オペ室看護師・病棟看護師は業務内容は違えども患者さんの生死や治療に向き合う大事な仕事であることには違いありません。大事なのは「興味をもつこと」「やりがいを見出すこと」「自分の仕事に誇りを持つこと」「オペ室看護師になりたいという思い」だと思います。それぞれに学びの多い場所ですので、自分の得意なこと苦手なことを少しずつ見出してみてください。
これからオペ室看護師を目指す方々が、より自分の輝ける場所を見つけられますように。
【オペ室になるために必要なスキル】
オペ室看護師と病棟看護師の大きな違いは、「立ち作業中心」「臭いや光などの環境に体調が左右されやすい」「医師に対するコミュニケーションスキル」だと思います。
病棟看護師をしていても「今日は休憩時間しか座れていない」ってことも多々あります。しかしオペ室看護師(特に機械出し中)は直立不動なことが多いのです。この直立不動な状態が思った以上に腰に負担をかけます。実際病棟では一時的に腰痛を感じる程度であった私も、オペ室配属後数か月でコルセットが手放せない体になりました。もちろん手術時間の短い手術や、椅子に座って機械出しをできることもありますし、外回り看護師は比較的座った状態で作業がしやすいです。しかし担当する手術は選ぶことができず、病院によっては慢性的な体調不良は考慮が難しい可能性があります。腰痛持ちの方はコルセットなどの補助具を使いながら勤務する可能性を考えておいてもらえると良いと思います。
オペ室では電気メスを使用するのはもちろんのこと、整形外科や脳外科、心臓血管外科などでは緊急時に血が飛び散るという状況も往々にしてあります。電気メスで生じる組織の焦げる独特の臭いは、人によっては吐き気を催します。それ以外にも各種臓器を目の当たりにする部署になるため、血・臓器に弱い方や臭いに敏感な方は体調不良を催す可能性があります。看護学校によっては実習中に担当患者さんのオペ室に入室することもありますし、院内研修としてオペ室見学を行っている病院もあるため、それらを参考にしてみるのも一つの手かもしれません。
病棟看護師をしていても医師への報告・連絡・相談がもちろんあります。しかし新人の頃であれば先輩がほうれんそうを行ってくれる可能性もありますが、機械出し看護師は医師とコミュニケーションを取りながら手術を進めなければなりません。もちろん外回り看護師が先輩であれば医師への確認もサポートしてくれる可能性がありますが、外回り看護師からは術野の状況が思いのほか把握しずらく、執刀中の医師の会話も聞き取りにくいです。怖い先生へも臆せず「この状況で必要なものは何か」などを確認するコミュニケーション能力が必要となります。
【オペ室看護師として働くデメリット】
オペ室看護師のメインは日勤で、夕方までにある程度の手術が終わるようにスケジューリングされていることも多く、準夜勤帯へ引き継ぐ前提の手術は比較的少ない可能性が高いです。そのため病棟看護師よりも残業が少なく給料が少ない傾向があります。もちろん危険手当や待機手当などがある病院もあります。勤務も大半のは月~金曜勤務となる可能性が高いため、病棟のシフト制から配置転換となった方は5日勤に慣れるまでは少し辛いかもしれません。
オペ室と病棟で共通している看護技術は導尿・膀胱留置カテーテル留置など、病棟に比べて習得できる看護技術は少ないです。全身麻酔であれば採血はAラインから採取することも多いですし、私のいた病院では基本的に静脈ラインの留置なども麻酔科医が行っていました。また、覚醒している患者さんと接する機会が少ない一方で、脊椎麻酔・局所麻酔など覚醒下での手術は患者さんとのコミュニケーションスキルも求められます。その点では病棟経験のある方が手術室に配属になった場合は覚醒下での手術時などに重宝されると思います。
オペ室という閉鎖的な環境のためか、他病棟のスタッフとは仲良くなりにくいです。病棟看護師から見ると「オペ室看護師は怖い」という印象もありますし、朝から定時までオペ室にいるため接するコメディカルも少なくなります。ただし、人工心肺などを扱う臨床工学技士、脳波検査などを行う検査技師など特定のコメディカルとは仲良くなりやすい環境にあります。
【手術室看護師として働くメリット】
前述の通りオペ室看護師の業務は日勤帯が中心ですので、病院によっては病棟勤務よりもプライベートの時間が持ちやすい可能性が高いです。私がいた病院では定時に上がらなければならないような状況(子供のお迎え、医療機関受診など)があれば、勤務開始時にリーダー看護師に伝えていました。もちろん時短勤務の方、お子さんのいる方優先にはなりますが、伝えておけば定時を大幅に過ぎる残業は少なかったです。逆を言えば、ある程度の手術をこなせるだけの経験があれば積極的に残業を申し出る(お金を稼ぎたい)ことも可能だと思います。
夜勤や休日勤務ができるようになるまでは月~金曜の勤務となるため、平日でないと行えないような行政手続きや医療機関受診などは有給休暇を申請します。また手術申し込みが少ない日は、緊急手術が対応できる数のスタッフを残して時間休暇や半日休暇を得ることもありました。現在は別の病院で病棟看護師をしていますが、オペ室看護師をしていた時の方が有休消化率も良かったように思います。またカレンダー通りの休日対応となるため、正月やゴールデンウィークなどの長期休暇は比較的取得しやすい傾向にあります。
一般にオペ室看護師は「一人前」とされるまで育つまでの期間が長いため、オペ室での経験は就職でも重宝されると思います。実際求人でも「手術室看護師」と記載されている例も多いです。
オペ室勤務を経て病棟に戻った際は、患者さんに手術の内容を説明する際に役に立ったり、術前・術後看護の理由が納得しやすいです。特殊体位や特殊器具を用いた手術(ロボット支援下手術)では、同じ腹部手術でも術後合併症も違ってきますが、座学では中々理解が追いつかないことも多いです。
オペ室では循環動態・呼吸状態・体温などに関する人体の変化を多く学ぶため、疾患に対する局所的・個別的な理解とともに全身に渡る解剖生理に詳しくなります。手術中の患者さんは多数の薬剤、環境のもとで多くの変化を伴います。その変化にいち早く気づくのは麻酔科医だけの仕事ではなく、看護師も患者さんを観察し変化に気づくことでこの先起こりうることを予測しなければいけません。
オペ室はいつも殺伐としており、空気がピリピリしていると思われがちですが、意外と和気あいあいと手術をしていることも多いです。特に組織の剥離操作中などは割とゆっくりと時間が過ぎることも多く、雑談も交えて医師と仲良くなることも多いです。実際にオペ室看護師と外科医のカップルはよく居ましたし、褒められたことではありませんが不倫している方もいました。
【オペ室看護師になる上で必要な勉強】
病院の教育体制によっては一から丁寧に説明してくれる病院、ある程度事前課題を課して予習ありきで実践に入る病院など様々です。手術器具も正式名称ではなく通称名で使用している病院も多いため、場合によっては自己学習が仇になる可能性もあります。まずは配属前、配属後に先輩や上司に勉強方法を確認してみてください。ひとまずは「積極的に学ぼうとする姿勢」が大事になってきます。
先々必要になるものは「手術室で使用する薬剤」「手術器具の名称と使用用途」「わかりやすく描かれた病態生理」に関する資料です。これも病院によって特化した手術や診療科があるため、入職後に情報収集するのが良いと思います。
指導開始後は手元に残る資料は膨大になります。手術手順書、必要物品の資料、自己学習資料など紙で残る情報が多く整理整頓が重要です。同じ診療科の手術を担当することが多ければラッキーですが、しばらく担当してない手術に急に担当することもあるので、その際は自分のまとめた資料が頼りとなります。私は診療科毎にバインダーをわけ、その中で術式毎で付箋を貼る方法で資料を管理していました。
まとめ
オペ室看護師・病棟看護師は業務内容は違えども患者さんの生死や治療に向き合う大事な仕事であることには違いありません。大事なのは「興味をもつこと」「やりがいを見出すこと」「自分の仕事に誇りを持つこと」「オペ室看護師になりたいという思い」だと思います。それぞれに学びの多い場所ですので、自分の得意なこと苦手なことを少しずつ見出してみてください。
これからオペ室看護師を目指す方々が、より自分の輝ける場所を見つけられますように。
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