様々な場所で働ける看護師ですが、訪問看護にも魅力があります。ここでは訪問看護師として働いた経験や訪問看護師になる方法をお話します。訪問看護の実際や病院との違い、やりがいや葛藤を知ってもらえればと思います。
看護学校でも勉強する2025年問題では、後期高齢者が非常に多くなり、ピークを迎えると言われています。
実際に現場で仕事をしていても、高齢者は非常に多く2025年問題を身近に感じているのが現状です。
ここでは実際に私が訪問看護師として経験したことを例に挙げてお話をしていきたいと思います。訪問看護師になる方法、訪問看護師になるには、等をかいていきます。
訪問看護というと実習で体験する看護師が殆どだと思いますが、訪問看護師として働く看護師の数はとても少ないです。
日本の看護師の総数も中でも訪問看護師は数パーセントと言われているのが現状です。
今まで体験したことのない高齢社会が訪れると言われてる日本では、すでに高齢者が多く病院のベッドが足りなくなるというのも時間の問題ではないかと考えます。
実際に仕事をしていて、病院でベッドが満床となり退院するとしても、施設がいっぱいで入所待ちの高齢者が多く存在しています。高齢者施設自体も数は増えていますが、高齢者の数に追いつかない現状もあるのです。
そんな中、数を増やそうと日本も動いているのが訪問看護の分野です。訪問看護ステーションも現在では数が多くなっていますが一方で経営がうまくいかず、閉所するステーションも現実にはあるのを耳にします。
訪問看護というと、個人経営のステーションや病院が母体となったステーションも存在します。個人経営のステーションでは管理者は看護師か保健師でないといけない等制限があります。また、その中には社長や経理も存在しなくてはならないのです。
訪問看護をするにあたって、必ず必要なのは主治医の存在です。主治医は病院の医師でも可能ですが、往診や何かあった時に対応できる医師が主治医となる必要があります。また、他にはクリニック等の小さな医療機関でも主治医となり往診をしてくれる医師もいますし、現在ではガン専門の緩和ケアの在宅診療医も存在しています。この在宅診療医というのは、地域格差もあるのが現状です。
大きい都市では、総合病院や日本赤十字関連の病院が存在しているので難病や医療依存度の高い患者さんも主治医に困ることなく、在宅で療養することが可能になります。
しかし僻地や山間部といった医療が不足している場所では、遠方となり必然と在宅診療を引き受けてくれる医師がいないのも現状です。そうすると、僻地や山間部にただ訪問看護ステーションを開設したとしても、診療できる医師がいないので経営は厳しい上に需要は考えられないのです。しかし、現実には在宅医療を望んでいる患者さんも多くいるので訪問看護師の中では、葛藤も生まれます。
訪問看護師になる方法としては、ベースに看護師の資格が必要となります。
場合によっては准看護師を採用しているステーションもあるようですが、准看護師だと看護計画が立案できない、自己判断をしてはいけない、管理者にはなれない等の事柄が発生し正看護師と准看護師の差が現実として現れてきます。なので現在は正看護師を求人する職場が増えているのが現状のようです。
また、最近では新卒の看護師も訪問看護ステーションに就職できるという話も聞いたことがありますが、不可能ではないと思います。新人が訪問看護師になるには、そのステーションでまず新人を受け入れてくれるかの確認も必要なのが現状です。要は新人の教育体制がどれだけ整っているかという点が肝心なのです。しかし、現実を見るとするならば、数年でも臨床経験を積んだ看護師のほうが即戦力ではあるし、高齢者の中には新人を心配する人もいるのです。
さて、訪問看護師のイメージは人によって様々ですが、人の家に入るのは苦手、であったり劣悪な環境は耐えられないとの声も聞いたことがあります。
また逆に病院勤務よりも楽である、と考える年配看護師もちらほらいるようです。実際には病院と状況は違いますが、「楽に仕事ができる」といった考えは大きい間違えと言えます。むしろ病棟看護師よりも、アセスメント力や考える力判断力は非常に求められますし臨機応変に対応する能力だって必要です。後ほど話しますが、現状の在宅医療では慢性的な疾患に加え、難病や医療依存度の高い患者さんも多く療養されています。そんななか、勝手なイメージで楽に仕事ができるといった考えで応募してくる看護師も実際にいますので、そんな看護師よりも若くてフレッシュさのある新卒看護師の方が採用されやすいと思います。
訪問看護師を目指す上で必要とされることはいくつかあります。
ほとんどの事業所では訪問看護は車での移動が多いようです。その場合車の免許は必要ですし、運転技術が問われたり運転が好きかどうかというところも問われてきます。
実際に訪問すると利用者さんの家の駐車場に訪問車を停めることになりますので、なかには難易度の高い駐車場や車庫が存在していることもあります。車をぶつけないように気をつけるのはもちろん出入りも他のサービスの人も来たりするので配慮が必要です。僻地や山間部では、例えば、オンコールの連絡が来ると夜間に暗闇の中を走らなければならないのです。そうするとシカやイノシシに遭遇することもあります。また雪が降る地域だと冬の間は特にスリップや事故に気をつける必要があります。逆に街中でも道が狭かったり一方通行の道路があったりするので、それぞれの事業所によって交通事情は異なります。
また一日の訪問件数にもよりますが、場合によっては分刻みで移動しなければならないスケジュールもあります。そうなると訪問先の家から次の家まで何分ぐらいかかるか、渋滞した場合の抜け道はあるか、どこの道が距離的に通りやすいのか等も慣れるまで試行錯誤が必要です。
東京などの交通機関が充実している場所では、電車や自転車での訪問が多いと聞きます。その場合は雨や雪の日はとても大変で、電車の時間を考えるとタイムマネジメントをしっかりしなくてはいけないそうです。中には訪問をしてる最中に怪我をしたり、交通事故を起こしてしまうといった場合もありますが、その場合は会社も含め冷静に対処する必要があります。
他に求められることとしては、いい意味で利用者さんと割り切って関われるということです。
訪問看護では患者さんがサービスを開始すると、入院するか亡くなるまでサービスが続く場合がほとんどです。そうなると利用者さんと関わる単位は数ヶ月から年単位に及ぶ場合もあり、そうなるといつの間にか家族のような身近な存在になってしまう利用者も少なくないのです。そういった場合にどこまで線引きをして関われるかということも重要です。例えば実際の例として、一年以上利用者さんとその家族と関わった結果、担当看護師が休みの日にも関わらず連絡が来て、「家族が発熱したから薬局で解熱剤を買ってきてほしい」と連絡を受けたこともあります。利用者さん側からすると頼れる存在として連絡をしてきたのかもしれませんが、訪問看護師はヘルパーでもなく友達でもないのです。そういった時に、そのような対応はできませんとしっかり伝えなければならず、心苦しい時もあります。しかし、1度そういった依頼に応えてしまうと、この事業所は何でもやってくれるといった勘違いが発生してしまう可能性が高いのです。
利用者さん自身の体調が悪く、業務としてオンコールで電話が来て主治医の元に処方薬を預かりに行く等の場合は仕方ないのですが、家族が体調が悪いから見て欲しいなど、そういった要望が実際に発生する場合もあります。
長く関わるからこそ、そういった状況が発生しやすくなるのです。
一方で、長く関わるから故の、本音で利用者や家族と話ができることもあります。例えば、緩和ケアの時期に入った場合は最期をどうしたいか、利用者や家族の気持ちはどうかなどは関係性によっては非常に引き出しやすくなります。そういった状況では逆に関わりの浅い看護師等はうまく踏み込めなかったりするのです。
割り切って関わるという点では、例えば、利用者が病状が進行した場合、長く担当していた看護師はどうにかしたいという気持ちが強くなったり、悔しい気持ちが芽生えたりします。また看取りの場合も最後まで関わりたいという気持ちも芽生えますが一方で家族に近い存在になってしまうと、切り替えがうまくできなくなります。そういった場合、家族のフォローがおろそかになったり、看護師として正しい判断ができなくなるのです。
看護師も感情労働といった、感情的にも大きく揺さぶられる仕事です。しかし、利用者さんは1人ではないので時には気持ちを割り切って仕事していくことも必要とされます。
話は変わりますが、訪問看護と、病棟看護としては一番大きく異なる点があります。
それは、①医療機器等の物品状況の違い②医師の存在です。
①からお話します。まず物品でいいますと、病院はバイタルサインで言うと心電図モニターや酸素濃度を測るモニターが設置してあり数値や視覚からバイタルサインを見ることができます。また輸液ポンプやシリンジポンプといった機会も充実しており他にも医療機器やそれらの予備が沢山あります。
一方で訪問看護の現場では相当必要でない限り、心電図モニターや輸液ポンプは使用しないのです。必要な場合は病院からレンタルすることもあります。しかし、基本的には目で見て手で触り聴診器を使って、バイタルサインを判断します。道具が手元にない場合は血圧も触診で判断しますし、呼吸状態も目で見て判断します。
一番病院と異なる点は、看取り場合にそういった機器がないことです。私も実際その現場に立ち会ったことがありますが、看取りで延命治療もしないし自宅で最期を迎えたいという利用者さんの場合は、心電図モニターもないため呼吸停止や心停止は目で見て触って確認します。主治医の指示の上での対応であり、呼吸停止と心停止を確認した場合は、主治医に連絡をするのも看護師の役目です。
モニターのアラーム音もなく、輸液ポンプのアラーム音もなく、家での時計の音や猫の鳴く声がする中でのお看取りははじめは衝撃でもあり、利用者さんの生きざまを感じさせられます。全てが綺麗に終える訳ではありませんか、その家族の看取りの形は様々であり終焉を迎えるまでサポートをするのも訪問看護師ならではの体験です。
②は、病院と違って訪問看護の現場では何か急変があった場合でも、医師がすぐに駆けつけるケースが全てとは限らないのです。中には往診に来る医師もいますが特に夜間では電話ごしでの指示であったり、救急搬送を指示する医師もいます。病院では連絡すれば、当直医がすぐ駆けつけてくれますが、訪問看護ではそうはいかないので、看護師の判断力も問われます。病棟勤務から訪問看護に転職してすぐの場合は、そういった時に医師がそばにいないということも不安の要素にはなると考えます。
訪問看護に対してはさまざまなイメージがあるかと思いますが、人間らしく利用者さんと関わり、本当に貴重な学びを利用者さんやその家族または同僚や他の職種の人から得られることも訪問看護師の魅力であります。
まとめ
病院勤務とは事なる状況での訪問看護のお仕事ですが、大変な反面看護師としてやりがいを感じられる仕事です。高齢者が増える日本で、訪問看護ステーションも増えているので看護師人生の中でも一度は経験してほしい分野です。患者さんと関わる中では悩んだり困ることもありますが、その分多くの貴重な事を学べます。機会があったら是非挑戦して頂ければと思います。
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