悪性リンパ腫で化学療法を行うために入退院を繰り返していた患者さんがおりましたが、医師には普通の態度であるのに対し、看護師達にはすぐ怒り出し、ケアの仕方にクレームを付けてくる患者さんでした。日々看護師達は苦労していましたが、これはただ単に性格上の問題とだけ捉えるのではなく、病状からくる心理や感情を理解することで、その後の看護ケアの受け入れや、拒否的言動の軽減に繋がると学ばされた事例でした。
今回私がご紹介するのは、拒否的な言動や行動が見られる患者に対する看護のポイント、アセスメント、看護する中で大事なことについてです。まず初めにお伝えするのは、看護師の皆さんは、一度はクレーマー患者さんや関わりにくい患者さんを担当したことがあるかなと思います。私が働いていた病棟は、血液内科でした。治療経過も長いため、一人ひとりの患者さんと関わる時間が他科と比べて長く、変わった患者さんも多かったです。がんを抱える患者さんの心理は、教科書でもよく書かれていますが、今回の事例を経験して、改めて気付かされたこと、大事にしなければならないことをお伝え出来たらと思います。
私が病棟で働いていた頃、悪性リンパ腫で化学療法を行うために入退院を繰り返していた患者さんがおりました。その患者さんは、医師には普通の態度であるのに対し、看護師達にはケアの仕方にクレームを付けたり、すぐ怒り出す患者さんでした。自棟が満床となってしまい他の病棟に入院した際にも、同室患者や看護師とトラブルを起こすなど、問題となっていたようでした。
今回も治療目的での入院でしたが、状態改善は難しいと、医師から家族へ告知された入院でした。ただやはり、今回の入院でも看護師に対しては攻撃的で、拒否的言動や行動が見られ、日々看護師達はケアの仕方に苦労していました。治療日数も長期となり、入院期間も数ヶ月を過ぎた頃、若手看護師達が日々の暴言や行動に限界を覚え、私自身も辛くなってしまいました。ケアの仕方や声掛け、拒否された時はどのように対応したら良いのか、もうこの患者さんの所に訪室するのが辛い、怖いとさえ感じるようになってしまいました。この先のケアはどうしたら良いのか、ある時、ベテラン先輩看護師に相談したことがありました。
先輩看護師は、「あの人は元々の性格もあるけど、でもそれだけじゃない。人を良く見て観察しているし、この看護師は自分を受け入れてくれる人だって見て判断してると思う。受け止めてくれない人だと分かると、それがさらに拒否に繋がるんだよね。もう受け入れてもらえないこともある。
病状が悪いことは、医師から説明されなくともきっと自分でも分かっているし、受け入れられないから、行き場のない不安や怒りや恐怖を私たちにぶつけてるんだよ。だから嫌でも辛くても、こういう患者さんこそ、足が遠のいてはいけない、常に気にかけて今必要な看護は何かアセスメントして、こまめに訪室しなければならないんだよ。家族も含めて、チームみんなで支えていこう。」と助言してくださいました。その時、自分には終末期の患者の心理に対するアセスメントが足りていなかったと反省し、病状はもちろん、患者がどんな心理状況でいるのかも理解して日々看護することが大事と感じました。
それからも、ご家族を含めて看護師全体で患者さんのケアに努めていました。ご家族からの電話や来棟された時には、看護師から伝えられる範囲で、日々の患者さんの様子を伝えたり、希望時には医師との面談も設定したりするなど、家族ケアにも努めていました。
病状悪化に伴い、全身状態も徐々に悪化し、かろうじて体動は出来るほどであった時には、患者さんは拒否的言動以外に言葉を発することも少なくなりました。それからも常に足が遠のかないよう、拒否されてもこまめに訪室し、気にかけていました。ある時、私が清保ケアに入った際、終始無言でしたが、途中ただ一言、「俺、もう死ぬのかな」と話してくれたことがありました。その言葉を聞いた瞬間、ああ、ただ単に看護師が嫌いだから、攻撃や拒否しているのではなかったんだ、今も抱え切れない恐怖や不安があるからなんだと、先輩の言葉を思い出し、改めてそこで気付かされ、また、今までの自分のアセスメントが足りていなかったと、再度実感させられた瞬間でした。
その言葉を聞いた後、私に話してくれた嬉しさを感じると共に、辛いんだと伝えてくれる気持ちを感じて泣きそうになりました。「身体、辛いですよね」としか声をかけられなかったですが、しばらく体をさすりながら側に居ました。その後、患者さんはしばらくしてから、小さな声で、「ありがとう」とだけ話してくださいました。その後はさらに状態も悪化し、治療の甲斐なく、ついには寝たきりとなってしまいました。呼吸状態も悪化し、リザーバーマスクでの酸素投与となりました。発語も難しくなり、こちらの問いかけに対し、一言発したり頷いたり、手振りでしか伝えることしか出来なくなりました。
ただ、それからは看護師の問いかけやケアを拒否する様子はなく、ケアに対しても「ありがとう」と話してくださることもあり、全てのケアを受け入れてくれました。その後、全身状態悪化に伴い、間もなく亡くなられてしまいましたが、最後の看取りの勤務者は私でした。
ご家族と共に、お看取りしました。今思うと、あんなに攻撃的な患者さんだったけれど、私を選んでくださったのかなと思っています。ご家族からも、「あんなに我儘言って、看護師の皆さんには本当にご迷惑をお掛けしました。
いつも携帯電話で私たち家族にも文句言ってきた父ですが、本当は寂しがり屋で小心者なんです。ここの看護師さん達に看てもらえて、父は幸せでした。本当にありがとうございました。」と感謝の言葉をいただきました。ご家族からこのような声が聞けたことは、私達の半年間、患者と家族を支えてきた看護としての結果でもあると感じました。思いはきちんと伝わっていたんだなと感じ、こまめに訪室して気にかけていて良かったと、拒否され続けて辛かった気持ちも報われた瞬間でした。
今回の事例から、私は様々な事を学びました。がん看護や終末期の看護において、看護師に対し拒否的であったり、攻撃的な姿勢を持つ患者さんは少なくともいると思います。看護者側も対応に難しく、困難な事例もあるかと思われます。今回の患者さんでは、元々の性格もあるとは思いますが、それは単に性格の問題だけではなく、病状からくる抱えきれない不安や恐怖の影響も大きく、そういった心理的なアセスメントを踏まえて、家族を含めて関わっていくことが必要と感じました。
ここで私が大事だとお伝えしたいことは、そういった拒否的な患者さんであっても、行きたくなくても足が遠のいてはいけないことだと感じました。訪室をやめずに、気にかけていくことが大切だと思いました。また、家族を含めて看護師全体でその患者を支えること、自分が辛くなったら医療者側で気持ちを共有することも大切で、決して自分一人で抱え込まないで欲しいです。やはり看護者でも、拒否的な言動をされ続けるのは辛いです。そんな時には先輩を頼ったり、周りに助けを求めたり、チーム全体で情報共有し患者さんをサポート出来るような体制が大切と感じました。
患者さんに対しては、あなたを受け入れていますよ、という姿勢を見せながら接する事で、患者さんも心を開いて打ち明けてくれることもあります。患者さんが本当に求めていることは何か、知ろうとすること、そのような姿勢で継続的に接していくことが大切と感じています。今回の事例を含めて学んだことを、私はこれからの自分の看護に活かしていきたいと思っています。
まとめ
拒否的な患者さんで訪室したくないと感じても、足が遠のかないよう常に気にかけるよう心掛け、チーム全体で情報共有し患者さんをサポート出来るような体制が大切です。また、患者さんに対しては、受容的姿勢を見せながら接する事が大事であり、がん看護や終末期においては病状からくる抱えきれない不安や恐怖の影響も大きく、そういった心理的なアセスメント、今何を求めているのか全体からアセスメントする事を踏まえ、家族を含めて関わっていくことが必要と感じています。
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