訪室したら患者さんが震えていたことはありませんか?
震えるとても大切な身体所見になります。
それは「菌血症」の可能性があるからです。
私が働く病院の医師は「患者さんが震えてたらお前も震えろ」と教わってきた。と話してました。
それくらい菌血症には注意が必要という事です。
菌血症や血液培養、震えの分類、なぜ人は震えるのか、震えている時の対応方法などを紹介します。
菌血症とは?
菌血症とは、血流中に細菌が存在する状態の事です。
原因は様々ですが尿道留置カテーテルや中心静脈カテーテルが留置されてる人や膿瘍や感染創の外科的治療などが挙げられます。
患者さんの病名や既往歴、行ってる治療などから可能性を判断する様にしましょう。
菌血症自体は無症状の事も多いですが、敗血症や敗血症性ショックなどの重篤な状態になる事があります。
敗血症を防ぐためにも早めに血液培養などの検査を行い、抗生剤の投与を開始するなどの対応が必要になります。
また敗血症になってないかの判断も必要になります。「qSOFA」などを活用すると集中治療が必要かどうかのアセスメントに役立ちます。
血液培養は何セット必要?
みなさんの病院は血液培養は何セット取ってますか?
病院や医師によって考え方が違うかもしれません。
血液培養は最低でも「2セット」必要です。これはコンタミネーションの可能性があるためです。
俗にコンタミと呼ばれていますが、これは汚染や混入を意味する用語になります。
血液培養の検査中に本来なら患者さんの血液に存在しない細菌がボトルに混入し、増殖してしまう事です。
〈血液培養の陽性率と震えの関係〉
寒 気:感度87.5% 特異度51.6%
悪 寒:感度75.0% 特異度72.2%
悪寒戦慄:感度45.0% 特異度90.3%
血液培養の陽性率と震えの関係をみると
1セットだけでは感度が73.2%と低く、またコンタミかどうかの判断が困難になります。
2セット採取すると感度が93.9%と高くなります。コンタミかどうかの判断もしやすくなります。なので最低でも2セット以上は必要になります。
鼠径部ではコンタミ率が上がるので可能なら避ける様にしましょう。静脈と動脈では特に差はありません。
1セット目と2セット目で部位を変えて採血する事でコンタミかどうかの判断がしやすくなります。
しかし高齢者で血管が細く採血が困難な場合などは粘らずに早めに医師に依頼をしましょう。
大切なのは早期に治療を介入する事です。
震えには○種類ある!
みなさんは震えに何種類あると思いますか?
震えには3種類あります。
「寒気」「悪寒」「戦慄」の3つになります。
みなさんはこれら3つの違いを知ってますか?しっかりと分けて考える事が大切です。
1,寒気(Chilly sensation)
上着を1枚羽織る事でおさまる
2,悪寒(Chill)
厚手の毛布や布団を何枚かかぶる事でおさまる
3,戦慄(Shaking chill)
身体が震え、歯がガチガチする(止められない)
患者さんに「悪寒ありますか?」「戦慄ありましたか?」と聞いても分からないと思います。
そのため看護師がしっかりと理解しておいたほうが良いです。
基本的に患者さんの異常に最初に気付くのは基本的に看護師になります。
患者さんがどのように訴えどのように震えているか、震えは止められるのかどうかなどは大切な観察項目になります。
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この震えの分類は難しくないと思います。ぜひ覚えて臨床でアセスメントに活用してください。
そもそもなぜ人は「震える」のか?
みなさんは人がなぜ震えるのか考えた事はありますか?
どの様な時に震えるのか知っておくと観察ポイントや対応方法が見えてきます。
対応に困らない様にしっかりと理解しアセスメントに活かしましょう。
脳の視床下部に体温調節中枢があります。体温調節中枢では体温を一定に保つ様に働いてます。
この設定された体温の事を「セットポイント」と言います。通常であれば体内酵素が活性化する37℃前後に保たれます。
しかし、寒冷刺激や感染症や炎症などによってセットポイントを高くします。
例えば体温調節中枢が39℃にセットポイントを設定したとします。セットポイントが変更されたため、身体は39℃まで体温を上げようと反応します。
身体は熱を体外に逃がさない様に血管を収縮させ血流を減少させたり、立毛筋を収縮させる働きをします。
これらによって生じる異常な感覚のことを「悪寒」と言います。
また熱を産生するために骨格筋の収縮により震えを起こします。この震えが「戦慄」になります。
戦慄による震えは不随運動になるため自分で止める事は出来ません。
簡単にまとめると
普段は平熱になる様に体温調節されていますが、感染症などにより
体温を上昇させて細菌やウイルスと戦おうとするため高熱に体温を調節します。
体はその命令通りに血管収縮や身体を震えさせて体温を上昇させる。となります。
悪寒戦慄は危険なサイン!
最初に書いた様に悪寒戦慄は「菌血症」の可能性があり、場合によっては「敗血症」に移行する事もあるからです。
そのため早期に対応しないとショックなど重篤な状態になる危険があります。
特に心肺機能低下のある患者さんや高齢の患者さんでは注意が必要です。
震えるためにはたくさんのエネルギーが必要になります。筋肉による酸素消費量が大きくなり低酸素状態になる事があります。
また乳酸が産生され代謝性アシドーシスになる可能性や二酸化炭素の産生も増加するため呼吸性アシドーシスの可能性もあります。
悪化すると「混合性のアシドーシス」になる可能性があります。
悪寒戦慄中は血管収縮により抹消の冷感・チアノーゼが生じる可能性があります。
それに加えて震えもあるため血圧やSpO2測定が困難になってしまいます。
血圧は橈骨動脈は触れるかどうか、脈圧の強弱などを観察してください。
SpO2は数値だけで判断せずに呼吸状態を観察したり、医師に血液ガスを依頼したりして確認しましょう。
数値だけでなく身体初見から患者さんの状態をアセスメントする様にしましょう。
また悪寒戦慄時には交感神経が優位に働きます。
心拍数や血圧は上昇してしまいます。
また心筋虚血や心室性不整脈が起こってしまう危険もあります。
酸素消費量が多くなるため必要なら酸素投与を開始します。
急変に注意して意識レベルの確認など全身状態の観察しアセスメントするようにしましょう。
悪寒戦慄時は「冷やす?」「温める?」
温めるか冷やすかの判断もアセスメントが大切になります。
悪寒戦慄中でも体温が38℃なんて事はよくあります。
熱があるからとクーリングしようと思っていませんか?
実は悪寒戦慄中のクーリングはNGになります。
悪寒戦慄の時はセットポイントまで体温を上昇させます。
セットポイントが39℃なら39℃まで。セットポイントが40℃なら40℃になるまで身体は反応を続けます。
体温が上昇しきる前にクーリングを開始すると余計に悪寒戦慄を悪化させてしまいます。
そのためまずは体温が上がりきるまで保温をします。
体温が上がりきると抹消も温かくなり、身体が発汗を始めます。
患者さんの訴えも「寒い」から「暑い」に変わってきます。
そうしたら今度は保温を止めてクーリングを始めます。
しかしクーリングには解熱効果がありません。あくまで患者さんの苦痛緩和目的のために行います。
患者さんによっては冷やすのが嫌いという方もいるので無理に行う必要はありません。
その場合は室温や掛け物などで調整をしてあげてください。
まとめ
最後まで読んで頂きありがとうございます。
「震えてるから熱が出るのかもなー」と軽く考えるのは危険だと言う事がわかってもらえたでしょうか?
医療現場で働いていると悪寒戦慄に対応する機会があると思います。
なぜ震えてるのか、どの程度震えているのか菌血症や急変の可能性はあるかなど判断出来ると報告や対応がスムーズになります。
震えをみたら菌血症を意識して対応していきましょう。
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