救急外来の看護師になると看護アセスメントスキルの重要性が高くなります。どの診療科でも看護アセスメントは必要とされますが、救急外来看護では高いレベルでのスキルが必要です。ただ、他の診療科とは少し違いがあるので、救急外来の看護アセスメントについて詳しく見ていきましょう。
#救急外来ではフィジカルアセスメントが重要
看護アセスメントはフィジカルアセスメントをした上で、ヘルスアセスメントまで進めるというのが一般的です。ただ、救急外来看護では必ずしもこの考え方が通用しないので注意しましょう。
救急外来では看護アセスメントの中でもフィジカルアセスメントが重要になります。この点が他の診療科とは大きく異なるので、救急外来看護を担う上では頭に入れておいた方が良いでしょう。なぜ救急外来ではフィジカルアセスメントの重要性が高いのでしょうか。
・患者が応答できない状況が多いから
救急外来の患者は応答できない状況が多いのはフィジカルアセスメントが重要な理由です。救急車で運ばれてきて意識不明というのが典型的なパターンですが、家族が車で患者を連れてきて意識がない状況ということもあります。家族も取り乱していて、質問をしても明確な答えを得られないことがよくあります。このような状況でも有効なのはフィジカルアセスメントです。患者や家族から言葉で情報を聞くのが難しい状況だったとしても、フィジカルイグザミネーションを通して患者の状況について情報を得ることができます。その結果に基づいて身体状態がわかればすぐに治療を始められるでしょう。
・看護師の問診が医療のスタート地点になるから
救急外来では来院した患者に対する看護師の問診が医療のスタート地点になることがよくあります。救急車で運ばれてきた患者の場合には救急車内で問診や簡易的な検査がおこなわれているので、その結果に基づいて医療がスタートするのが一般的です。しかし、家族が車で救急外来に連れてきたという場合には、窓口に立つ看護師による問診によって得られた情報がすべてのスタートになります。緊急性がある場合には他の患者を後回しにして、先に集中治療室に送らなければならないこともあります。もし看護師がきちんとフィジカルアセスメントをせず、治療の緊急性があると判断できなかったら命を失う可能性もないわけではありません。看護師の問診によるフィジカルアセスメントが担う役割が大きいのが救急外来の特徴です。
・ヘルスアセスメントに進める時間的な余裕がないから
救急外来でもフィジカルアセスメントだけにとどまらずに、ヘルスアセスメントまでおこなった方が良いのではないかと思う人もいるでしょう。しかし、救急外来では一分一秒を争うことが多いので、時間的にヘルスアセスメントまで展開する余裕がありません。患者の容態が落ち着いてきているようであれば、診察を始める前にヘルスアセスメントまで進めた方が良いでしょう。しかし、身体的側面や心理的側面だけでなく、社会的側面まで問診で聞けるほど患者の容態も良くない場合がほとんどです。そのため、フィジカルアセスメントまでで的確な判断をすることが看護師にとって重要なケースが多くなっています。
#救急外来の看護師がフィジカルアセスメントをするコツ
救急外来で看護アセスメントをするシーンは患者が来院する度に発生します。フィジカルアセスメントを通していかに速やかにアクションを取れるかが、医療の結果につながる重要な要素です。救急外来の看護師がアセスメントをするときにはどうやったら良いのでしょうか。以下の2点は特に重要なポイントなので押さえておきましょう。
・フィジカルイグザミネーションを実施する
看護師が救急外来患者を受け入れるときには問診しかしていないことがよくあります。問診表を使って患者や家族に質問をして必要な項目を聞き出し、医師に伝えて対応を仰ぐというやり方をしているのが一般的です。ただ、問診だけではフィジカルアセスメントはできません。特に救急車以外で来院した救急患者の場合には看護師が患者との最初の接点になるので、できるだけ多くの情報を得ることが大切です。
救急外来では看護師は率先してフィジカルイグザミネーションをするのが重要です。問診だけでなく、視診・触診・打診・聴診をして、積極的に患者の状態を把握する努力をしましょう。
例えば、患者の肌が発赤していて、肩で息をしていて荒れているといった視診の情報はアセスメントの役に立ちます。バイタルチェックをして発熱していたら、急性の炎症になっている可能性が高いと考えられるでしょう。
お腹が痛いという患者に触診をするとどこが患部かがわかることもよくあります。腹痛が大腸だったときに打診をすると、ガスの状況がわかるのでガスが溜まっているのが原因かどうかを判断可能です。あくまで診断ではなく判断ではあるものの、客観的な情報を医師に伝えられるのですぐに救急患者に対応できます。
また、看護師は外来で聴診器を使わない場合が多いですが、フィジカルイグザミネーションでは聴診も重要です。呼吸音に異常が確認された場合には肺の疾患のリスクがあります。時勢によってはインフルエンザなどの感染症のリスクがあるため、発熱や関節痛なども訴えているようであれば他の患者から離して別の待合室で待たせるといった対応が可能です。また、心音に雑音があるなら早急に治療しなければならない場合もあります。
フィジカルイグザミネーションによって得られた情報は必ず医療の役に立ちます。時間が許す限りフィジカルイグザミネーションをして積極的に収集に努めるのが、適格なフィジカルアセスメントにつながるでしょう。
・フィジカルアセスメントの要素を押さえておく
救急外来看護でフィジカルアセスメントをするときには要素を押さえておくのが重要です。一刻を争う状態の患者が来院することが多いため、できる限り短時間でフィジカルイグザミネーションを終えて、フィジカルアセスメントの結果を出すことが必要だからです。フィジカルアセスメントでは以下の4つの要素が重要になります。
・発症・進行度
・主症状・随伴症状
・程度・部位
・増悪・改善因子
いつ病気が発症したのかは患者に意識があれば本人から聞き取れますが、家族が送ってきてくれた場合には家族に聞けばわかるでしょう。進行度も問診を通して情報を得られます。症状については患者の訴えだけでなく、フィジカルアセスメントによって見極めることが大切です。症状の程度や部位については視診や触診を通して調べることができます。患者の訴えている部位とは異なる部位に異常が認められることもあるので、視診や触診は患者の訴えている部位にこだわらずに広くチェックするのが重要です。
また、増悪因子や改善因子はフィジカルアセスメントをするときに念頭に置いておいた方が良い要素です。立っていると痛いけれど座っていれば痛くない、お腹を押すと激痛で我慢できないけれど、触らなければ軽い鈍痛がするくらいという情報を得られると診察の助けになります。一時的に痛くなるけれど10分くらいすると痛くなくなって落ち着く、水分を取ると吐き気がするといった形で、さまざまな因子が症状の程度に影響を及ぼすことがあります。「立っているときと座っているときではどちらが痛いですか?」、「水を飲んだら吐き気がしますか?」、「ここを押すと痛いですか?」といった問いかけをして、できるだけ症状に関わる因子を詳しく聞き出して理解するのが大切です。
要素がわかれば救急外来に大切なフィジカルイグザミネーションをスムーズにおこなえます。その結果を踏まえてフィジカルアセスメントをすれば、速やかに判断を下して救急患者に適切な対応を取ることができます。
まとめ
救急外来看護のアセスメントではフィジカルアセスメントが重要で、フィジカルイグザミネーションをする必要があることがわかったでしょうか。救急外来の看護師は問診をすれば良いと思ってしまいがちですが、的確な対応をするには問診だけでは情報が足りません。視診や触診、打診や聴診を通してできるだけ多くの情報を集めてアセスメントをする習慣を作るのが大切です。
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