フォーカスチャーティングについて聞いたことがありますか?看護アセスメントをする際に重要な概念の一つです。ここではフォーカスチャーティングの内容と看護アセスメントとの関係を詳しく解説します。スキルアップにつながるのでぜひ詳しくなっておきましょう。
看護師にとってアセスメントによってわかりやすく記録を残しつつ、これからどのような看護をすべきなのかを考えるのは大切なことです。ただ、看護アセスメントと一言で言っても、やり方は実はたくさんあります。何に着目してどのような書き方をするかは本来は自由です。ただ、誰もがわかりやすい書き方のフレームワークがいくつか作られているので、現場の慣習や看護の状況によって選ぶというのが一般的になっています。フォーカスチャーティングも看護アセスメントに利用できるフレームワークの一つです。
#フォーカスチャーティングとは?
フォーカスチャーティングとは看護アセスメントで患者に起きている出来事に焦点を当てて経過を記録していく方法です。看護アセスメントのフレームワークとしてよく用いられているSOAPも経過記録をする方法の一つなので知っている人も多いでしょう。SOAPの場合には問題に焦点が当てられているのに対して、フォーカスチャーティングは個別の出来事に注目するのが特徴です。
・フォーカスチャーティングの記録方法としての特徴
出来事に焦点を当てて看護記録を書くフォーカスチャーティングの方法は問題に注目するSOAPよりも異なる職種間でのコミュニケーションを取るのに使いやすいのが特徴です。フォーカスチャーティングでの出来事とは例えば以下のような内容を指します。
・17時05分に検温をしたら38.5℃の発熱をしていた。
・夕食を嘔吐してしまって食べられなかった。
・尿検査で蛋白尿が陽性だった。
・ヘビースモーカーで現在も1日20本~40本のタバコを吸っている。
・「トイレが頻繁で眠れない」と訴えていて毎日3~4回の夜間に排尿に行っている。
・全身が発赤しているが平熱と同様の36.1℃しかない。
・本人は服薬していると言っていたが、飲み残しの薬が10日分見つかった。
・「人工透析で通うのは経済的にも時間的にも厳しい」と訴えている。
つまり、フォーカスチャーティングでは検査結果や患者の行動に着目します。このような個別の出来事については、異なる専門の医療従事者でも理解するのが簡単です。そして、理解しやすいスタート地点から看護記録をしていくことで、医師や薬剤師などの他の医療スタッフもそれぞれの視点からアセスメントができます。看護師が同じ出来事を見たときにどのように考えるのかを理解するのにも役立つ資料になります。
・フォーカスチャーティングと看護アセスメントの関係
フォーカスチャーティングによる記録はれっきとした看護アセスメントの一つになります。ただ、注意が必要なのは基本的には看護記録を書くためのフレームワークであって、アセスメントのステップが含まれていないことです。そのため、フォーカスチャーティングを看護アセスメントに活用するときには、看護記録を作成した上でアセスメントをおこなう必要があります。フォーカスチャーティングで記録をすると経過も結果も明確になるので、看護アセスメントをおこないやすいのがメリットです。出来事についてわかりやすくまとめた記録になるため、アセスメントの準備としてフォーカスチャーティングをするのも良い方法でしょう。
#フォーカスチャーティングの4つの要素
フォーカスチャーティングによって看護アセスメントをするときには、FDARの4つの要素に着目します。ここでは4つの要素がどのような意味を持つのか、アセスメントをするときに実際に何をするのかを簡単に解説します。
・F:フォーカス(焦点・Focus)
フォーカスチャーティングではF=フォーカスが最も重要です。フォーカスチャーティングで焦点を当てる出来事がFに相当します。上述のように検査の数値が変わったり、患者の行動に不審なことや通常とは異なることがあったりしたときにフォーカスするのが基本です。いつもと同じことは特に焦点を置く必要は基本的にはありません。
Fの要素は客観的に出来事を記述するのが重要なポイントです。いつ何が起こったのかを主観を入れずに記述しましょう。看護師だけでなく他の医療従事者が見てもわかるように端的に書くのが大切です。
・D:データ(情報・Data)
D=データでは焦点を置いている出来事に対して、なぜ目を向けたのかがわかる客観的な観測内容を記述します。例えば、Fで「患者が頭痛を訴えている」という出来事を取り上げたときに、Dとして「体温37.8℃、血圧148mmHg/100mmHg、脈拍数60」といった記録をするのが基本です。「顔面が紅潮し、目の充血がある」といった客観的な観察記録も含みます。
・A:アクション(行動・Action)
A=アクションは出来事に対してデータに基づいて実施した看護や医療の内容です。上記の症状の場合には発熱に伴う頭痛の可能性が高いと考えられるため、主治医に指示を仰ぎます。そして、内服の解熱鎮痛剤を投与することになったら「主治医の指示により14:40に解熱鎮痛剤○○を×錠内服投与させた」というのがAの記述の仕方です。この際に頭痛が1時間経っても収まらない場合にはナースコールをするように伝えた場合には、伝えた内容をそのままAとして記録します。実際におこなった看護・医療の内容を客観的にまとめて記述するのがAの基本です。
・R:レスポンス(反応・Response)
R=レスポンスは看護師や他の医療従事者が出来事に対して行動した後の反応を記録する項目です。この例では患者の反応を客観的に記述します。14:40に投与して1時間でナースコールがなかったとしたら、「15:50時点でナースコールなし、16:00に病棟で患者の頭痛が収まったのを確認した」といった記述内容になります。
あるいは「15:45にナースコールあり、頭痛が激しくなっていると患者からの訴えを受けて主治医に連絡、血圧158mmHg/115mmHg血圧上昇が見られた」といった書き方になる場合もあります。このような際には新しい出来事として血圧上昇をFとして取り上げてフォーカスチャーティングを進めていくのが一般的です。レスポンスに対して看護や医療が必要な場合には一度FDARを終了して、新しいフォーカスチャーティングをします。
#看護アセスメントでフォーカスチャーティングをするメリット・デメリット
看護アセスメントでフォーカスチャーティングをするのは良い方法なのかどうかが気になる人もいるでしょう。フォーカスチャーティングは看護ケアの実施内容と結果の対応関係が明確になるのがメリットです。看護師が何に注目していたかが後になって誰でも理解できる書き方になります。
病院や大きなクリニックでは医療従事者間での情報共有のためにカンファレンスやセミナーを実施することもよくあります。フォーカスチャーティングの記録内容はこのような情報共有の際にわかりやすい資料として活用できるのもメリットです。
しかし、看護アセスメントでフォーカスチャーティングをするデメリットとして、記録しなければならない内容が多くてデータ量が多すぎる状況になる点が挙げられます。あまりにも量が多いと見返されないリスクがあるので、せっかく看護アセスメントを記録したのに他の医療従事者にとって有用な資料にならない可能性があります。
また、フォーカスチャーティングを完結しただけではアセスメントにはならないのも注意点です。アセスメントの起点にする情報整理に有効なのがフォーカスチャーティングだからです。あくまでフォーカスチャーティングは出来事ベースで何が起こったのかを整理するためのフレームワークなので、看護記録を付けたらアセスメントをして次のステップにつなげていきましょう。
まとめ
フォーカスチャーティングとは何かがわかったでしょうか。看護アセスメントをするときに出来事ごとに情報を整理する方法として優れています。FDARのF(焦点)を重視して記述することで、他の医療従事者との情報共有もしやすい記録を残せるのがメリットです。データ量が多くなりがちなフォーカスチャーティングのデメリットも考慮して、端的にまとめる工夫をしながら活用していきましょう。
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