小児の患者は大人の患者と比較して、病態が急速に動きやすいことが特徴です。 状態が急激に悪くなることもあれば、その逆もあります。そのため、医療者は頻回に患者の状態をアセスメントする事が重要です。特にベッドサイドで患者を多くみる看護師のアセスメントが非常に重要であり、急激な病態の変化を認めた場合は医師にすぐに報告することが必要です。また、適切なアセスメントを行うためには、知識をつけることが重要です。
皆様初めまして。私は看護師8年目で大人も含めた一般病院で小児科病棟の看護師を現在しています。大人の病棟で2年間働き、その後小児科病棟へ異動となり、小児科病棟で6年間働いています。 大人の病棟で働いていた経験も踏まえて、小児患者をみる際の看護師のアセスメントの重要性を述べていきたいと思います。 こどもは大人を小さくした状態と考えてはならないというのが、小児医療を行う上で原則です。疾患も大人と違いますし、同じ小児の患者でも年齢によって考えなければならない鑑別疾患も異なります。 また、大人の患者との大きな違いとして、小児の患者は病態が良くなったり悪くなったりする時間が早いことが挙げられます。そのため、小児の患者を担当する医療者は病態のアセスメントを頻回に行う必要があります。とりわけ、患者のベッドサイドに長い時間いる看護師のアセスメントが非常に重要です。 今回は私がそのように考える理由を私自身の体験談を交えてご説明しようと思います。 看護師3年目に大人の病棟から小児科病棟へ異動となり、1か月程度経ったときのある日のことでした。10か月の男児がRSウイルス気管支炎の診断で酸素需要を認めたため入院となりました。入院時点では、酸素は室内気でSpO2は92%程度であり、0.5Lのnasal酸素でSpO2は90%後半を保てていました。また、呼吸状態としては陥没呼吸を認めず、全身状態としても比較的穏やかでした。入院時点ではそれほど重症感を感じず、担当医師からも、全身状態はまずまず良いと話がありました。入院後はモニター装着し、適宜メプチン吸入と吸引で経過をみる事になりました。 ところが、入院してたった2時間後、徐々に呼吸状態が悪化し、酸素需要もnasal酸素2L程度まで増加していました。医師の指示では、SpO2が下がれば、酸素を徐々に上げていって良いとの事だったため、酸素を上げて対応していました。しかしさらに2時間後、酸素需要はマスク酸素で5Lを要するようになり、多呼吸と陥没呼吸が著明な状態でした。担当医師は入院後の4時間の間では外来対応中のため、児の様子は見にきていない状態でした。入院して4時間後の時点で、呼吸窮迫症状を認めること、酸素需要が増大している事を踏まえて、呼吸状態が悪化しているとアセスメントし、すぐに担当医師に報告を行いました。担当医師は外来対応中でしたが、外来を中断し、すぐに児の診察にきてくれました。医師の診察時点でも多呼吸、陥没呼吸が著明であり、採血の評価を行うことになりました。採血上でもCO270程度と貯留を認め、呼吸不全の判断で、一般病床からICUに転棟することになりました。ICU転棟後は挿管、人工呼吸器となりました。挿管後は呼吸状態を含めた全身状態は安定し、2日後に抜管、3日後には一般病床へ再度転棟となりました。一般病床に転棟後は酸素需要もなく、一般病床転棟後の2日後に自宅退院となりました。 この患者を担当して感じたことは、小児の病態の変化は大人と比較して早いし予想がしづらいという事です。大人の患者を担当してきた私は、重症な患者は重症で入院期間も長い傾向にあり、軽症な患者は軽症で入院期間も短い傾向にあると思っていました。しかし、小児科病棟に移動してきてからは、この症例のように入院した時点では軽症に見えても、ものの数時間で重症化し、ICUに転棟することになる場合もある。逆に、ICUに転棟するほど重症でも、ものの2日程度で一般病棟に転棟するほど回復し、すぐに退院できる場合がある事を学びました。 以上の経験を踏まえて、感じたのは小児患者の対応をする医療者は、小児の病態は大人と比較して変化しやすいため、頻回のアセスメントが必要ということです。また、医療者といっても、この症例のように、担当医師は多忙のためアセスメント不足になる事が多いため、ベッドサイドに多くいる看護師がアセスメントをしっかり行う必要があると考えます。今回の症例の私の反省点をあげると、小児の病態が変化しやすい事を理解していれば、入院して2時間後に酸素需要が2Lにあがり、呼吸状態が悪化してきている時点で医師に報告すべきでした。そうすれば、医師に評価してもらい、治療の強化(例えば吸入回数を増やす、ステロイドや抗菌薬を使用する、プロタノール吸入を行うなど)を行うことで、挿管、ICU管理を避けられた可能性があります。医師の指示通り、SpO2が下がったので酸素を増量して、看護師の判断で様子をみてしまったのは、良くなかったと思います。 この経験を活かし、現在まで小児科病棟での勤務を続けていますが、特に小児科病棟での看護師のアセスメントの重要性を感じた例をもう1例お伝えしたいと思います。 看護師7年目のある日のことです。2歳の児がアナフィラキシーの診断で、ボスミン筋注後に症状改善を認めましたが、経過観察目的に入院となりました。入院時点では、発疹や咳嗽、嘔吐などのアナフィラキシー症状は消失しており、元気な様子でした。昼頃に入院したのですが、夕方くらいまでは特に問題なく、入院翌日には退院予定の児でした。ところが、夜22時ころになり、モニター上でSpO2低下があり、ベッドサイドに行くと、咳嗽著明で全身に発疹を認めました。アナフィラキシーの2相性反応と判断し、すぐに医師に連絡し、ボスミンの用意の指示を受けました。医師が5分後に到着しましたが、その時にはボスミンの用意は完了しており、医師の診断もアナフィラキシーの2相性反応の診断で、すぐにボスミンを再度投与することになりました。その後は児の咳嗽、皮疹の症状はおさまり、SpO2も回復しました。児は翌日朝に帰宅予定でしたが、退院延期となり、入院2日目の朝まで経過観察を行い、問題ない事を確認の後に退院となりました。 この症例で学んだ事は、看護師のアセスメントの重要性と適切なアセスメントを行うための正しい知識を有することの重要性です。 アナフィラキシーの知識は大人の担当の看護師でも知識がある事は多いですが、アナフィラキシーには2相性反応があること、2相性反応はだいたい初回のアナフィラキシー発作後10時間程度後に生じる事があると知っているのは、小児科看護師くらいだと思います。今回の症例では昼ころ入院してきたため、夜の時点で2相性反応が生じる可能性がある事を念頭におき、素早く対応できました。また、アナフィラキシー発作は放っておくと、場合によっては30分程度で患者が死に至る可能性があるため、知識を持っていて非常に良かったと感じた1例でした。 以上、今回2例の私の体験を述べさせていただきましたが、小児の患者をみる際は、小児は病態が急激に変化しうる事を念頭におきアセスメントを行う事が重要であり、特にベッドサイドに多くいる看護師のアセスメントが重要と考えます。また、適切にアセスメントを行うには、正しい知識を有する事が非常に重要と考えます。 今回の話がこれから小児科病棟で働く事を考えている看護師の方々や学生の方々への参考となれば幸いです。
まとめ
小児の患者は大人の患者と比較して、病態が急激に変化する事が多いのが特徴です。病態が急激に悪くなる事もあれば、その逆で急激に悪くなる事もあります。そのため、小児患者を対応する医療者は頻回のアセスメントを行う必要があり、とりわけベッドサイドに多くの時間いる看護師のアセスメントが非常に重要となります。
また、大人の患者も小児の患者でもそうですが、見逃すと死に至る疾患も数多くあるため、幅広い知識かつ正しい知識をしっかりつけることが、アセスメントを行う上で欠かせません。これから看護師になろうとしている学生の方々、またこれから小児病棟で働こうと考えている看護師の方々、子供はかわいく癒される事も多いですが、小児の患者は大人の患者を小さくしたものと考えず、全く別個の存在として看護に当たっていただけたらと思います。
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