看護師という仕事は、患者さんに関わっていればいいだけの仕事ではありません。時にはパソコン入力や看護とはいえない仕事もちらほら。学生さんが実習に来たときには指導もしなくてはなりません。実習指導って、学生さんが緊張するだけではないですよね。どんなに経験を積んだとしても私たちも緊張してしまうことも少なくありません。私の経験が少しでも役に立てばいいなと思います
*実習指導ってなにするの
実習指導は、その名の通り、学生さんの臨地実習を「指導」します。看護技術を見守ったり、できていないことを指導したり、褒めてあげたりします。時には泣いてしまう、実習がストレスとなって体調を崩してしまう学生さんがいるなんてこともあります。
私たち、看護師も経験してきているはずの実習。緊張と不眠と、実習記録に追われたことを思い出します。今度は指導する立場の実習指導者になりました。指導ってなにすればいいのか、はじめての私たちには緊張もするし、何を教えたらいいかわからないなんてこともあります。
実習指導は私たちが普段行っている看護を学生さんたちも安全に、かつ患者さんにとっても安楽に行われる必要があります。学生・患者さん、双方が安心して安全・安楽にできるように支援するのが実習指導ではないでしょうか。つらかった実習よりも楽しかった実習の思い出の方がいいと思いませんか。
*患者さんをアセスメントだけじゃない、学生さんのこともアセスメントしてみよう
私たちが看護を提供するに、対象となる患者さんの疾患や家族・社会背景など、ありとあらゆることをアセスメントします。それはもう場数を踏んできた私たちなら、難しいことも少ないのではないのでしょうか。
では学生さんはどうでしょうか。学生さんたちが私たちと同じように看護ができるはずがありません。なにがわからないのか、わかっていないこともありますよね。学生さんは何を考えているのかな、緊張しているかな、昨日の夜は眠れたのかな、など行動計画を聞きながらささいな会話から学生さんのこともアセスメントしてみましょう。
*学生のことをアセスメントしたら
学生さんの喜びは、もちろん患者さんに看護技術を提供できた。いい反応が得られたなどだと思います。そして私たちも教えなきゃ、忙しい日々の中で大変だ。もしかしたら、面倒だなーなんて思っちゃうこともあるかもしれません。学生さんたちは実習指導者から、眠れた?疲れてない?休めている?などと声をかけられれば、うれしいです。学生さんとしても、今の状況をわかってもらえたと思って気持ちが楽になること間違いなしです。学生さんたちの気持ちがいい状態に整った時に実習指導者から指導されたことについては、落ち着いて考えることもできます。もしかしたら、「あの指導者さん、すごく優しい」なんて学生の間でも評判になっちゃうかもしれませんね。
*患者さんのところに一緒に行ってみましょう
今の学生さんたちは、実習指導の担当教員の先生がぴったり張り付いているということも少なくありません。担当教員の先生と協力して実習を指導していくことは必要です。ですが、できれば先生と分担するつもりで指導にあたるといいと思います。
なぜ学生さんと一緒に患者さんのところに行くのをおすすめするかというと、学生さんも行動計画発表時には実習指導者に見せてくれない表情をしていたり上手に患者さんとコミュニケーションとっていたり、看護師もしらないような患者さんの情報を得ていることがあります。それもうまくキャッチして学生さんにフィードバックしてあげると、さらに学生さんは実習指導者さんにわかってもらえたと思ってくれます。そして学生さんたちも私たち看護師と患者さんの関わり方を見て、学ぶことも多くあります。
*指導する側の表情や言動、行動も大切にしましょう
学生さんって本当に私たち、看護師の動きをよく見ています。「あの指導者さん、顔が怖い。眉間にしわのあとがついているよ。先輩看護師に、怒られていたよ。」なんてよく聞かれることです。慌ててでてしまう「やばい」などはまだ許容範囲かもしれませんが、言葉遣いが悪い看護師に指導されても学生さんたちは恐怖心が植わるばかりです。笑顔で、優しい言葉遣いなら、憧れられる看護師さんになれるかもしれませんね。
*可能なら、学生の実習記録にコメントを入れてあげてください
機会があればでもちろんいいのですが、学生さんが一生懸命まとめている記録、できれば目を通してコメントをいれてあげてください。もちろん間違っていることの指摘・指導は必要です。でも1つは必ず、褒めてあげてください。私たちの普段の生活でもそうだと思いますが、あまりにも否定されるといやな気持ちになってしまいますよね。コメントが難しかったら、はなまる◎をつけてあげるだけでも十分です。人から褒められるのっていくつになってもうれしいですよね。相手が年上の学生さんでも、看護師として先輩であればきちんと褒めてあげることが必要です。学生さんの自己肯定感があがります。
*私の経験から
私の関わった学生さんたちの中から印象的だった事例をご紹介します。
・グループのリーダーだった学生Aさん
グループをまとめようと一生懸命だったAさん、まとめようと声をかけているけれどグループのメンバーがついてこない。実習指導者の私から見ていても、ちょっと違和感のあるグループでした。実習指導をしている中で、○○さんなら相談してみたいと言って先生にも相談して、私に相談してきました。私自身もこんな相談はさすがに受けたことがなかったため、正直びっくりしました。
「グループのメンバーと合わなくて、グループ替えてほしいって先生に相談したけど無理って言われたんです。○○さんなら相談してみたいって思って、実習とは全然違うんですけど、相談させてほしいです。」とのことでした。話をよくよく聞いていると仲良しグループとはバラバラになり、よりによって自分の苦手なメンバーと同じグループになってしまった。だけど、長い実習期間が終わるまではグループも替えられないし、実習も来たくないくらいだけど、でもそれじゃ単位がとれないから仕方なく来ているけどつらいです。嫌いなメンバーだから、朝の挨拶もしていないとのことでした。
私は正直困ってしまいましたが、これも普段から実習指導する際に気をつけて対応していることの結果かなと思いAさんと向き合うことにしました。Aさんに行った指導としては、まず嫌いなメンバーだったとしても、人として挨拶をするのは当たり前で大切であること、自分がそういった態度で接していては相手もそういう態度になってしまうことを話しました。
Aさんについては担当教員の先生とも情報共有はさせていただきましたが、Aさん自身が強く私との相談を希望したことを知り、うれしくもなりました。時にはこういったびっくりするようなことも起きますが、信頼してもらったからではないかなと思います
これ以外にも、はじめての実習だった学生さんたちに、「はじめての実習はどうだった?ちゃんと眠れていた?」などとまめに声をかけるようにしていたところ、グループのほとんどのメンバーが泣いてしまったなんてこともありました。あとから担当教員の先生の先生に伺ったお話では、とても充実した実習になったという学生の最終レポートに記載があったそうです。そういった経験からも私は学生の実習に関わる時には、上記のことに気をつけながら接するようにしています。
まとめ
実習指導は指導する側もとても緊張してしまいますが、それ以上に学生さんたちも緊張しています。学生さんの状態をアセスメントして、ほぐしてあげることが私たち看護師の看護の力の見せ所ですね。学生さんたちは私たち看護師の言動や行動などもよく見ています。学生のお手本となれるよう、また学生さんたちから慕ってもらえるような看護師を目指して、実習指導していきましょう。
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