回復期・慢性期の脳卒中患者におけるアセスメント、看護の方法―集団リハビリテーションの事例に基づいて―

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#1751 2022/03/11UP
回復期・慢性期の脳卒中患者におけるアセスメント、看護の方法―集団リハビリテーションの事例に基づいて―
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COVID-19が流行する前に集団リハビリテーションを行っていました。対象患者は全員脳卒中で入院している方で、四肢麻痺、見当識障害、失語など後遺症は様々でした。アセスメントに基づき患者と一緒にクリスマスの壁面を作ることによって、離床を促しや見当識を再獲得することに繋げることができたので、集団リハビリテーションについての事例に基づいて患者の離床の促し方や見当識を持つための看護について紹介します。

回復期・慢性期の脳卒中患者におけるアセスメント、看護の方法―集団リハビリテーションの事例に基づいて―

はじめに

COVID-19が流行する前に集団リハビリテーションを行っていました。対象患者は全員脳卒中で入院している方で、四肢麻痺、見当識障害、失語など後遺症は様々でした。アセスメントに基づき患者と一緒にクリスマスの壁面を作ることによって、離床を促しや見当識を再獲得することに繋げることができたので、集団リハビリテーションについての事例に基づいて患者の離床の促し方や見当識を持つための看護について紹介します。

まず脳卒中の患者に対して行ったリハビリテーションについて事例を紹介します。

休日にリハビリテーションの一環として、12月であったことからクリスマスの壁面を患者とともに作ることにしました。患者は脳卒中の回復期から慢性期で四肢麻痺、失語、見当識障害などさまざまな後遺症を有していました。各患者のアセスメントを行った結果、麻痺のある患者には離床を促すことと手を動かすこと、失語のある患者には言葉だけでなく他の表現方法があることを再認識してもらうこと、見当識障害のある患者には季節を感じることで見当識を再獲得してもらうことをそれぞれの目的とし、取り組んでもらうことにしました。
共通の製作方法として手形で雪の結晶を表現する方法と、ペンで雪だるまに顔を付けたり筆で雪が降っている様子を表現したりする方法を考えました。部屋持ち看護師に目的や方法について伝えた後、車椅子に移乗することのできる患者は部屋持ち看護師と協力し患者を車椅子に移乗させ、ナースステーションの前に集合してもらいました。車椅子に移乗することの難しい患者には看護師が部屋までペンや紙を持っていき参加してもらうことにしました。製作方法を伝えると失語がある患者は理解していないようでしたが、看護師が手伝い手形を押すように促すと方法を理解でき、始めは固い表情であったのが笑顔になり何度も押すようになりました。上肢に麻痺のある患者は、説明は理解できたもの思ったように手を動かせていないことに少し困惑していましたが、看護師が反対の手を使うように声かけをしたり一緒にペンを持ってサポートしたりすることで取り組むことができました。見当識障害のある患者は、他患者の絵に「きれい」と発言し興味を示していました。そして患者の一人は「楽しい一日をありがとう」とコメントを書き、その様子をみた家族も笑顔になっていました。さらに翌日には「あれ描いた。クリスマスパーティーをしよう。」と発言し記憶に残る出来事となっていました。

次にここで行ったアセスメントについてです。

脳卒中看護において、急性期の段階から覚醒を促していくことは、今後のADLの拡大に大きく影響していくといわれています。まずは覚醒をどう促していくかが重要です。覚醒を促すためには、刺激が必要です。
刺激を与える方法には声かけやタッチングなどの方法がありますが、筋肉を使う、呼吸を促すなど全身の回復を促すという点から離床するのが良い方法だと考えられます。急性期であれば血圧をはじめ全身状態がかなり不安定であるため離床するだけで精一杯になることもありますが、回復期・慢性期で状態が比較的安定しているのであれば、離床にさらなる目的も加えてリハビリテーションを行うとより効果的に、患者が積極的に取り組めると思います。

今回は集団でリハビリテーションを行ったため各患者をアセスメントしリハビリテーションの目的を見出しました。麻痺のある患者は、自分で移動することが困難なためベッド上で過ごすことが多く、また上肢に麻痺があると本を読むことテレビを自身でつけることなどが難しくなることが多いため活動性が低下し、何もすることがないとぼんやりと過ごしてしまうことが多くあります。
このことから、麻痺のある患者は離床を促すことと手を動かし活動性を高めることを目的としました。失語のある患者は、運動性では自身の言葉が他者に通じず、感覚性では他者の言葉が理解できないといった障害があります。そのようなことから他者を避けたりふさぎ込んだりする傾向にあります。そこで、自身、他者ともに言葉だけでなく他の表現方法があることを再認識してもらうことで、そのような傾向を軽減する目的でリハビリテーションに参加してもらうことにしました。
見当識障害のある患者は、日付や場所などを伝えられても、ただ聞くだけで認識するまでに至っていないと感じることが多くあります。見当識を再獲得することは、日常生活を送るうえで非常に重要となってきます。そこでまずは季節を認識するきっかけを作ることで見当識の再獲得に繋がるのではないかと考え取り組んでもらうことにしました。

以上のアセスメントから、状況理解が困難であっても麻痺があってもだれでも参加できるような方法をとり、見当識障害を有している患者が多いことから季節を意識できるような取り組み内容にしました。
また、患者を移乗や誘導する前に目的や内容について説明しておくことで、患者の協力が得られ車椅子への移乗や誘導をよりスムーズに行うことができます。今回もそうすることによって患者は拒否することなく車椅子に移乗することができました。さらに、患者が自らすすんで作業に取り組もうとする様子がみられ、「楽しい」という感情や他者への興味を引き出すことができました。壁面という目に見えるものにしたことによって、それを見た時に「クリスマスが近い」ということを認識し「楽しかった」という思い出を引き出すきっかけにもなりました。

アセスメントをする上で忘れてはいけないのが安全面についてです。患者の麻痺のレベルや理解度によって転倒転落や挿入物の事故抜去のリスクが変わるのはもちろんのこと、集団でリハビリテーションを行う場合は特に精神面においてもアセスメントは必要です。状況が理解できずパニックになる、口調が荒いといった患者がいると他患者や看護師がけがをする、暴言を受けるなどのトラブルになるリスクがあります。参加する患者を選ぶ上で精神面のアセスメントは欠かせないといえます。さらに、安全面においては患者だけでなく一緒に活動する看護師についてもアセスメントをするべきだと考えます。他看護師に協力を得るメリットとしては、安全な移乗や患者の転倒転落や挿入物の事故抜去のリスクを軽減に努めることができ、さらに患者のサポートができるところです。安全管理は経験がものを言うこともあると思います。1,2年目看護師よりも、どこに注意すべきかどうしたら安全に取り組めるのかというポイントは経験のある看護師の方が掴んでいます。
そのため集団リハビリテーションは看護師全体で計画し取り組む必要があります。

 

まとめ

脳卒中看護において、急性期の段階から覚醒を促していくことは、今後のADLの拡大に大きく影響していくといわれています。まずは覚醒をどう促していくかが重要です。急性期は血圧コントロールを見ながら離床を進めますが、回復期・慢性期で状態が比較的安定しているのであれば、離床にさらなる目的も加えて看護の一環としてリハビリテーションを行うとより効果的に、患者が積極的に取り組めると思います。看護をするにあたり、アセスメントを行い、内容や方法を決定することで患者に合ったものが実施できます。また、実施する際に看護師のアセスメントも必要です。このメンバーで、この人数で参加する患者を安全に看ることができるのかということも考えておくことが大切です。患者へよりよい看護を実施するためにアセスメントを行い、看護師同士で協力しあって実施していきましょう。

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