看護学生さんも、病院やクリニックで働いておられる看護師さんも、訪問看護に興味がある方も多いと思います。
しかし、一人で何でも判断して実施しないといけないの?色んな科で経験してからじゃないと働けないの?等、分からないことも多く、一歩を踏み出せないということもよく耳にします。
全然そんなことはありません。やる気があれば大丈夫です!
それでは、訪問看護と病院の違いや、訪問看護に向いてる人についてお話しします。
訪問看護とは
在宅療養されている全ての方の生活を看護師として支える仕事です。年齢や疾患は問わず、赤ちゃんから高齢者、精神疾患のある方も全てです。
訪問するときにはほぼ一人で訪問しますが、医師やケアマネジャー、理学・作業療法士、ヘルパー、福祉用具専門相談員、デイサービス職員等の多職種と連携します。
訪問看護は何をする人
バイタルチェックや状態観察はもちろん、身体のケアも行います。
入浴介助、足浴、清拭、口腔ケア、爪切り、吸引、点滴、CVポートの管理、在宅輸液ポンプの管理、内服薬の管理、軟膏塗布、かん腸、摘便、リハビリ、創傷ケア、褥創処置、ストーマ管理、バルンカテーテルの管理、介護者の相談、家族指導、環境整備、食事指導、血糖測定、インスリン注射、在宅酸素の管理、人工呼吸器の管理、看取り…等。
数え切れないほどのケアがあります。
医療依存度は利用者様ひとりひとりによって違いますし、高い医療技術が求められる場面があったり、介護に近い場面もあり、様々な役割が求められます。
訪問看護師の働き方
・正職員
訪問する時間帯は平日の朝9時頃?17時頃が大半を占めます。
しかし訪問看護ステーションによっては夜間の定期訪問や、土日祝日の定期訪問をしているステーションもあります。
そして、24時間365日対応をしているステーションが多く、勤務時間以外は待機当番制になります。私が働いているステーションは、正職員の看護師5人で待機当番を交代制にしていました。平均して月7回くらいの待機当番があります。
当番の日はステーションに待機するのではなく、いつも通り自宅に帰るのですが、いつ電話が鳴るか分からないので、入浴中は脱衣所に電話を置き、就寝中は枕元に置いていつでも電話に出れる体制方法をとっています。
電話の内容としては、内服薬についての質問や、ストーマ装具の剥がれや、輸液ポンプのアラーム対応方法、発熱時の対応等です。
相談内容によっては緊急訪問も必要となります。
もちろん待機手当てや緊急訪問手当ても給料としてもらえます。
・パート
時短で働く方、週3日だけ働く方等、人によって働き方は様々です。
パートの方は待機当番はしません。
担当する利用者様の層は、正職員が担当する利用者様よりも医療依存度が低い方が多いです。
訪問看護に向いている人
・病院ではナースコールや検査等でゆっくりと患者さんの話を聞く時間がないことにジレンマを感じている方。→訪問看護は30分?90分程度の訪問時間中、その利用者様とご家族にゆっくりと関わることができます。
・医療行為よりも生活上の世話が好きな方→在宅では病院のように医療機器が揃っていないので、行える医療行為にも限度があります。
最新の機器を使った医療行為が好きな方よりも、家にあるもので代用して創意工夫できる方や、在宅でできることは限られているのである意味割り切れる方のほうが向いています。
・家族看護をしたい方→訪問看護師は利用者様一人だけを看ていれば良いのではありません。利用者様を支える介護者やご家族を含めて看る必要があります。
場合によれば、訪問時にご家族の体調相談にのることもありますし、ご家族のケアや観察をすることもあります。
在宅療養をするということは、一家全体に関わることなので、ご家族の関係性や健康状態の把握はとても重要なのです。
・柔軟な考え方ができる方→病院では清潔不潔がきちんと区別されていたり、医療物品も揃っています。
しかし在宅の環境では清潔を保つことが難しかったり、医療物品が揃っていない、もしくは経済的な理由で揃えられないということもあります。
その場合、病院と同じやり方を在宅でも継続するのは難しいので、その家庭でできる最善のやり方に折り合いをつけられる柔軟な考え方ができる人が向いています。
・創意工夫できる方→医療物品は高価な物が多く、全て揃えようと思うと経済的に破綻しかねません。在宅にある物で代用したり、手づくりをする創意工夫が求められます。
・動物好きな方→家庭でペットを飼っている利用者様も多く、在宅で療養される利用者様やご家族の心の癒やしや支えになっていることも多くみられます。
ケアをしながらペットのお話しをされたり、ペットがお家の中にいるだけでリラックスできる空間になるのです。動物好きな方にとっては、訪問の度にそのペットが喜んでくれたりすると、利用者様との距離が一気に近づいたり、信頼関係が築けるきっかけになったりと、ペットが訪問看護師の助けとなってくれることも多いです。
訪問看護師に向いていない人
・最新の医療機器や医薬品を使いたい人→病院に比べ訪問看護ステーションは、最新の医療についての情報が入りにくかったり遅い傾向にあります。
・医療行為をたくさんこなしたい方→比較的軽症な利用者様の訪問はバイタルチェックと状態観察だけという、医療行為が必要でない利用者様の訪問もあります。
人工呼吸器を装着した方や、24時間持続点滴をしている方には医療行為は必須ですが、その利用者様を毎日訪問するとは限らないため、医療行為をたくさんこなしたい方にとっては、少し物足りないと思われるかもしれません。
・長期間の人間関係が苦手な方→病院は入院期間だけのお付き合いですが、訪問看護は年単位で訪問させていただいてる場合も多く、長い人間関係が続きます。
長年の間に利用者様との関係性が崩れかけてしまうことがあったり、「他の訪問看護師の方がいい」と言われてしまうこともあり、その利用者様と関わることに自信を失くすこともあります。
人間と人間のお付き合いなので相性もありますが、長く人間関係を続けるには、立て直す力も必要となります。
訪問看護の特徴
病棟に入院されている患者さんと比べ、訪問看護は利用者様の個性が強く出るものだと感じています。
病院には決まりやルールがあるため患者さんはある程度わがままを抑えて入院生活を送っておられると思います。
しかし訪問看護では、長年住み慣れたその家の暗黙のルールや歴史を尊重した関わりをしないと、信頼関係を築くことができず訪問を拒否されることも少なくありません。
医療の正しいやり方や効率の良い方法を利用者様やご家族に指導しても、その家のこだわりややり方があればある程度は合わせた方が良い場面も多いです。大きく間違っていることであれば指摘はしますが、信頼関係が築けてからでなければその指摘も利用者様やご家族には受け入れてもらえないかもしれません。
その家、その家にカラーがあるように、まずは全部を受け入れて否定はできるだけせず理解しようとする姿勢が大切だと思います。
何でも一人で判断する?
病院ではすぐ近くに医師や看護師がいるので、すぐにフォローを依頼できたり一緒に見て考えて判断することができると思いますが、訪問看護は一人で訪問することが多く、その場での判断を求められることも多くあります。
何度も訪問している利用者様なら普段との違いが比較でき判断しやすいと思いますが、他の職員が担当している利用者様に初めて訪問する時などは、普段との違いが分からず判断に困ってしまうことも多いです。
その場合、緊急性がなければスマホで写真を撮ったりして、事務所に帰ってから他の職員に相談します。
緊急性があれば、訪問先から他の職員や所長に電話して指示を仰ぐこともあります。夜間でも同様です。これはお互い様なので嫌な気持ちになる職員はおらず、親切に相談にのってくれるので心強い仲間です。
色んな科を経験してからでないと訪問看護師になれないの?
そんなことはありません。
規模が大きな訪問看護ステーションでは、新卒でも入職できる体制を整えている所もあり、実際に新卒で働いている看護師もいます。
しかし医療技術を実践するには病院の方が数をこなせるので、病院に“研修”という形で医療技術を学びに行く形をとっているステーションが多いです。
もちろん、色んな科の経験があったり、たくさんの医療技術が身についている方が即戦力になります。しかし、未経験の科があっても積極的に学ぼうとする姿勢があれば大丈夫だと思います。私も内科経験ばかりで、外科経験は少ししかない状態で訪問看護に飛び込みました。
訪問看護は初回訪問の数日前に訪問依頼があることが多く、事前に勉強する時間があります。なので、初回訪問までに自分なりに勉強したり、先輩看護師に聞いたりする時間を持つことができます。
まとめ
訪問看護師のイメージが少しでも分かってもらえたでしょうか?私でもできそうだな、やってみたいなと思ってもらえたら大変嬉しいです。
在院日数が短くなっている昨今、在宅医療の需要は高まっていますが、訪問看護師不足が現状です。
在宅療養をしている方達の支えになりたい、訪問看護に興味を持ったと思えた方は是非一歩を踏み出してほしいと思います。
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