コミュニケーションがもたらすアセスメントへの影響

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#1823 2022/05/20UP
コミュニケーションがもたらすアセスメントへの影響
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アセスメントを実施する際に必要なのが情報のやり取りであるコミュニケーションです。アセスメント、すなわち課題分析は看護では重要なポイントです。
ここではコミュニケーションに的を絞って、アセスメントのコツをお伝えしたいと思います。

・コミュニケーションは2種類

患者様から看護師へのコミュニケーションと看護師から患者様へのコミュニケーション。看護に於いてはこの2パターンがありますね。
ここではいずれもバーバルとノンバーバルという2種類のコミュニケーションが飛び交っています。
まずはバーバルコミュニケーションから説明していきますね。

・バーバルコミュニケーション

バーバルは訳すと言語、すなわち言語的なコミュニケーションとなります。
このコミュニケーションは話す、聞く、読む、書くという動作(モダリティともいいます)によってなされるコミュニケーションです。
ここで注意しなければいけないのが「聞く」と「読む」はインプットであり、理解力が必要になる点です。要するに聴覚的理解力と読解力が必要になります。
まずは患者様発信で、我々が受け手としてのコミュニケーションを説明します。

・聴覚的理解

聞いて理解と言っても単語を理解するのと聞いたことのない言語を理解するのとは大きく異なります。
脳血管系疾患の患者様は言語障害を聴覚関連とともに発症していらっしゃることが多いです。よって、私が例えば「りんご」と伝えても患者様には「みかん」とインプットされてしまうことがあるのです。
また、長文になるほど理解力が低下します。これは簡単です。単語一つ、例えば「バナナ」だと黄色い果物のバナナだと理解できますが、「バナナを向いて、2本と半分食べる」となると情報量が増え、少し難解になります。これが長文になるとなおさらです。会話文レベルになると最難解になります。長い長い校長先生の話しが理解できないことに通じますね。

・読解力

これも聴覚的理解力と同様です。
「お父さん」と書いた紙を見せても「お母さん」と認識してしまう患者様がいます。また、文が長くなればなるほど理解力の力が必要になる点も同様です。
ここで聴覚的理解と異なるのは文字という媒体を使っているところです。言語聴覚士の先生に聞きましたが、漢字の方が理解しやすいのだそうです。要するに、ひらがな、カタカナより漢字を適度の用いた方が分かりやすい、ということです。
そして使う単語の頻度にも難易度が異なる点が挙げられます。「りんご」と「パパイヤ」では前者の方が使用頻度は高いでしょう。これを高頻度語と言います。
漢字を交えた高頻度語を駆使しつつ、なるべくの短文を提示していくと理解がしやすいということです。

・話す

話す障害は多種多様であります。
失語症、歯や舌の欠損による構音障害、神経や筋肉の障害による言語障害、最近では早々に治療をしますが生まれつきの口唇裂、口蓋裂による言語障害もあります。また、吃音やガラガラ声の音声障害、呼吸器循環器系の体力の低下による発語障害など様々な要因があります。
これら言葉の障害に関しては事前にカルテで情報収集をすることである程度アセスメントが可能になります。
大事なのは患者様が伝えたいことを汲むことであり、隠れたニーズを見つけ出すことがナースには求められます。患者様のアウトプット能力を見逃してはいけません。

・書く

もう一つのアウトプットが「書く」です。こちらも話すと同様、様々な障害が存在しています。
字を忘れている状態、手が動きにくい、巧緻性が低下しているなどの障害、ペンの使い方が分からない失行などの他、元々の知能指数が低い方、家庭環境などにより教育水準が低い方もいらっしゃいます。
私は実際の現場では書いていただくことによるアセスメントは行ったことはありませんが、他職種からの情報からは様々な情報が見えてきます。
存在しない文字、漢字だけが書ける、鏡にうつるようにひっくり返してしまう文字を見たことがあります。
話すことが困難な患者様からは文字媒体での情報も当然、必要になるでしょう。

・ノンバーバルコミュニケーション

さて、こちらは非言語的なコミュニケーションとなります。
先に上げたバーバルにはないコミュニケーションですが、別の表現を使うと、“言語以外すべて”のコミュニケーションになります。
顔の表情、声、性別、年代、雰囲気、着ている服、身長や体形、歩き方や座り方、クセなどあらゆることがノンバーバルコミュニケーションとして挙げられます。

・特徴

言語以外のコミュニケーションであることは前述致しましたが、アセスメントの際はバーバルよりノンバーバルに重点を置いていることが圧倒的であることが体験的にわかります。
例えば「歩きにくい」という訴えがあったとしてもどう歩きにくいのか。言葉よりも実際に見てみればわかるのです。起居動作から困難があり、立位はつかまり立ち、そして歩行は確かに歩きにくそう。そう、ここで初めて“歩きにくい”が登場します。
それ以外では「食欲がない」という訴えがありました。これは実例です。数字、すなわち科学的根拠となる食事量の数字では主食1割、副食2割摂取量で確かに食欲低下に結論付けることが可能かもしれません。しかし、実際の様子を見ていると談話室での他患者との談話に花を咲かせている時に、話をしながらも口の動作が会話と異なる動きをしているのを発見しました。他患者様からお菓子おすそ分けしてもらっていたのです。結果、食事摂取量が低下していたのです。
ここでは“口の動き”をノンバーバルコミュニケーションとして把握し、食事量低下の原因にたどり着けることができた事例と言えます。
このように、言語だけのコミュニケーションからのアセスメントだけでなく、言葉ではない部分のコミュニケーションも必要なのです。

・こちらからのコミュニケーション

これまでは患者様発信で、我々が受け手のコミュニケーションを説明しました。ここからは我々からのバーバル、ノンバーバルコミュニケーションを説明したいと思います。

・バーバルコミュニケーション

先述の通り、読む、書く、聞く、話すがメインになるコミュニケーションです。しかし、これらはあくまで表面的なコミュニケーションに過ぎない、ということに留意が必要です。
例えば「こんにちは」とあいさつをしたとしましょう。明るい声の挨拶と暗い声の挨拶とでは相手への『印象』が異なります。
「〇〇氏より内線あり、折り返し連絡ください」と手書きで書いたメモがデスクにあったとして、丁寧な文字、なぐり書きの文字だと受ける『印象』が変わります。字は人の性格を表わすと言いますね。
アウトプットである書く、話すでも我々はいつも同じように行っていません。平静な時、忙しい時、相手が上司なら、相手が家族なら…色々な場面で使い分けをしています。ここではバーバルコミュニケーションは表面的なものであると言えます。

・ノンバーバルコミュニケーション

こちらからのノンバーバルコミュニケーションは、多くは前項に挙げた通りなのです。
相手への印象。同じ「いらっしゃいませ」でも嬉しそうな言葉か、やる気のない言葉か。相手に伝える文でも走り書きか、丁寧な文字か。
聞く姿勢はどうでしょうか。しっかりと傾聴する雰囲気が出ているか。脚を組んで、タメ口で対応していないか。聾唖の方が一生懸命書かれたメモ書きを「あー、はいはい」と適当にあしらっていないか。やる気がなさそう、態度が悪い、読みづらい、適当だと相手に判断されるとどうでしょうか。
要するに、言語以外の全てがノンバーバルに表れて相手に伝わるのです。マイナスな印象を与えてしまうと患者様はコミュニケーションそのものを「この人は苦手だ」と思い込み、さらに隠れているニーズもつかみにくくなります。そうなると課題分析が上手くできているとは言い難い状態となり、看護も良い看護が提供できているとは言いものになります。

・データ

コミュニケーションが伝わる割合は、ノンバーバルコミュニケーションは85%前後を占めているといわれています。バーバルはせいぜい15%程度なのです。如何にノンバーバルが重要かが分かるかと思います。アセスメントはコミュニケーションや観察、推察が必要です。お互いの信頼関係と素晴らしい看護の為にもバーバルとノンバーバルのコミュニケーションを意識してください。

まとめ

・アセスメントにコミュニケーションは必須
・コミュニケーションはバーバル(言語)とノンバーバル(非言語)により成り立つ
・バーバルは読む、聞く、書く、話すが主
・ノンバーバルは読む、聞く、書く、話す以外『すべて』であり、あらゆる情報がある
・相手に伝わる割合はノンバーバルの方が圧倒的に高い
・看護師の態度が悪いと的確なアセスメントが把握できず、隠れているニーズにも気が付きにくい
・患者様→看護師、患者様←看護師いずれも意識が必要

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