看護アセスメントでマズローの欲求五段階説は使えるの?

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#2123 2023/03/09UP
看護アセスメントでマズローの欲求五段階説は使えるの?
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看護アセスメントの理論を学んでいてマズローの欲求五段階説について知り、使えるのかどうかを確認したいと思っている人もいるでしょう。マズローの欲求五段階説は看護アセスメントだけでなく、介護アセスメントでもよく使われています。ここではマズローの欲求五段階説がどのような考え方で、看護アセスメントにどうやって使えるのかを紹介します

#マズローの欲求五段階説とは

マズローの欲求五段階説とは人がもともと持っている欲求は五段階になっていることを唱えた理論です。提唱したのはアメリカで心理学研究をしている学者のアブラハム・マズローです。マズローはユダヤ系のロシア人の移民としてアメリカで育ち、1943年に「人間の同期に関する理論」で欲求五段階説を公表しています。
マズローの欲求五段階説では、人の欲求はピラミッド式の階層構造になっていると提唱しています。最も根底になっているのが生理的欲求です。続いて安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求という順になっています。看護アセスメントをする上でマズローの欲求五段階説を使うには、まずこれらの欲求について理解することが必要です。

##生理的欲求

生理的欲求とは人が生きていくために本能的に求める欲求です。お腹が空いたから何か食べたいという食欲、疲れたから眠りたいという睡眠欲、排便したいという排泄欲などが典型的です。生理的欲求はもし満たされなかったとしたら生命維持ができなくなります。お腹が空いたのに食べるものがなかったら餓死してしまうでしょう。強制的に眠れない環境にすると死んでしまうことも動物による実験で知られています。生理的欲求は生きていく上で満たされなければならない最低ラインの欲求です。

##安全の欲求

安全の欲求は安全に暮らしていきたいという欲求です。最低限度の生活を営み、身の危険を感じることなく暮らしていける環境を手に入れたいと気持ちだと言い換えることができます。紛争が起きていていつ銃撃を受けてしまうかわからない環境や、強盗やスリが多くていつ資産が失われるかわからない場所に住んでいると生活不安が大きいでしょう。働き口がなくて経済的に厳しく、安全な家に住めないというのも不安を大きくする要因です。また、健康面についても治療を受けられる、感染リスクが低い、栄養のあるものを食べられるといった欲求があるでしょう。いつも健康な心身を維持できる環境で生きていきたいというのも安全の欲求の一つです。

##社会的欲求

社会的欲求は周囲から受け入れられたいという欲求です。家族や友人などのプライベートの関係ももちろんですが、会社や学校などの社会的な関係についても該当します。自分が関わっている集団で居場所を求めたい、仲間として認識してもらいたいというのが社会的欲求です。受け入れてもらえないという意識があると大きな不安が生じます。人は本能的に何らかの集団に属していたいという欲求を持っているとマズローは考えています。人は一人では生きていけないとはよく言いますが、その心理を反映している欲求です。

##承認欲求

承認欲求は他の人から認められたい、尊敬されたいという欲求です。社会的欲求が満たされて集団に受け入れられると、その集団の中で高い地位を求めるのが人の心理です。心理的に満たされることで満足したいという欲求と言い換えることもできます。
承認欲求には段階があり、他人から尊敬されることで満たされる低位の承認欲求と、自分自身で自立して納得できる立場を確立することで満たされる高位の承認欲求があります。どちらの場合にも集団の中でアクションを起こす原動力になります。承認欲求が否定されると、自分の評価が低いと認識してストレスや劣等感を感じるのが一般的です。

##自己実現欲求

自己実現欲求は承認欲求の上位に位置しているもので、自分の希望する姿の自分になりたいという欲求です。どんな自分になりたいのかを考える余裕が出てきたときに生まれる欲求で、余裕が大きくなればなるほど「自分はこうあるべきだ」というイメージに従って自己実現をしようとする気持ちが高まります。自分だからこそできることを達成したい、自分の希望する生き方を目指したいというのが基本的な考え方です。
自己実現欲求を常に意識して生きられる状況は一般的に幸福です。生理的欲求や安全の欲求、社会的欲求や承認欲求が満たされていて、さらに余力を使って自己実現を追求できる状況になっているからです。

#看護アセスメントにおけるマズローの欲求五段階説の使い方

看護アセスメントではマズローの欲求五段階説をどのようにしたらうまく活用できるのでしょうか。欲求五段階説の概念がわかっても、具体的に看護アセスメントに使う方法がイメージできない人もいるでしょう。ここでは看護アセスメントをするときのマズローの欲求五段階説の使い方を3つの観点から説明します。

##患者が何を要求できる状況かを把握する

マズローの欲求五段階説を利用すると、患者が何を要求できる状況かを理解できます。マズローの欲求五段階説では欲求が満たされた段階で上位の欲求を持つというのが基本的な考え方です。生理的欲求が満たされたら安全の欲求を持つようになり、安全の欲求が満たされた時点で社会的欲求を考えるようになります。看護アセスメントをするときには患者の様子や家族の状況、病気の容態などを加味して、患者がどの段階にあるのかを考えましょう。もし生理的欲求は満たされているけれど、安全の欲求は満たされていないというのであれば、看護をする上で最も重要なのは安全の欲求を確保することです。病気を患っている患者は安全の欲求が強く、心身が健康になることを望んでいる傾向があります。しかし、患者によっては安全の欲求は満たされているけれど、社会的欲求が満たされずにうつ病になるケースもあります。また、重病の患者や高齢者の場合には生理的欲求を自分では解決できずに苦しんでいて、安全の欲求は二の次と考えていることも少なくありません。このように患者がどの要求段階にいるかを考えることで、看護師が何をする必要があるかを考えやすくなります。

##患者の心理状況を推察する手がかりにする

看護アセスメントをするときには患者の主観的情報を一つの根拠にします。検査結果や観察結果とは違い、患者から言葉で聞いた主観的情報は患者の心理状態によって異なるのが特徴です。例えば、経済的に不安があって安全の欲求が強いときには、追加の投薬によって痛みや苦しみを軽減するのを拒むでしょう。しかし、経済的に問題がなくなって安全の欲求が満たされたら、投薬によってつらい状況を軽減したいという気持ちが生まれてきます。
患者の心理状況がわかると、患者が最も満足する看護計画を考えられます。看護アセスメントでは情報に基づいて今後の看護計画を立てるのが重要なポイントです。患者の心理状況を理解する上でマズローの欲求五段階説でどの段階にいるかを考えるのは役に立ちます。

##評価に活用する

看護アセスメントは集めた情報に基づいて客観的に評価をして、今後の看護計画を立てるのに活用するプロセスです。マズローの欲求五段階説に基づいて、欲求の段階が上がっているなら看護や医療が成功したと評価できます。生理的欲求を満たすのが限界だった患者が、安全の欲求をするようになったら成果があったことがわかるでしょう。患者が以前と調子は変わらないと口では言っていたとしても、治療や看護の効果が上がっていると判断する根拠になります。看護アセスメントでは今までおこなってきた看護が適切だったかどうかを評価するのが重要なポイントです。マズローの欲求五段階説は患者の心理的な部分で効果があったかどうかを判断する評価軸として役に立ちます。

まとめ

看護アセスメントでのマズローの欲求五段階説の意味がわかったでしょうか。マズローの欲求五段階説は人がもともと持っている欲求を五段階に分けたのが特徴で、下位の欲求が満たされないと上位の欲求は強くならないという考え方になっています。看護アセスメントでは患者の要求や心理状態の把握にも評価にも使えるので、マズローの欲求五段階説をうまく活用してみてください。

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