看護師としてキャリアアップを考えた時に選択肢の1つとして上がってくるのが「認定看護師」です。 現場のスペシャリストと呼ばれる認定看護師とは、どのような看護師なのでしょうか? ここでは、認定看護師についてわかりやすく解説します。
認定看護師とは?
認定看護師(Certified Nurse , 略称:CN)とは、日本看護協会の認定看護師認定審査に合格し、19領域ある認定看護分野のいずれかにおいて、高いレベルの看護を実践できる看護師をいいます。一般の看護師の模範となる臨床業務を実践し、現場を引っ張っていく役割があります。
認定看護師の働き方や仕事内容
規模が比較的大きな病院での活躍の場が多く、一般的には認定看護分野に関連のある部署に配属されます。
病棟や一般外来、専門外来、病院の複数の部署やチームにまたがって活躍します。
医師や同僚の看護師から信頼され、仕事上の相談や重要な看護を任されることが多く、患者さんや家族に対して質の高い看護ケアを提供します。
認定看護師の目的とは?
認定看護師は、医療の高度化・専門化に伴い、より専門的な看護師や看護師をマネジメントする人材を育成しようという考えに基づいて作られた資格です。
日本看護協会の公式サイトでは、下記のように記されています。
認定看護師制度
認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。
(出典:日本看護協会)
認定看護師の3つの役割とは?
認定看護師は、特定の看護分野において以下の3つの役割を担います。
1.実践
個人、家族など集団に対して、熟練した看護技術を用いて高い水準の看護を実践
2.指導
看護実践を通して看護職に対して指導
3.相談
看護職に対するコンサルテーション
認定看護師には、「ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、高い水準の看護実践を提供する」といった活動が求められます。
認定看護師にはどんな種類がある?
認定看護師には19の「認定看護分野」があります。
各分野について詳しく見てみましょう。
分野:特徴ー登録者数(2021年3月)
・感染管理:医療関連感染の予防・管理、サーベイランスの実践、及び感染防止技術の導入ー3,006人
・がん放射線療法看護:放射線治療に伴う身体的・心理的・社会的アセスメントと副作用の予防や症状緩和ケアー356人
・がん薬物療法看護:化学療法薬の適正な取り扱いと適切な投与管理、症状緩和ケア
・緩和ケア:痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題のアセスメント、QOL向上のための症状マネジメントー2,577人
・クリティカルケア:急性かつ重篤な患者の重篤化回避と合併症予防に向けた全身管理や早期回復支援ー※
・呼吸器疾患看護:安定期、憎悪期、終末期の各期に応じた呼吸機能評価、呼吸管理ー342人(慢性呼吸器疾患看護)
・在宅ケア:生活の場におけるQOLの維持と向上、意思決定支援とQOLを高めるエンド・オブ・ライフケアー685人(訪問看護)
・手術看護:麻酔や手術侵襲による心身への影響を最小限にするための安全管理手術看護ー694人
・小児プライマリケア:重篤な状態にある児もしくは医療的ケア児に対する重症化予防、外来及び地域等のプライマリケアの場におけるトリアージ、家族の家庭看護力・育児力向上に向けたホームケア指導ー264人(小児救急看護)
・新生児集中ケア:ハイリスク新生児の急性期の全身管理や重篤化の予防、障害なき成育のための個別ケア、ハイリスク新生児と親への家族形成支援ー442人
心不全看護:心不全症状のモニタリングと評価、重症化予防、療養生活行動支援及び地域へつなぐための生活調整、症状緩和のためのマネジメントー476人(慢性心不全看護)
・腎不全看護:疾病の進展予防、合併症の早期発見と症状マネジメント、セルフケア支援ー291人(透析看護)
・生殖看護:生殖医療を受ける人々への必要な情報提供、及び自己決定の支援ー179人(不妊症看護)
・摂食嚥下障害看護:適切かつ安全な摂食嚥下訓練の選択と実施、評価ー1,042人
・糖尿病看護:血糖パターンマネジメント、病期に応じた透析予防、療養生活支援、予防的フットケアー932人
・乳がん看護:術後合併症予防及び緩和のための周手術期ケアと意思決定支援、ボディイメージの変容に対する心理・社会的問題に対する支援ー374人
・認知症看護:認知症の症状マネジメント及び生活・療養調整、病期に応じたコミュニケーション手段の提案と意思決定支援、家族への心理的・社会的支援ー1,893人
・脳卒中看護:重篤化回避のためのモニタリングとケア、早期離床と生活の再構築に向けた支援、在宅ケアでの生活を視野に入れたケアマネジメントと意思決定支援ー785人(脳卒中リハビリテーション看護)
・皮膚・排泄ケア:褥瘡のトータルマネジメント、管理困難なストーマや皮膚障害を伴うストーマケア、専門的な排泄管理とスキンケアー2,589人
(出典:日本看護協会)
※登録者数の記載がない認定看護分野は、2020年度から、特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師教育が開始され、認定看護分野も現行21分野→新制度では19分野に再編されているためとなります。
()内の名称は、再編以前の名称での登録者数となっています。
認定看護師になるためには?なる方法
認定看護師になるための方法としては看護師免許取得後、5年以上の実務研修(そのうち3年以上は認定看護分野の実務研修)があること、認定看護教育機関の修了(A過程:615時間、B過程:800時間+特定行為研修の実習時間)することが条件とされています。
上記の条件をクリアした上で、認定審査(筆記試験)を受け、認定看護師認定証の交付・登録となります。
認定看護師の資格は5年ごとに更新(看護実践と自己研鑽の実績について書類審査)しなければなりません。
認定看護師と専門看護師の違いは?
現場のプロと呼ばれる認定看護師と専門看護師の違いは何なのでしょうか?
違いについて詳しく見てみましょう。
名称:認定看護師(CN:Certified Nurse)
役割:実践・指導・相談
分野:19の認定看護分野
感染管理/がん放射線療法看護/がん薬物療法看護/緩和ケア/クリティカルケア/呼吸器疾患看護/在宅ケア/手術看護/小児プライマリケア/新生児集中ケア/心不全看護/腎不全看護/生殖看護/摂食嚥下障害看護/糖尿病看護/乳がん看護/認知症看護/脳卒中看護/皮膚・排泄ケア
注)
人数:21,971人(2021年3月現在)
経験:実務研修5年以上(そのうち3年以上は認定看護分野)
教育:認定看護師教育機関で所定のカリキュラムを修了(8カ月~1年)
費用:約100万円((おおよその目安)
認定審査合格率:約90%
名称:専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)
役割:実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 ※調整役や教育、研究も担うのが特徴
分野:13の専門看護分野
がん看護/精神看護/地域看護/老人看護/小児看護/母性看護/慢性疾患看護/急性・重症患者看護/感染症看護/家族支援/在宅看護/遺伝看護/災害看護
人数:2,744人(2021年3月現在)
経験:実務研修5年以上(そのうち3年以上は専門看護分野)
教育:看護系大学院の修士課程で所定の単位を取得(2年~)
費用:約200万円(おおよその目安)
認定審査合格率:約78%
注)認定看護師の制度は2020年度から、特定行為研修が組み込まれた新制度に移行し、従来の21分野から19分野へ再編されています。
従来の認定教育は2026年度に終了予定です。
認定看護師は現場での実践に重きが置かれています。
対象とする分野で熟練した看護技術や知識を生かした活躍が期待される資格、いわゆる「現場のプロ」であることがわかります。
それに対して専門看護師は、看護技術の実践や調整など現場での活動以外にも教育や研究などの役割も担い、対象とする分野全般において活躍が期待される資格、いわゆる「看護のプロ」であることがわかります。
認定看護師に向いている人の4つの特徴
1.専門看護分野で患者さんに寄り添った高い水準の医療を提供したい人
2.現場でより高いレベルの専門知識や技術を習得したい人
3.管理の仕事よりも「現場での実践」にこだわりたい人
4.看護学校に在籍している人、または卒業した人
まとめ
認定看護師になるための道のりは、専門看護師になるための道のりと比較すると時間・費用・労力の面からみても挑戦しやすいと考えられるでしょう。 認定看護師の資格取得後は同じ専門分野の人脈も増え、モチベーションが上がったり、医師や同僚の看護師から信頼され、仕事上の相談や重要な看護を任されることが多く、患者さんや家族に対して質の高い看護ケアを提供できます。 自分自身がどのような看護師になりたいのか、キャリアプランをしっかり考えた上で、目指したい認定看護分野の資格取得にぜひ、挑戦してみてくださいね。
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