健康な人でもよく見られる便秘。訪問看護を受けながら生活している利用者にもよく見られる症状の一つです。皆さんの周りでも便秘という言葉を聞くことはありませんか。そんな便秘に関する一つの事例のアセスメントについて紹介していきます。。
病棟でも訪問看護で在宅にいっても、よく見られる症状の一つに便秘があります。便秘というと、便が出ない、お腹が張る、苦しい…などの症状が思い浮かびますが、在宅であった事例では、下痢のような便が毎日、しかも数回出ているにも関わらず、ひどい便秘で消化管が拡張していると診断を受けた利用者です。
家族は、便が出ているから大丈夫だと思ったとのことでしたが、救急搬送されるほどのひどい腹痛の原因は便秘だったとは…。そんな事例を紹介していきます。 ・便秘の定義は難しい 便秘の定義は、実は一つではありません。
日本内科学会 、日本消化器病学会 、国際消化器病学会 でそれぞれ定められています。その定義を見てみると、少しずつ内容が異なっていることがわかります。何日でなければ便秘というわけでもなく、便が出ない状態で不快に感じること、また便が出てもそのあとに残便感が残ることなどが加味されているのです。 排便というのは、食生活や持病なども大きく影響します。
利用者に「便は出ましたか?」と聞いて「でた」と答えられても、それがどのくらいの量で、どんな性状であるのかということは、実物を見ないことにははっきりと情報を得ることは難しいです。 また私たちは訪問看護で、さまざまな利用者に接しますが、排便の量(少しや多いという感覚)や腹部膨満感や残便感というのも個人の感覚によるものなので、便秘の定義にあてはめて考えることは難しいと感じています。 よく遭遇する二つのケースがあります。
一つは利用者の自宅に行ったときに数日便が出ていなくて苦しいといわれること。認知症がある場合、便への執着が強いこともあります。また便秘になると不穏がひどくなるというケースも。その時には、指示があれば座薬を入れたり浣腸をすることもあります。
また適切な下剤の内服の調整をアドバイスをすることもあります。 反対に一週間排便がなくても全く症状がなく、本人もけろっとしていることもあります。そんな時には、便が直腸にあるかどうかを確認し、なければ連日下剤の使用を促す、あれば摘便や座薬、浣腸などで処置することもあります。
便秘というのはその利用者により感覚が全く異なるため、私たちもみんな同じようなケアができるわけではないのです。
・原因不明の腹痛で救急搬送!
利用者の中にこんな事例がありました。訪問看護ステーションに緊急訪問依頼の電話があり自宅に駆け付けたところ、腹痛で苦しんでいる利用者がいました。訪問前には一度嘔吐もあったそう。
家族に話を聞いてみると、今日は食欲がなかった、お腹は張っていないけれど全体が硬い。便は出ているということ。
利用者は冷や汗をかき、苦悶表情を浮かべていました。
すぐに主治医と連絡を取って、救急車で主治医の病院へ搬送することへ。 そこでのレントゲンから、強度の便秘による腹痛という診断が下ったのです。これまで適切に排泄されず積み重なった便で消化管は拡大し、ガスもたくさん貯留していました。しかし、家族からは便は出ていたとの情報。
私たちが訪問したときの問診でも、いつも便は出ているという利用者の言葉をそのままうのみにしていました。しかも、その便はいつも下痢っぽいと聞いていたのですが…。
・便は出ていたのに便秘とはどういうことか 便は出ていたのに、腸の中には多量の蓄積した便があるというのはどういうことだったのでしょうか。
これは、便が溜まっていたけれど、腸と便のわずかな隙間を通って便汁だけが排泄されている状態だったのです。そのため、水っぽい下痢便が少量ずつ頻回に出るという状態になっていたのです。 病院では適切な処置を施され便が多量に排泄されました。そして腹痛も軽減。利用者からはこんなにお腹がすっきりしていたことはないという言葉が聞かれました。
その後医師からは、下剤や座薬、浣腸等を処方され、今後適切な処置をするようにと指示を受けたのです。
訪問看護師にとって重要なアセスメント
私たちは、毎日訪問する利用者もいれば、週一回だけの人もいます。その時に、排便についても必ず聞くのですが、独居で認知症など排便がいつ出たかはっきり覚えていない利用者もいます。
そのため、問診だけでなく、聴診や触診もしっかり行いながらアセスメントしていくことの重要性を再度認識しましたね。 また食事や水分摂取量なども確認しますが、高齢者の在宅生活では決してバランスの良い食事がとれているわけではありません。
やはり買い物も不自由だし、近くのコンビニに行くだけと行動範囲が決まっている利用者も多いです。また家族やヘルパーなどが介入していない場合は、白米や菓子パンなどで食事を済ませており、野菜や食物繊維が圧倒的に不足していることがほとんどです。また全体的にみると水分摂取量も不足している高齢者も多いです。中には、水分はアルコールだけ!という利用者も。
そのため、私たちは便秘の利用者を目の前にした時には、本人の排便習慣や食生活、行動範囲など総合的に情報収集することが重要だと考えています。また家族やヘルパーの介入がある場合は、そこからも聴取して、全体的なアセスメントをすることが重要であると思っています。
便秘の食事改善のためにバランスを考えた配食サービスを導入することもあります。私たち訪問看護師は、利用者のために食事を作ったり、買い物をしたりということが出来ません。その分必要なサービスを見極め、連携を図って導入していくということは必要なケアの一つだと考えています。
便がない時には?
上記の事例の利用者の場合、医師から内服や座薬、浣腸などの処方はありましたが、それと同時に、腹部マッサージをして便を動かすこと、また腰をひねったり、腹圧をかけたりして腸の動きを促すことなどが日々の生活の中で重要であると認識しました。便が動いて直腸付近までこないことには、座薬や浣腸を使用しても出し切れませんから。
家族にもその方法を指導し、腹部のマッサージを行ってもらうようにしました。また私たちが訪問したときには、腹部マッサージをして腸内の便をしっかり動かすこと。そして直聴診をして便を確認出来たら摘便や座薬、浣腸を使用して便を出しきることを目標にしました。
始めのころには、排便があったらその後数日は下剤を中止してしまう傾向があり、また便秘になるということを数回繰り返しました。しかし、連日下剤を内服することが出来るようになると、内服の効果もあり、その後は継続して軟便が出るようになったのです。これまでは便汁だけが多かった利用者。そのため、自分は慢性的な下痢の体質だと思っていたようです。
しかしそれが改善された後は、これまでとは全く異なる便が出るようになり、腹部のスッキリ感も出てきたと自分でも腸内環境が変わってきたことを実感したようでした。 私たちは食べたら出る、出すということが自然ですし、それがなければ不快感を感じます。
しかし便秘も慢性的になると、あまり不快感を感じなくなることもあります。ただひどく便秘が続くときには、便が出るタイミングで、痛み、気分不快など毎回体調を崩す利用者もいましたし、便秘が続くと排便時に痔が悪化することから、排便への恐怖感を持つ人もいたのです。 そのような生活の基本ともなる排便行動と排便につながる生活行動を私たちはしっかりとアセスメントしていかなくてはいけません。またその人の排便習慣を知り、医師から処方された薬を使い、便秘改善に取り組む必要があると思っています。
まとめ
一つの事例を通して便秘について考えてみましたが、いかがでしたか?便秘が救急搬送されるほどひどい状態になることもあるのです。排便は個人の感覚もあり、とらえにくく評価がしづらい症状の一つです。私たちの生活に欠かせない排便行動を見直し、利用者にあったアセスメントをしてケアを提供していく事の重要性を参考にしてみてください。
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