集中治療室と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。「モニターがたくさんついていてよくわからない」「患者の重症度が高いのでずっと緊張していそう」、などの声をよく聞きます。数値であふれている中、的確にアセスメントしていくにはどのようなことが必要なのか、そしてデータだけに頼らない看護師になるためにはどう考えていくといいのでしょうか。
●そもそもアセスメントとは?
ではそもそもアセスメントというのは一体何でしょうか?最近は医療業界だけでなく、ビジネスの世界でも使用されている言葉ですが、看護の世界でのアセスメントとは「看護師が収集した情報をもとに、患者の状態を客観的に判断する」という説明になります。実際に私達が集めた情報を統合して、今の患者は元気か、どこかおかしいのか、なぜそう思うのかということを具体的な情報をもとに、自分なりに判断していくことをアセスメントといいます。
●過去・現在のアセスメントから今後の状態を具体的に予測していく
このアセスメント面白いポイントは、現在のことだけでなく過去からの時系列的変化をもとにして、今後起こり得る未来のことも予測していくことができる点です。
まずは一番わかりやすい現在のアセスメントです。
朝、勤務開始時に自分の受け持ち患者に会いに行ったときのことを思い出してください。バイタルサイン、本人の顔色、食事量、夜はよく眠れたかなどいくつかの情報を集め、アセスメントをしていくと思います。
この時点で特に問題のある点がなければ「この患者に今すぐ対応しないといけない問題はない」というアセスメントができるかと思います。
ここで現在は問題なしというアセスメントができました。ここから更にアセスメントの幅を広げ、自身のアセスメントに根拠をもたせるためにも過去からの経過を見るとよりよいアセスメントができます。過去と比べてどうなのかという視点は大切な指標です。現在の状態で特筆すべき問題はないが、昨日に比べると少し活気がない気がする、少し血圧のベースが下がっている気がする、少し脈拍が早くなっている気がする、といったほんの些細な変化をアセスメントの情報に加えていくようにします。時系列的変化の情報が加わったことで、今後起こりうるイベントを予測しやすくなります。
「今後さらにバイタルサインが崩れる可能性がある」「もしかしたら術後出血が増えている兆しかもしれない」といったことを考えておくと自身の中での観察項目を増やし、より早く状態変化に気づくことができるようになります。
●集中治療室で観察することのできるパラメータ・データ
集中治療室では多くのパラメータ・データにあふれています。一般的に観察する項目に加えて、動脈血液ガスデータ、心電図、動脈血圧、SpO2、ETCO2、人工呼吸器の各データ、スワンガンツデータ・CVP、心内圧などのパラメータがあります。これらはすべて数値として表示されます。これらのパラメータ・データは私達のアセスメントを助けてくれる大変有効なものである反面、厄介なものでもあるのです。
血液ガスデータには20項目程度の数値が並び、上記のパラメータ・データは常に変化していきます。そしてこれらの数値に影響する薬剤も多く点滴で投与されていること患者の状態が変化しやすいことによって情報が多くなり、アセスメントがより複雑化していきます。
●自分が新人のときに印象に残っている事例
このように集中治療室ではアセスメントに使えるパラメータ・データが氾濫しているため、新人時代はこの数値に踊らされてしまうことも多かったです。事例を交えて見ていきましょう。
50代女性、心臓血管外科の開心術後患者、特に既往歴はなくもともとADLは
全自立の方でした。手術自体は順調に行き、術後1日目には人工呼吸器から離脱できていました。本人は疼痛もなく血圧はやや低めではありましたが医師からの指示範囲内であったので経過観察となっていました。
私は日勤の受け持ちだったのですが、かなりぐったりしているなという印象をもちました。ただ術後1日目、人工呼吸器から離脱した直後ということもありそこまで気に止めませんでした。その後も血圧はやや低めな値ではありましたが
それ以外のデータは特に問題がなかったため、午前中は特に介入することもなく過ぎていきました。
午後になって血圧がさらに低下し、カテコラミンや輸液負荷にも反応しなくなってきました。その後エコーの結果、心タンポナーデになってしまっており緊急で再開胸手術を行うことになりました。
この事例の中で新人がやってしまいがちなものが3つあります。
まずはその場の情報をアセスメントすることでいっぱいいっぱいになってしまっていることです。先程アセスメントは過去の状態から現在への変化を見ることがポイントということを書きましたが、このときの私は血圧や画面上に表示されている値が正常か否かという点でしかアセスメントをしておらず、経時的変化を見る視点が抜けてしまっていました。
今冷静に振り返ってみると、血液ガス上のデータでは貧血の値を示すヘモグロビン値が下がってきていたり、循環不全の際に上昇するラクテート値が上昇していたり、ドレーンの量が直近1時間で急激に減っていたりと、急変を予測させる
経時的変化が起きていました。ただこのときの私はそこに注目する事ができず、今の患者の状態を把握することで精一杯でした。これは実際に後輩の新人を見ていても陥りがちなことだなと感じています。新人のときはパラメータ・データの示す意味を理解することで大変かとは思いますが、正常値・異常値を理解しているだけでは正確なアセスメントはできないんだということを感じました。
次に、パラメータ・データの数値に目が行ってしまい患者の身体に触れることが極端に少なくなっていたことです。
先程集中治療室ではたくさんのパラメータ・データの数値を見ることができると言いましたが、このときの私は患者に実際に触れて見るということを忘れていました。フィジカルアセスメントというのは看護の基本ですが、このときの私は患者にほとんど触れておらず、身体的な変化に気づけないでいました。
もしこのときの少しでも触れていれば、末梢冷感や患者の顔色、血流の悪さなどを見ることができたのではと思っています。
実際にその後は意識して身体に触れるようにしているのですが、やはり急変前や状態が崩れるときなどは朝と違って抹消が冷たくなってきていることも多いです。
自分の手で触れて、聴いて、見たことによって得られたデータはとても有用なものであると感じています。
最後は情報をすべて一気に処理しようとしていたことです。多くのパラメータ・データの数値をすべて処理しようとすると確実に混乱し、今自分が何のためにこのデータを見ているのかが抜けてしまいます。
循環のアセスメントをしたいからこの数値を見る、呼吸状態のアセスメントをしたいからこの数値を見る、というように、数値それぞれをグループ化して考えるようにすることが重要です。この思考を繰り返していくと瞬時に患者全体のアセスメントを行うことができるようになります。一気に全体をアセスメントしようとするのではなく、部分ごとに分けながら考えていくと混乱しづらくなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。私自身の失敗談をもとに集中治療室で新人がやってしまいがちなアセスメントと、うまくするためのコツを書いてきました。
今回のまとめでは、
・アセスメントは現在の状態に加えて時系列変化も確認し、今後の予測につなげる
・目の前の数値の正常値・異常値を覚えるだけでなくその数値の変化が示す意味を考え、項目ごとに情報を精査していく
・数値だけにとらわれずに、実際に患者の身体に触れてフィジカルアセスメントを行っていくという点です。集中治療室は数値がたくさんあり、ついついそれに頼りがちになってしまいますが、基本はまず自分で見て、触って、聴いてみるというところです。数値は味方につければ頼もしい存在なので理解を深めながらアセスメント技術を向上させていってください。
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