トリアージはオーバートリアージを

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#1957 2022/09/30UP
トリアージはオーバートリアージを
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今回は外来に搬送されて来た患者が急変したケースを実例を踏まえて記載したいと思います。ここでは臨床の症状悪化までの時間が短いことと提供されている情報に頼りすぎることで不足の事態が起こってしまった場合を記載しています。予防するためには常に学習することが大切です。

今回は実際の症例で役に立ったアセスメント方法について記載していきたいと思います。場所は病院内の救急外来で気道熱傷で来られた患者さんの実例を踏まえて話をしたいと思います。
その前に私は以前高度救命救急センターで勤務を行なっていました。
救急には1次救急:軽傷かつ緊急性が低く入院治療の必要ない帰宅できる患者。
つまり歩いて診療に来れるレベルの患者を示します。2次救急:手術や入院が必要な重症患者で24時間の受け入れなどを行います。
3次救急:2次救急では対応できない高度な疾患や重篤患者、特殊疾病患者などを受け入れる医療機関で最もハイレベルな医療機関があります。

3次救急は医療の花形であり多くの看護師が憧れを抱いて希望する部署の一つでもあります。多くの人が希望して配属になる一方、業務の多忙性から去っていく人や自己の限界を感じて挫折していく人も多くいます。つまりハイレベルな医療を展開するということはそれなりの知識が重要になってくるということです。
高度救命救急センターは上記で示すところの3次救急にあたる部署になります。ここではさまざまな患者さんが搬送され、初見のトリアージミスが命を左右する重篤な状況につながることもあるので基本的な知識だけでなく応用した幅広い知識が必要になってきます。

では実際の症例を振り返っていきましょう。
対象は30代女性。時期は12月です。
冬場の寒い中、自宅の洗面所髪の毛をセットしていました。スプレータイプのヘア剤を使用しており、丁度空になったので、新しいスプレー缶を出して使用し、セットを終えたところで使い終わったスプレー缶をゴミに出すために自宅のストーブ前でガス抜きを行ったところ残っていたガスに引火し爆発。顔面は少し赤みがある程度で髪の毛は前髪部分が縮れている状況でした。
一人暮らしだったその女性は顔の痛みと爆発した驚きもあり、119番通報を行い救急車で当院へ搬送されてきました。勿論事前に救急隊より情報提供があり、意識レベル:クリア 体温、血圧も正常。SpO2も正常範囲内でした。スプレー缶に引火して軽度熱傷であったため医師・看護師もそれほど緊急性はないと判断し救急車を向い入れました。
搬送時患者は歩くことも出来ており、ウォークインで診察室に入ってきて診療を行いました。救急隊の情報通りで顔面には1度の熱傷、その他は目立った外傷はなく、興奮からか少し頻呼吸になっていました。落ち着くように説明し熱傷に対する治療薬を処方。初療室のベッドに座位になって軟膏の準備を行なっていると呼吸回数と共にヒューヒューと言う呼吸音が聞こえてきました。
患者さんを見ると座位になり両手を首のあたりに当てて顔色が悪い状態になっていました。臥床させるも意識レベルの低下が見られ、チアノーゼ、呼吸状態の悪化が短時間で進みました。
熱傷による気道浮腫が起こり気道閉塞をきたしている状況でした。直ぐに挿管し気道管理を行うことで一命を取り止め集中治療室で経過をみて無事にADLの低下もなく退院することが出来ました。

この事例をみて分かる通り、提供された情報に惑わされていた部分や、患者の状況を軽視していた部分が重篤化につながったことがわかると思います。
トリアージについてはさまざまな文献やトレーニング方法、学習方法もありますが、統一した高度なスキルを身につけるには救急の根幹となる部分を把握する必要があります。救急蘇生法のガイドラインはどこが出しているのかご存知でしょうか?実は日本におけるガイドラインつまりアルゴリズムはアメリカが出しているものをそれぞれの医療機関が特性を付属させマニュアルを作っています。その元となるのはAHA(アメリカ心臓協会)です。AHAのアルゴリズムを学習できる機関は日本でもさまざまありますがAHA日本ACLS協会が大きな組織で安定した学習効果を上げることができると思います。救急外来で必要なスキルはBLS(一次救命処置)ACLS(二次救命処置)PEARS(小児乳児一次救命処置)を学習することをお勧めします。

救急外来において一次評価つまり、患者さんの状況をパッと見た瞬間のトリアージは重要です。その一次評価はどのような部分を観察するかというと、皮膚色や呼吸、冷や汗やチアノーゼなどです。
その状況を見て介入した方が良さそうだなっと思ったら声をかけて意識・呼吸・脈拍の確認をします。倒れている人を見ても同じことを実施します。意識・呼吸・脈拍を確認するのは心停止調律を見ていることになります。意識がなければ直ぐに応援を要請します。この時に脈拍や呼吸の確認を先に行いません。生命に重篤な危機が訪れているかもしれないのでいち早く人や物を要請することを意識しましょう。
院内であれば救急コール・モニター付き除細動器・救急カート。院外であれば119番通報、人を集める、AEDを持ってくることを依頼しましょう。応援が要請できれば次のステップに移ります。脈と呼吸を同時に確認します。確認には時間をかけすぎず5秒以上10秒未満で確認が終えるようにしましょう。
これにも理由があり、心臓が停止している状態、つまり循環が破綻している状態ではいち早くCPR(胸骨圧迫)が必要になってきます。胸骨圧迫までの時間を短くしたいので確認は上記の秒数で行うようにします。これはマネキンを使用すると誰でもできるのですが臨床の患者さんで行うと確認に時間がかかりすぎる傾向があるので意識して行うことが重要です。脈拍は頸動脈で行います。自己脈なのか傷病者の脈なのか判断に迷ったら脈なしとして判断します。同時に呼吸状態もアセスメントします。しっかり両方の胸が上がっているかどうかを観察し、吐息があるかどうかも見ておきましょう。正常な呼吸ではなく、観察時に通常と違うような呼吸だと判断したら呼吸なしとして行動を起こします。これを死戦期呼吸と言います。意識・呼吸・脈拍がないことを確認したら直ちに胸骨圧迫を行います。
これが救急蘇生の手順になります。
上記の学習を繰り返し行うことでもしもの時の救急医療をスムーズに展開することができます。実際に使うことが少ないと感じる医療者も多いのですが、緊急事態が起こった時は1分1秒を争う世界になります。そのような時に何もできなかった、もっと効率良く動けたでは患者さんは亡くなってしまいます。日頃のトレーニングがとても大切です。
ACLSにおいては患者の初期診療のやり方を学習することが出来ます。
ICLSとACLSがありますが私は断然ACLSをお勧めします。
違いは、VF・p VT・PEA・Asyの治療のみがICLS。それに加えて徐脈・頻脈の治療を行うのがACLSです。なぜACLSの方を進めるのかというと、患者のアセスメント能力を向上させる教育がしっかり行われているからです。
外来で来た患者さんは必ずしも心停止の状態ではありません。何かしら症状を訴えて来院される方がほとんどです。患者さんの状態を観察・アセスメントし必要な治療を正しく展開するやり方がACLSにはあります。BLSの一次アセスメントに加えて、バイタルを測定。低酸素であれば酸素を投与するのですが投与量についても、経鼻、マスク、バックマスク、リザーバーマスクと種類がありどのような時に使用するのかもレクチャーしてくれます。
低血圧であれば、輸液ラインをとりなんの輸液を入れるのか、ルートをとると同時に血糖や採血をとることも繰り返し練習します。それと同時に患者さんの症状を詳しく聞いていきます。胸痛や呼吸苦、意識レベルの観察。聴診を行い、必要に応じて12誘導心電図をオーダー、胸部レントゲンにて肺や心臓の状況も観察します。動悸を主訴で来られた患者さんが安定している状態なのか不安定な状態なのかを判別し徐脈・頻脈に対する治療を展開していきます。この治療に行き着くまでのアセスメントは学習することで臨床にも使用できますし、自己の診療の振り返りにもなります。二次評価スケールとしてSAMPLEというものがあります。S:自他覚症状A:アセスメントM:薬歴P:病歴L:食事E:ここ最近の出来事を治療を選択しながら情報を収集、アセスメント、評価します。一見難しそうですが、繰り返しトレーニングすることで身につけることが可能になります。

PEARSにおいては気道管理や疾患についての判別を学習することができます。
小児や乳児は自己の症状をうまく表出することができません。よって他覚的な観察がとても重要になります。意識レベル、皮膚色・CRT、呼吸状態、呼吸音、バイタルなどの情報を駆使して、上気道、下気道、肺組織疾患、血液分布性ショックなどに振り分けていきます。呼吸のアセスメントは成人でも応用ができますし、疾患を頭の中で分類する良いトレーニングや振り返りにもなります。
医療は経験と言われていますが、命を救え、患者さんのADLに問題なく退院した場合は良い経験になるのでしょうが、命を救えなかったり、障害が残った状態に至った場合は経験ではすみません。無知であることゆえに救える可能性があった命を救えなかったことになるので学習で補える部分は意識して知識を習得することが大切です。ほとんどの医療者が心停止に遭遇したことがない割合が多いのです。それを経験するまで待っていては本末転倒です。自己研鑽は常に行い一つの命に向き合い、多くの命を救うことを忘れないようにしましょう。

まとめ

今回の件で、急変時の即座の対応がどのくらい難しいかが理解できたと思います。臨床においてその場で判断を迫られることは多々あります。自己の知識に満足するのではなく継続した学習を行うことで正しい医療が正しく提供できることを忘れないようにすることが大切です。学習ツールはたくさんありますが私がお勧めする内容を勉強するのは臨床において役に立つと思うのでぜひ行なってみてください。

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