント 訪問看護の場合
高齢者の発熱は看護師が第一発見者になることがあります。在宅看護では、家族が発熱に気づいて、訪問看護師に連絡を入れることもあります。発熱の原因として多いのは、尿路感染症や誤嚥性肺炎です。今回は、在宅看護での発熱のアセスメントについて解説します。
在宅看護で発熱をアセスメントすること
病院での看護はさまざまな仕組みで、患者さんの異常の早期発見ができるように治療の環境が整っています。例えば、病棟のルールや申し送りで、個々の患者さんのバイタルサインの測定タイミングが決められています。また、測定されたバイタルサインが、温度板に記入されることで見てすぐに異常が分かりやすいです。バイタルサインを測定して、患者さんの様子を観察するのも看護師なので、知識のある専門職です。
在宅では、患者さんの様子を近くで観察するのは、家族である場合がほとんどです。場合によっては、患者さんが一人暮らしであることもあります。家族がいても、家族ご自身の生活が忙しかったり、介護をするのが初めてで、患者さんの状態を観察することに慣れていないこともあったりします。そのような在宅の環境で、患者さんの発熱をどのようにアセスメントするか、コツについてお伝えします。
高齢者の発熱から考えられること
高齢者が発熱した場合に、予測される疾患として以下のものがあります。
・尿路感染症
・誤嚥性肺炎
・骨折
・敗血症
・インフルエンザやコロナウィルスのような流行感染症
これらの病気の可能性を考え、発熱の熱型やバイタルサイン、その他の症状についてアセスメントをします。
発熱の熱型を把握する
訪問看護の際や家族からの連絡などで、発熱に気が付いた場合の観察ポイントについて以下にまとめます。
まず、家族が報告してきた場合には家族へ問診します
・いつからか
・何度あるか
・熱をはかった理由
・その時の様子
以上を問診の上で、発熱の原因についてアセスメントします。
発熱の原因をアセスメントする
発熱がおきるような状態の原因としてなにが考えられるか、アセスメントをしていきます。まず、流行感染症が流行っている場合には、発熱した際には抗原検査やPCR検査をします。
次に、患者さんに尿路感染症や誤嚥性肺炎の既往歴がないか確認します。尿路感染症や誤嚥性肺炎は、一回罹患すると、生活習慣や嚥下機能の状況によっては、二回三回と繰り返すことがあります。この場合には、感染を繰り返す度に、体力の消耗が生じます。患者さんの既往歴について、記憶に自信がない場合には家族へ確認をしましょう。
尿路感染症の兆候は
尿路感染症を疑う場合、排尿があるか確認をします。排尿があった場合には、尿に匂いはないか、血尿がないかを確認します。尿路感染症があると、排尿の匂いがきつくなる特徴があります。また、血尿は尿路感染症の場合にみられますが、血尿以外でも濃縮尿や膿尿といった尿の状態は尿路感染症の症状のひとつです。飲水の量についても確認します。飲水量が少ない場合には、尿路感染症のリスクが高くなります。
誤嚥性肺炎の兆候は
誤嚥性肺炎の兆候で、最も有用なのは呼吸音です。呼吸音で雑音が強い場合には、誤嚥性肺炎の可能性が高いといえます。他には、喀痰量の増加がないかも確認します。高齢者で無気肺が多い場合には、呼吸音の雑音が聴き取りにくくなることに注意が必要です。呼吸の苦しさを訴えていないかという点も確認します。誤嚥性肺炎を起こす場合には、その前から嚥下の状態が不良であることが考えられます。普段の嚥下の状態についても、理解しておく必要があります。
骨折による発熱
大きな骨を骨折している場合、発熱が生じます。高齢で寝たきりでも、骨粗鬆症がある場合、骨折の可能性は常にあります。寝たきりの方は、骨折をしていても痛みを訴えることができない場合があります。関節可動域に異常がないか観察します。大腿骨周囲などの大きな骨の周囲に、腫脹や発赤、熱感がないか確認しましょう。もし、腫脹や発赤をともなっている場合には、骨折の精密検査を行うか家族と相談しましょう。発赤は、血腫のようなあざになっていることもあり注意が必要です。大きな部位を骨折している場合には、その周囲の広範囲で血腫が現れます。
敗血症の兆候は
敗血症は、高齢者では思うより高頻度で生じます。高齢で、ご家族が介護をされている場合、発熱して解熱剤で経過観察している間に、敗血症になってしまっていることがあります。病院の治療環境であれば、発熱時の解熱剤の使用タイミングが規律的に行え、熱型の把握がされます。しかし、ご家族が家庭で介護している場合には、どのタイミングで解熱剤が効いているのか把握しにくくなります。敗血症を疑う場合の問診の内容を以下にまとめます。
・発熱時の最高体温
・発熱時、もしくは発熱直前に体が震えていたか
・37,0度以上の発熱が何日継続しているか
・抗生剤の内服状況
敗血症になってしまっている場合、最高の体温が日に日に、高くなります。例えば、3日前には最高体温が37.7度、2日前には38.3度、昨日は38.7度、本日39.0度というように、抗生剤などの治療をしていてもこのような熱型である場合には敗血症を疑います。敗血症かどうかは、血液培養検査が必要です。往診の医師でも対応できることがあります。
熱型などが把握しにくい時の注意点
上記に紹介したアセスメントのポイントを確認していくなかで、難しさを感じた場合には、さらに家族などの介護者と連絡を密にする必要があります。電話でご様子をうかがうといった対応を追加します。発熱が継続しそうな場合には、再度体温測定をするタイミングを家族に伝えます。何時に再検をするか具体的に伝えます。測定したあとにお電話のタイミングを合わせるといったことができます。
また、往診の医師で対応が難しい場合や家族に入院の希望がある場合には、発熱の記録をつけるように家族に説明します。体温を計測した時間とその時の体温を記録していただき、受診や救急搬送の時に先方に渡すことで患者さんの状況がより伝わりやすくなります。
発熱の熱型や病状がアセスメントできたら
訪問看護師が、発熱の熱型や病状についてアセスメントを行うことができたら、まずは事業所の上司や管理者へ報告します。事業所として、対応を統一する必要があり、相談してから医師へ連絡することが大切です。主治医へ報告したうえで、診察がある場合には、必要があれば同席します。診察に同席する必要があるかといった点も、上司や管理者と相談し決めます。場合によっては、診察で検査をすることになります。必要な場合、検査の介助なども行います。検査結果を看護師も関心を持ち、把握する必要があります。
診察や検査の結果、抗生剤点滴の投与などを、訪問看護で行うこともあります。そのような場合には、点滴の投与のタイムスケジュールを事業所で相談する必要があります。
治療が始まったとしても、敗血症性ショックなどで急変する可能性が常にあります。この点を医師から家族へ説明してあるか確認が必要です。急変した場合に、救急搬送を希望するかといった点でご家族の意見を確認しておく必要があります。
訪問看護の特徴
病棟であれば、なにかあったらすぐ先輩に来てもらい、もしくはナースステーションに戻り相談できます。訪問看護は、多くの場合が看護師1人でお宅を訪問します。なので、訪問看護師は、一人で判断しなければならないような状況に感じることが多いといえます。しかし、実際には事業所の先輩や管理者を頼ることが大切です。なにか異常があったらすぐに報告しましょう。そのうえで、対応を事業所として決定していくことで、看護師の負担感も軽減されます。
まとめ
発熱でもっとも急変リスクがあるのは敗血症といえます。慢性的に尿路感染や誤嚥性肺炎がある場合などで、敗血症がおこります。訪問看護師は、こういった点に注意して発熱状況の全容についてアセスメントをする必要があります。順序だてて、アセスメントをすることで、確実に急変を減らすことができます。患者さんが地域で安心して生活を継続できるように、訪問看護師さんは支援していきましょう。
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