院内急変を察知するためのRRSを身に付けよう

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#1818 2022/05/15UP
院内急変を察知するためのRRSを身に付けよう
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急性期病院では様々な患者さんが緊急入院されてきます。状態の悪い患者さんや病状が急変する患者さんも多くいます。そんな中で仕事をするとなると、いつ急変に当たるかもしれないと不安に思いますよね。そんな不安を少しでも解消出来るよう、「あれ?おかしいぞ?」「もしかしたら急変するかも」などを見極めるアセスメント方法を身に付けませんか。

【はじめに】

急性期病院、特に3次救急の場合では24時間365日救急受け入れをしています。様々な疾患の患者さんが搬送され、治療を受けています。私たち看護師は日々患者さんの看護を行う上で、高度なアセスメント能力を求められます。しかしながら医療現場の煩雑さから充分なアセスメントを行う余裕、時間がないのも現実です。そんな中で異常、急変リスクの早期発見に繋げられるアセスメント方法を学び看護に生かしていって下さい。 

【院内迅速対応システム(Rapid Response System:RRS)】

まず始めにRRSについて説明していきます。RRSとは、多くの急変には前兆があるという点に着目した院内対応システムです。2005年に開催されたInternational Conference on Medical Emergency Team(ICMT)において、患者安全、集中治療、病院医学の専門家たちによって提唱されました。ポイントとしては、「早期認識」と「早期介入」が重要となっていきます。
心停止に陥ってからの介入は予後不良となるのは、皆さんも良く分かると思います。実際に院内心停止患者の予後として、蘇生に成功する患者は49%、更に生存退院が出来た患者は15%というデータもあります。
では、なぜ院内で心停止へと陥るのでしょうか?
それは以下の点が考えられます。
・観察が不十分だった
・重症化している認識がなかった
・助けを呼ばなかった
・助けを呼んだが遅かった
・助けてくれる人がいなかった 

これらの原因によって心停止まで陥ると考えられています。この原因を解消するため、前兆を捉えて対応するシステムが考案されました。これがRRSとなります。
RRSの定義として「患者に対する重篤有害事象を軽減することを目的とし、迅速な対応を要するバイタルサインの重大な増悪を含む急激な病態変化を覚知して対応するために策定された介入手段」となります。
それではRRSでは、どのようなことに注意して見ていけば良いのか説明していきます。 

【見るべきポイント】

私たち看護師が見るべきポイントは大きく分けて、以下の5点となります。
・呼吸
・脈拍
・血圧
・尿量
・意識レベル
では1つずつ解説をしていきます。 

①呼吸
まずは呼吸状態の観察です。呼吸回数が30回/分を越えてくる場合、頻呼吸となります。または8回/分以下の徐呼吸にも注意していきましょう。呼吸状態の変化は急変へと繋がる可能性があります。頻呼吸、徐呼吸を認めたら呼吸パターンがどのようなものなのか(例えばチェーンストークス呼吸、ビオー呼吸など)を観察していきます。
また、酸素飽和度(SpO2)にも注意して下さい。特に酸素投与をしている状態でSpO2が90%以下へ低下する場合には、注意が必要です。
②脈拍
次に脈拍数です。脈拍数が130回/分以上、または40回/分以下の場合には、急変リスクが高くなります。頻脈や徐脈を起こしている原因は何なのかをアセスメントし、適切な処置が受けられるよう医師への報告が必要となります。頻脈の場合、感染症による発熱や心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患などが考えられます。徐脈では洞停止、洞房ブロック、房室ブロックなど不整脈によるものが考えられます。これらの状態になっていないか、心電図管理を行いつつ、12誘導心電図の実施も必要となります。
③血圧
3点目は血圧です。収縮期血圧が80mmHg以下、または40mmHg以上の低下を来した場合は、注意が必要となります。急激な血圧低下の場合、腸管出血などによるショック状態(循環血液量減少性ショック Hypovolemic shock)となっている可能性があります。下血や吐血などがないかも観察していきましょう。
④尿量
4点目は尿量の変化です。尿量が50ml/4h以下に減少した場合、腎機能低下や血圧低下による乏尿、感染症などによる脱水などが考えられます。血圧や脈拍の変化と合わせて観察していきます。ただし尿閉となっている場合もありますので、下腹部の膨満はないか観察しましょう。必要に応じて残尿測定を行うのも1つの方法です。
⑤意識レベル
最後は急激な意識レベルの低下となります。意識レベルが急激に低下した場合、脳出血や脳梗塞など頭蓋内病変が疑われます。血圧の変動や必要に応じてCTやMRIなどの検査を行うこととなります。また瞳孔、偏視の有無などにも注意していきましょう。その他にも痙攣発作が起こっていないかにも注意が必要です。 

これらの基準のうち、1項目を満たす、または「何かおかしい」と懸念を抱いた場合は、RRSを起動させる流れとなります。
RRSを起動させることによって、この患者さんが今後急変する可能性があるかもしれない、注意をして観察をしていかなければならないという判断をすることが出来るのです。 

それでは私が実際に体験した事例を紹介させて頂きます。
【事例①】
患者紹介
年齢:80代
性別:男性
疾患:一過性虚血発作(TIA)
自宅で右手の痺れを感じ呂律も回らなくなり救急搬送されました。搬送後に症状は消失し、TIAと診断されABCD2スコア3点のため48時間の経過観察入院となります。入院時の意識レベルは清明でした。治療としてはアルガトロバン持続点滴投与が開始となりました。入院後10時間が経過した際に右上下肢の麻痺が出現し意識レベルの低下(JCS20)が見られました。脳梗塞発症が考えられRRSを起動し、医師への報告をしました。CT撮影を行い新規脳梗塞を認めました。経過としては、早期治療を行い意識レベルはJCS1まで改善しました。麻痺の残存はありましたが、リハビリテーション転院をされました。 

【事例解説】
脳梗塞発症の早期発見と治療へと繋がりました。気付かなかった場合、意識障害の残存や予後の悪化が考えられます。 

【事例②】
患者紹介
年齢:50代
性別:男性
疾患:筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ALSの診断で入院されていた患者さんです。症状としては嗄声と嚥下障害がありました。四肢の筋力低下はなくADLは自立していました。夜勤態で酸素飽和度の低下(SpO2 70%台)がありました。患者からは呼吸困難の訴えが見られ、酸素投与を行いましたが酸素化の改善は不良でした。呼吸回数も30回/分を越えていたため、RRSを起動しました。翌日、医師より採血指示があり炎症反応の上昇、胸部レントゲンでは肺炎像が認められました。唾液処理困難による誤嚥性肺炎と診断され、抗生剤投与と経鼻胃管留置となりました。嚥下機能の著しい低下を認め、肺炎治癒後に胃ろう造設されました。 

【事例解説】
疾患による嚥下機能低下からの誤嚥性肺炎をきたしていました。ALSの場合、呼吸筋の低下が進行すると、自発呼吸も難しくなりNIPPVや人工呼吸器管理となります。特に誤嚥性肺炎を起こすと、状態悪化がしやすく予後にも関わってきます。また呼吸機能低下が進行すると、胃ろう造設も出来なくなります。今回の事例では、肺炎の早期発見と治療に繋がりました。

まとめ

院内急変が起こる可能性は何時如何なる時でもあります。しかし、私たち看護師が「あれ?おかしいぞ」「もしかしたら急変するかもしれない」という視点を持つことで、未然に防げるものでもあります。日々の看護の中で、患者さんの状態を把握し、小さな変化も見逃さないためにRRSを是非とも活用して欲しいと考えています。
以上を踏まえて、患者さんの急変を見逃さないエキスパートナースになってみませんか。

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