心不全療養指導士が教える心不全のアセスメントのポイント!!

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#1719 2022/02/08UP
心不全療養指導士が教える心不全のアセスメントのポイント!!
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現在100万人いる心不全患者は、2035年には132万人になると言われています。これからは心不全パンデミック時代に入ってきます。心不全は循環器病棟だけでは対応しきれなくなることも考えられます。今回は、事例を通して、アセスメントする上での注意点と、退院支援につなげるポイントを今回まとめました。

私は第3次救急病院の循環器内科・心臓血管外科、腎臓内科混合病棟に勤務する5年目の看護師です。
毎日心不全患者さんにかかわる中でアセスメントと退院支援の難しさを痛感することが多々ありました。心不全患者さんに個別性のあるアセスメントや退院支援ができるようになりたいと思い、第1回の日本循環器学会 心不全療養指導士にチャレンジし、合格することができました。そんな私の経験の中で、記憶に残っている1事例を皆さんと共有することで、少しでも心不全患者さんの看護、アセスメントとはどのようなものか分かっていただければと思い今回この記事を書きました。

日本心不全学会では、心不全とは「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義しています。心不全は今後高齢化の進行とともに、増加していくことが予想されています。
心不全の疾患の特徴として再発を繰り返しやすく、疾患管理を適切に行ってくことが再発予防につながるという特徴があります。疾患管理の中には毎日の血圧・体重測定、体重が以上に増加していないか確認すること、心不全症状である呼吸困難感、下肢の浮腫などの症状がないか確認することが含まれます。
しかし、心不全の患者さんは高齢であること、認知症を併発されていることも少なくありません。そのため、上記で示した疾患管理を行えないことも実際は少なくありません。これにより心不全患者さんにかかわる看護師を含めた医療スタッフはアセスメントや、退院後の支援を考える際に頭を悩ませることが多々あります。
心不全患者さんの退院後の支援として最も重要な点は再発を予防するということです。心不全の再発を予防する上で重要な点は3つです。1つ目は、体重が1日で2kg増加している兆候がないか?あれば心不全が再発している可能性が高いです。2つ目は、減塩と水分を取りすぎないようにすることです。水分の目安は約1L~1.5Lです。3つ目は、薬を飲み忘れなく毎日飲み続けることです。心不全患者さんは毎日少なくても5錠以上の薬を飲んでいることが多いです。これらに対して、看護師は患者さんの認知機能、病識、家族背景、生活状況、食生活、運動習慣を踏まえてアセスメントし介入していく必要があります。

今回私は80代後半女性、心不全3回目の再発で入院された患者さんA氏を担当しました。この方は認知症があり、一人暮らしでした。心不全の再発の原因としては3つ、認知症により内服ができないこと、再発しても受診をしないこと、水分制限がまもれず1日2Lの水分を摂取していることがありました。過去の入院時に、本人に心不全症状がでれば受診するように指導をしていましたが今回受診できず、家族がA氏の家を訪れた際に、呼吸困難感で動くこともできずにいるところを発見し救急車にて受診していました。今回はこの患者さん退院時期に近い時期についてのアセスメントの視点と具体的な介入補法について記載していきたいと思います。

〈ステップ1:情報の整理とその背景を探る〉

1)内服ができない理由とその背景:心不全症状のメインとして呼吸困難感、下肢の浮腫、体重増加があります。A氏は自分が心不全であることは忘れてしまっており、自分は健康体あると考えていました。そのため、健康だから毎日薬を飲む必要はないと理解されているという背景が見えてきました。
2)再発しても受診をしない理由とその背景:A氏は心不全症状を自覚しても「年のせい」「休んだらよくなるから」と、体の異常を自己解釈しまっていました。加えて、病院嫌いであったことも重なり、自宅で我慢してしまう傾向があるとわかりました。
3)水分制限ができないことの背景:A氏は以前、水分をほとんどとらず数回脱水症にて入院した経験がありました。その入院の際に、医師から「水分を多く飲んでくださいね」と言われたことを覚えており、今でも毎日2Lの水分を無理してでも必ず飲んでいる状況だということが分かりました。

〈ステップ2:アセスメントと今後の方針〉

正しい病気の知識を持っていただくために、医師・看護師・家族から複数回病状の説明をしました。説明を受けた1時間程度は自身が心不全であること、生活をするうえで注意しなければいけないことがあることを理解されていました。しかしその後は説明を受けたこと自体を忘れ、心不全であることは忘れてしまっている状況でした。そのため、薬を確実に毎日飲み続けること、心不全症状が出ているときに受診すること、水分の過剰摂取をやめることは難しいとアセスメントしました。そのうえで、退院後、社会サービスと家族のサポートを受けながら自宅での1人暮らしを続けてもらえるように支援していく方向になりました。

〈ステップ3:具体的な介入方法〉

1)家族へ依頼したこと:毎日確実に薬が飲めているか確認してもらうために1日1回A氏の家を訪問していただくように依頼しました。家族はA氏の家から5分程度の距離に住んでいたので快く引き受けてくださいました。
2)ケアマネジャーさんに依頼したこと:訪問看護師さんの導入を調整していただくように依頼しました。目的としては、毎日の心不全症状の有無など全身状態の確認と、家族が訪問できない際に内服確認を行ってただくということがありました。
3)主治医に依頼したこと:1日に3回も薬を飲むタイミングがあると本人の飲み忘れにもつながること、家族が確認する際の負担も増えると考えました。そこで、主治医に相談し、A氏の病状をアセスメントしたうえで薬を飲むタイミングを1日1回朝のみにまとめていただけないか相談しました。結果1日1回にまとめることができました。また、今後も水分の過剰摂取になる可能性が高いことに対しては、訪問看護師さんに体重が3日連続で1日に2kg以上増加していれば追加で薬(利尿剤)を飲ませていただくように依頼しました。

〈ステップ4:アセスメント・介入のポイント〉

1)薬について:心不全患者さんは多くの薬を1日に数回飲んでいることが少なくありません。看護師として、本人理解度、生活状況、家族状況をアセスメントして、主治医に薬の内服回数を減らすことを提案することも立派な看護です。
2)再発予防について:心不全患者さんは自身で身体症状の観察、薬の飲み間違いがないように注意すること、食生活の減塩への味付けの変更など多くのことを求められます。成人期の患者さんであれば、生活にうまく取り入れながら継続していくことが比較的簡単かもしれません。しかし、A氏のような高齢患者さんでは、本人に指導するだけでなく、ケアマネジャー、訪問看護師といった社会サービス、家族の協力を得ながら行ってくことが重要です。
3)精神的サポートについて:今回の症例では触れませんでしたが、精神的サポートも忘れてはいけません。実際に、心不全患者さんの場合生活指導がメインになってしまい、本人の精神状態まで視野を広げられないことがあります。しかし、心不全という慢性疾患をこれから抱えて生活していくこと、自身の生活様式を変更していく必要があるという精神的ストレスも相当大きなものだと思います。そのため、看護師は身体的な指導ばかりではなく、患者さんが指導を受けられる精神状況かどうかをアセスメントすることも重要です。

まとめ

今回の症例のように、高齢であり認知症がある心不全患者さんは珍しくありません。加えて、今後さらに増加していくことが予想されます。その際に、今回の事例を思い出していただくことで、少しでも患者さんの個別性を尊重した看護とアセスメントに繋がれば幸いです。
また、心不全患者さんとのかかわりとなった際に、つい指導的回がメインになりがちですが、その時に精神的なサポートも同じくらい重要であることも忘れないでいただきたいと思います。

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