今回はデイサービスでご利用者様及びそのご家族から信頼される看護師として働くための看護アセスメントのコツをお話しします。
多くの場合、看護師はデイサービスで働いていても送迎に出ないことがほとんどです。
したがって、ご利用者様のご家族と直接お話しする機会はまずありません。
そのうえで、看護師として安心してご利用者様にもご家族にも頼っていただくためのコツを具体的にお伝えします。
それではデイサービスでご利用者様及びそのご家族から信頼される看護師として働くための看護アセスメントのコツの実際をお話しします。
1.丁寧なコミュニケーションを心がけましょう
デイサービスの看護師はご家族と直接お話しできる機会はほぼありません。
ですが、デイサービスでは必ず連絡帳というものが存在します。
この連絡帳を最大限に活用し、ご家族ともしっかりコミュケーションをとることが大切です。
具体的には入浴時の肌の状況をお伝えすることはもちろん、入浴時の観察以外でも日常的なかかわりの中で、むくみの有無や体重の大きな増減を細かくご家族にお伝えすることが大切なのです。
このようにお体の状況をしっかり観察することでご家族は「看護師さんにしっかり気にかけてもらえている」と安心していただくことができます。そして、ご家族にもご利用者様にも注意していただくことができるようになります。
多くの高齢者の方の場合は定期的に受診していることが多いので、連絡帳でしっかりとお体の異常をお伝えしておけば、ご家族がそれを主治医に伝えてくださって医療につなげることもできるのです。
頻繁にご利用者様にお会いできる看護師が早期に異常を発見し、連絡帳というかたちで介入することが早期の改善にもつながるのです。
そして、こちらから発信した異常については改善をもって観察を終了とするまでは症状の変化は必ずご報告しましょう。
改善が見られればご家族も安心してくださいますし、悪化している場合にはその旨をご家族が医療につなげてくださるので、適切な治療を探すうえで有効になるのです。
また、ご家族から連絡帳を介して健康相談や質問があった場合にはどんなに些細なことでも確実に返信するようにしましょう。
質問への返答や対応を記載し、その次のご利用の際には対応したうえでどのような変化がみられたのかをお伝えすることで、よりご家族に安心していただくことができます。
もちろん、これらのことはご家族だけではなく、ご利用者様ご本人にも直接お話しすることが必要です。ご利用者様ご自身にもお体の状況を知っていただくことで、看護師が介入しお体を診させていただいている意味を知っていただくことができるようになるのです。
ご利用者様ご自身に認知症があり、お話ししてもすぐに忘れてしまうことももちろんあります。
しかし、それでも私は必ずお話しして、「あなたのことを心配していますよ」とお伝えすることで、内容は忘れてしまっても、自分を気にかけてくれている人だということは認識していただけるようになります。
そうなれば、ご家族にはお話していなかった不調をデイサービスにいらしたときに看護師に教えてくださるようになります。
2.丁寧な介入を心がけましょう
デイサービスでは医療処置は行えません。
ですから中心になるのは身体状況の観察となります。
つまり、丁寧な介入とは丁寧な観察とアセスメントいうことになります。
例えば急にむくみが強くなってきた方の場合、体重の変化の有無も確認します。加えて、機能訓練時や入浴時など、身体的に負荷がかかった場合の呼吸状況の変化もしっかりと確認しましょう。
入浴や機能訓練前後の呼吸状態とは客観的な呼吸の状況に加えて酸素飽和度の変化にも注目する必要があります。
体重が急激に増えていたり、心負荷がかかる時に呼吸状況に変化が現れる(酸素飽和度が低下する、息切れがする など)の場合には心臓に負担がかかっている可能性が高いことが予測されます。
高齢者であり、心負荷がかかっている、ということは心不全を発症する恐れがある、と考えることもできます。
このように異常の早期発見やアセスメントをし、今後発症しうるリスクを早期に予測することは頻繁にご利用者様にお会いできるデイサービス看護師だからこそできることです。
そして、このような身体的な異常・今後発症しうる恐ろしい病気の予防のためにご家族に受診をおすすめすること、独居の方の場合はケアマネージャーに状況をつたえて医療に伝えることが必要になります。
このような注意喚起をご家族に納得して受け入れていただくためにも、1.で述べたご家族とのコミュニケーションが大切になる、と言えるのです。
「日頃から身体状況を気にかけてくれている看護師さんが受診をすすめているから病院に行った方がいい」とご家族も感じてくださるのです。
3.ここで具体例をご紹介しましょう
このように身体状況の変化をご家族と共有し、早期に受診していただいたことで心不全の初期としてご入院された方がいらっしゃいました。
初期のうちに対応できたことから、一時は入院で身体状況を整える必要がありましたが、退院後は内服と通院加療で通常の生活が可能となりました。
逆に数日体調を崩して休んでおり、久しぶりにデイサービスにいらしたとき、目に見える程にるい?が進んでいた方がいらっしゃいました。
ご自宅では息子様と二人暮らしだったため、食事を十分にとることができずるい?が進んでしまったのでした。
息子様も仕事をしており、毎食しっかり作ることは困難であることから、ケアマネージャーを通じて、宅食を導入できるように介入しました。
その結果、毎食確実にとれるようになりました。また、必要な栄養がしっかりととれるようになり、体重がしっかりと増えたことはもちろん、活動量も増やすことができ、体力及び筋力の向上につなげることができました。
入浴時の皮膚観察では、皮膚の状態から帯状疱疹を疑い医療につなげることもできました。
他にも発赤に対し、ご持参の軟膏を塗布していましたが、症状は悪化する一方でした。この事実を写真を併せてご報告したことで、主治医も再度発赤の原因精査をしてくださり、症状を改善させることもできました。
4.最も重要なことはスタッフ同士のコミュニケーションです
ここまで、具体例を挙げながらデイサービスでご利用者様及びそのご家族から信頼される看護師として働くためのコツをお話してきました。
もちろん、看護師自身も入浴時に処置に行った際に他の方にも異常がないか併せて観察することも必要です。
そして、時間的に余裕がある場合には機能訓練に看護師も介入することも必要です。
ところが、数多くいらっしゃるご利用者様全員の異常の早期発見は看護師のみではできません。
入浴時、皮膚にいつもと違う発赤や発心がみられた場合にはどんなにささやかでも看護師に報告してくれるように介護士さんにお願いし、介護士さんの協力も得ることが必要なのです。
そして、同時に機能訓練指導員さんにも協力をお願いしておくことで、いつもと同じ内容の機能訓練を実施してもいつもより息切れが強かった、または息切れがありいつも通りの機能訓練ができなかった、などの情報を知ることができるのです。
つまり、看護師がご利用者様の状況をしっかり把握できるようにするためには、ご利用者様にかかわるすべての職員全員の日頃からの観察が重要になるのです。
そしてなにより、せっかく介護士さん及び機能訓練指導員さんなどそれぞれの立場の方が気づいてくださった異常や違和感を遠慮せずいつでも看護師に報告して一緒に状況を観察できるような、日ごろからのコミュニケーションが大切になるのです。
共に働く他職種の人たちと、ご利用者様の既往などを十分把握している看護師が起こりうる異常や症状を共有し、それらがみられたときにはすぐに教えてもらえる関係を築くことが必要なのです。
漠然と「何かあったら教えてください」と伝えても、看護の知識がない介護士さんには「何が」「どのような状況が」看護師に伝えるべき異常なのかわからない場合も多いのです。
そしてそれは当然のことなのです。
だからこそ、看護師は具体的に起こりうる症状を伝えておくことが必要なのです。
同様に、機能訓練指導員さんには当日の血圧やむくみの増減があることなどを伝えておくことも重要です。
呼吸状況に注意して無理な機能訓練をしないように依頼したり、むくみの解消に効果的なメニューを取り入れてもらえるように依頼することでよりご利用者様の状況に合わせた介入がデイサービス全体でできるようになるのです。
まとめ
上記のことから大切なことをまとめると、以下のようになります。
・一緒に働くスタッフたちとしっかりコミュニケーションをとり、ご利用者様の異常を早期発見で
きるようにする。
・発見した異常から現在起こっている状況、今後発症しうる症状をアセスメントする。
・日頃からご利用者様及びご家族としっかりコミュニケーションをとり、信頼していただけるよう
にする。
・看護師として信頼をいただいたうえで、現在の異常や今後症状が悪化するリスクをお伝えするこ
とで早急に医療につなげてもらう
ということになります。
こちらからの介入で異常に対して早急に医療につなげることができればご利用者様もご家族もますます看護師として信頼してくださるようになります。
そうすれば、より円滑な関係を築くことができるようになるのです。
デイサービスでの働きかたに悩んでいる看護師さんはぜひ参考にしてみてくださいね。
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