患者さんの訴えを良く聞くこと!そこからアセスメントを始めて、疾患に気づいた話

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#2151 2023/04/06UP
患者さんの訴えを良く聞くこと!そこからアセスメントを始めて、疾患に気づいた話
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私は脳神経外科病棟に勤務しています。ある日夜勤をしていると、「胸あたりがなんか苦しいような…」というナースコールがありました。訴えを聞き、バイタルを取って、12誘導を取ろうと準備していた矢先、なんと患者が意識消失!医師を呼び12誘導を取ってみると、洞不全症候群を発見しました。循環器は専門外でしたが、しっかり症状を確認できたことで患者はいち早くペースメーカー埋め込み術を行うことができました。

私は脳神経外科病棟に勤務しています。
新卒からずっと脳神経外科病棟に勤務していたため、他科の知識が薄いのではないかと思い、そんな自分にコンプレックスがありました。でも違うところに踏み出す勇気もない…そんな状況でした。こんな自分から脱却したいと思い、少しずつ脳神経外科以外の知識も勉強していました。

ある日、夜勤をしているとADL自立の患者さんからナースコールがありました。訪室すると、「なんか胸のあたりが苦しいような気がするんだよね。気のせいかな」という訴えがありました。患者さんは良性脳腫瘍でもうすぐ手術を控えていました。患者の意識ははっきりしています。「胸が苦しいか…。脳外科病棟しか経験もないし、苦手だな…困ったな」というのが本音でした。しかも夜中3時。医師は病棟には不在です。でも逃げるわけにはいかないのが看護の世界です。「私の受け持ち患者さんだし、ほっておけない!」と思いました。

まずは患者の訴えをよく聞いてみることにしました。どこが苦しいのか、程度はどのくらいか、痛みがあるのか、いつからなのか…。呼吸が苦しいのか、胸が苦しいのか。まずはアセスメントしようと思い、どんな疾患の可能性があるかを考えながら訴えを聞いていくと循環器的疾患が疑われると感じました。バイタルサインを測定しますが、安定しています。12誘導を取って不整脈がないか確認してから医師へ報告しようと考えました。

他の看護師への依頼し、12誘導の準備をしていた矢先。ドンと音がして患者のところへ戻ると、患者がベッド上で意識消失していました。急いで緊急コールを押し、医師と同勤務の看護師を集めました。医師が到着後すぐに患者の意識が改善しました。「血圧も低くない…やっぱり不整脈では?」と思い、12誘導を取ってみると、なんとSSS(洞不全症候群)を発見しました。5秒程度のSSSが多数、時折10秒にもなるときもありました。「これが原因で意識消失したんだ」と医師とともに確信しました。
朝一番で循環器医師へ診察を依頼し、12誘導を見せると「これはSSSだね。ペースメーカーの適応がありそうだ」ということになりました。

脳外科の医師と循環器の医師で、どちらの疾患の治療を優先させるかの話し合いがなされ、脳外科としてはこのような状態で手術を行うのはリスクが高いため、ペースメーカー埋め込み術を先に行ってほしいということになりました。患者さんと家族にも説明がなされ、翌日にはペースメーカー埋め込み術が行われました。
医師からは「しっかり症状を聞いてくれたからよかった。看護師がしっかり症状を聞いておいてくれるとこちらもとても助かるよ。12誘導もすぐに取れたことで疾患の発見がスムーズだったね。」と声をかけてもらいました。患者さんからも「家でもしこの症状があっても放っておいたか、もっと重篤になってから病院に来ることになったと思う。いつも看護師さんがよく話を聞いてくれるから、こんな症状でも少し見てもらったり聞いてもらえば安心かななんて気持ちでナースコールを押したんです。こんな病気も見つかるなんてびっくり。でも感謝しているよ。命の恩人だよ」と言ってくれました。

その後、この患者さんは無事に良性脳腫瘍の手術も行うことができました。
私はこの経験をする前までは、他科の知識の薄い自分にコンプレックスがありました。他の科へ異動して勉強してみたいと思っていましたが、飛び出す勇気もありませんでした。
「もう少しここで勉強しないと他でも通用しないのではないか…」そんな自信のなさから、異動することすら躊躇って数年経過していました。ですが、この経験から、そんな疾患であってもまずは患者の訴えを良く聞きながらアセスメントしていくことが大切であると実感しました。それはどこへいっても変わらないのです。

忙しい毎日の業務の中では、認知症や意識障害のある患者さんを担当することも少なくありません。何か声をかけても返答がなかったり、チンプンカンプンな返答だったり。患者さんとのコミュニケーションに疲れてしまうこともありました。しかし、患者の訴えを良く聞くことがアセスメントの基本であると思い出しました。

そして、アセスメントをする上で知識はなにより大切であることも改めて感じました。フィジカルアセスメントをしても、そもそもの疾患を理解できていなければ意味がありません。少しずつでも専門外の勉強も進めていたことが生かされた経験になりました。勤務していると、主疾患ばかりに目がいってしまうことも多いでしょう。しかし、同じ疾患であっても、既往歴やその患者の生活歴、人となりは全く違います。そこを理解してアセスメントをしていくことが看護師に求められるスキルであると思います。
私は今回の経験の後、もっと違う疾患のことも理解したい!経験したい!と強く思い、勇気を出して違う科へ異動しました。「私なんて使い物にならないだろう…」と弱音を吐いていた私ですが、異動したらそんな弱音を吐く時間すらもったいないと思えるようになりました。違う職場でもなんとかやっていけるんだという自信もつきました。異動の経験ができてよかったと思っています。

「石の上にも三年」という言葉があります。昔は、「まずは急性期病院で3年は経験しないとね」なんて言われた時代もありました。でも私は今はそんな時代ではないと思っています。自分の興味のあることにどんどんチャレンジしたらいいと思いますし、そこに経験年数は関係ないと思います。今は転職や異動はスキルアップにつながる時代です。若くても、経験が浅くてもスキルアップをしていく姿勢はとても大切だと感じます。

そして、私のように自信が持てなくて異動ができない、飛び出せないという人もいると思います。そんな人には、まずは自分の目の前の患者さんを包括的にアセスメントする能力を向上させる勉強をしてほしいと思います。すなわち、主疾患だけでなく、既往にある違う科の疾患も勉強するということです。そこからどんどん知識を増やしていくことで、少しずつ自信がついてくると思います。そして、飛び出す勇気がなくても、一つの職場で長く働くことができている自分を褒めてあげてほしいとも思います。そして、その職場で得られる知識はすべて吸収してやるぞ!という意気込みで仕事に臨んでいってほしいです。

長くなりましたが、私は看護師が患者をアセスメントする上では、まず「聞く」という力が大切であると思います。そして聞いた情報から、自分の知識をフル活用してどんな疾患が考えうるのかをアセスメントし、その内容を医師へ伝え、適切な処置へつなげていくことが私たちの役割であると思います。しっかりアセスメントができていて、知識のある看護師が対応することで、患者さんも安心するのではないかと思います。看護の現場は本当に忙しいです。でもその中で、すべての情報をないがしろにしない姿勢を持っていることで何かに気づけるのではないでしょうか。

まとめ

患者さんをアセスメントするには、まず「聞く」というスキルが大切であることです。それは科や疾患に関係なく、看護師に必要な技術です。しっかり訴えを聞くことで、患者へも安心感を与えることができると思います。そしてその聞いた内容を元に、自分の知識をフル活用すれば良質なアセスメントができると思います。
しっかりアセスメントができるようになると、自分に自信がつきます。その自信を元に、異動したり転職したり。または一つの職場で続けてみたり。選択肢の幅も広がると思っています。

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