退院支援における看護アセスメントのコツ

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#1787 2022/04/14UP
退院支援における看護アセスメントのコツ
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退院支援における看護アセスメントで重要なポイントは、患者さんの日常生活の過ごし方を知る事から始まります。次に、患者さんだけでなく、実際のサポート者からの情報をしっかり得る事が大切です。
自分の症状をきちんと把握出来ていない場合や、自分では出来ると思っているが実際は手助けがないと出来てないこともあるため、患者さんを取り巻く人全体で話し合う必要があります。

実際の事例を元に詳しく説明していきます。

以前心不全で入院した患者さんがいました。(以下Aさんとします)
・Aさんは元々心疾患があり通院中の80代男性、独居。
・すべてにおいて日常生活は自立、認知症なし、我慢強い方。
・娘さんは月に2回自宅に様子を見に来る程度
・今回は急性心不全(下腿浮腫、息切れ、動悸)をきたし外来受診時に即入院。

1.  患者さんにとって退院後どのような援助が必要なのかアセスメントする

1) Aさんの人物像、性格

Aさんは内服も決められた通り飲み、外来もきちんと受診する真面目な人でした。自分で何でもこなそうとする方で、浮腫で歩き辛さや持続点滴中であるにも関わらず、遠慮してNCを押さず1人でトイレへ行き、1度転倒歴があります(幸い怪我はありませんでした)。今回の症状も、風邪や加齢による変化と解釈し特に気に留めてなかったようです。

2)Aさんの日常生活状況

Aさんから話を聞いていくと、いつも使用していた徒歩10分以内のスーパーが閉業し、2週間程前から徒歩30分以上かかるスーパーへ行っていたとの事です(往復で1時間ほど)。まとめ買いが苦手なようで週に4回はそのスーパーを利用していたとの事でした。
また、当時冬場で寒く乾燥していた時期であり、Aさんも風邪気味でした。
入院1週間前からは風邪症状プラス、下腿浮腫、息切れ、疲れやすさ、動悸も出現。Aさんは風邪だから、年だからと、さほど気にはしていなかったとの事です。しかし体はだんだん辛くなり、スーパーでも食材ではなく、惣菜やカップラーメンを買っていたとの事でした。

3)Aさんの心不全の原因のアセスメント

心不全の原因は様々ですが、Aさんの場合は感染症や活動量が増えた事からの心負荷が主な原因となると思われます。
また、体調悪化に伴い、食生活の乱れも起こり、更に心負荷を増大させてしまう悪循環に陥ってしまいました。
もともとあまり心機能が良い状態ではなく、かろうじて内服によってコントロール出来ており、容易に心不全に陥ってしまう状態でしたが、Aさんはそこまで自分の心臓の状態が悪いと分かっていませんでした。

4)このような事態になってしまった原因や今後介入が必要になことをアセスメントする

・Aさんは遠慮がちで何でも1人でこなそうとする性格、周りにヘルプを求めることが苦手
・自身の病気についての理解が乏しい
上記の内容から、この問題の解決はAさん1人で出来る事ではないと分かります。
今後心不全での入院を繰り返さず、自宅でも安心して生活出来るようにするためにも、周囲のサポート者への協力依頼やサポート支援の案内が必要となってきます。

2.サポート者について把握する

1)サポート状況

・Aさんの奥さんは2年前に他界、子どもは娘さん1人
・娘さんは義親の介護のため、義実家と自宅の往復をしている。パート勤務もあり。
・娘さんの旦那は自営業であり、家事や介護はほとんど協力出来ない
・娘さんの健康面に異常はないが、日々の生活に疲弊してきている
・Aさんの兄も現存だが兄も高齢で施設入所中。

2)娘さんの思い

・Aさんはまだまだ自分で身の回りの事が出来るため心配はないと思っていた。
・本人が「大丈夫」と言っていたため、本当に大丈夫と思っていた。
・ずっと元気に過ごしていると思い安心していたさなかの入院であり、ややショック気味で自身の不甲斐なさに落ち込んでいる様子
・娘さん自身、スーパーへの送迎や、炊事家事など、色々手伝いたいが、正直キャパオーバーだ。
これらの状況から、Aさんは頼りたくてもなかなか娘さんには苦労や心配をかけたくなくて言わなかった可能性も考えられます。
娘さんもAさんの事が心配ではあるが、疲弊している状態で支援はあまり期待出来ません。
そこで、Aさんの負担軽減、娘さんの不安解消のためにも、介護保険の案内が候補に上がりました。

3.社会資源の案内

入院中、退院後も心機能を保ちつつ安心して生活出来るようにする為にも、Aさんへ心不全症状についての説明を行い、日々健康チェックしてほしい内容を伝えました。また、体調が悪くなった際や心不全の症状が出た際には外来受診を待たずに早めに病院受診をすることや、自身の年齢や体調に合わせて無理をしないよう説明しました。
しかし、Aさんの性格的に無理しそうであるため、看護サイドからも介護申請は行った方がいいということになりました。
病院には社会資源の相談や案内をしてくれる、地域連携室があります。
地域連携室へAさんの状況、サポート者の状況を話し、娘さんへ介護支援サービスの案内を行いました。
介護保険を申請することによって訪問介護、訪問看護や、デイサービスなど様々なサービスの利用が可能になります。
体調管理などを目的にAさんに合わせたサービスを導入し、独居のAさんが他者との関わりを持つことで、Aさんが異変に気づけなくても誰かが気づいてくれる可能性もあります。また、専門知識を持つスタッフが関わるため、娘さんも安心だとおっしゃっていました。
他にも自宅環境の調整なども助成費用サービスもあり、手すりなどの住宅改修も可能になります。Aさんの場合は現時点でADLは自立しており必要ありませんが、介護申請を行うことで必要な時に必要な情報を得て、サービスを受けることが出来ます。
4.退院支援をおこなうにあたって大切なこと
実際に日々の忙しい看護業務の中で、退院間近になって退院支援を行うことはとても大変です。十分に情報がないまま退院支援を行うと、患者さんやサポート者が安心して退院出来る環境に整えることが厳しくなってしまいます。
そのため、入院時から患者さんと積極的にコミュニケーションを取り、
・現在のADL(退院までに見込めるADL)
・どのような日常生活を送っていたか
・今回入院したきっかけはなにか
・自宅環境(何階建てか、階段や手すりの有無、寝具など)
・家族構成、サポート者の把握
・退院後に困りそうなこと(現時点で困っていること)
・介護申請の状況
などの情報を得て、チームや地域連携室のスタッフと共有しましょう。
ほとんどの総合病院では、カルテ上で退院支援に関する情報を記載するページがあるかと思います。その部分を意識して見るようにしましょう。
そうすることにより、早めに退院に向けて介入することができ、スムーズに安心して退院できる体制を整えることが出来ます。
すでに介護申請を行いサービスを利用している患者さんは、ケアマネジャーへケアプランを依頼したり、看護サマリーを依頼したり、病院外からの情報も得るようにしましょう。
新しくサービスを導入して退院する際には退院前カンファレンスの開催も重要になってきます。実際に入院中の患者さんの状況や、退院後も継続して観察してほしい項目を、次の方に引き継いでいかないとなりません。
患者さんとサポーター者が安心して生活・療養出来る環境を整えるために、患者さんを取りまく人皆での情報共有が大変重要になります。

まとめ

Aさんのように、家族には出来ていると主張し、家族も本人のみで不自由なく生活出来ていると認識している場合もあります。
しかし、本質はどうなのかを見極めるためには、しっかり患者さんから日常生活、生活状況を聞く事が重要です。
また、退院後も入院時と同じように、心疾患をコントロールしながら生活する事が必要なため、そのためには何を改善・工夫するべきか考えることが必要になります。
心疾患を持っている患者さんは心不全を繰り返し入院するケースも多いため、自宅での健康管理がかなり重要です。そのためにもしっかり患者さんを取り巻く家族やサポーター者、皆で話し合い、退院後も安心して生活出来る環境を整えることが必要です。

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