訪問看護師として活動していると、高齢者の皮膚トラブルに遭遇することはよくあります。その中でもオムツかぶれと褥瘡のケースが多いです。ここでは事例を通して、オムツかぶれと褥瘡のアセスメントについて紹介していきたいと思います。
高齢者の看護では、皮膚トラブルに関する問題に多く遭遇します。それは、年齢に伴って肌に含まれる水分量が減少するため皮膚自体が薄くハリのない状態になっていること、また肌のバリア機能が低下して容易に外からの刺激を受けやすいということが大きな原因となります。
私は訪問看護師として在宅でさまざまなケアを行います。その中でよくある皮膚トラブルがオムツかぶれと褥瘡です。栄養状態の悪い高齢者の場合、改善には時間がかかることもありますが、高齢だから決して治らないというわけではなく、適切な処置を行うことで少しずつ改善していくことも可能です。
ただなかなか改善せず困ったケースも発生します。そんな皮膚トラブルに関する事例を紹介します。
・繰り返すオムツかぶれの原因は?
利用者の中には寝たきりで、オムツを使用している人はたくさんいます。最近ではオムツの性能がよくなり、オムツかぶれが継続するケースは少ないです。私たちが遭遇したケースは、介護力もあり定期的にオムツを交換しているにも関わらず、一度できてしまったオムツかぶれが全然改善しないケースでした。
家族が熱心に介護している利用者宅で特別な医療的な処置もなかったので、週1回の訪問で状態観察や保清を行っていました。ある時、オムツがあたっている陰部のところに発赤が出来たと連絡がありました。
次の訪問時確認をしてみると、陰部がただれている状態。そして陰部洗浄をすると、痛みがあるようでした。家族に聞いてみると、以前にもらった軟膏を塗布していたということ。しかし日に日に悪化を重ね、ここまでただれてしまったというのです。
話をよく聞いてみると、その軟膏というのはステロイド系でした。そしてオムツかぶれは汚れが付着したまま不潔にしておいたために発生した思っていたので、オムツ交換の度に陰部洗浄、そして軟膏塗布を繰り返していたのですね。
ここで考えるべきポイントは何でしょうか。一つは以前はステロイド系の軟膏を塗布して改善した発赤でしたが、今回はその軟膏の効果が見られないこと。もう一つは、家族が十分すぎる洗浄をして清潔を保持しようとしていたことです。
それらのことを念頭に置いて観察してみると、陰部にできたただれは真菌様であることが考えられました。ただこれらは経験上からのアセスメントであり、真菌によるものかどうかは医師の診察を受けなければ確定はできません。
ただ真菌様のオムツかぶれの場合、ステロイド系の軟膏を塗ると余計悪化することがよくあります。また清潔にしようと陰部洗浄を繰り返すことで、皮膚の水分が過剰になり湿潤環境を強めてしまいます。湿潤によって柔らかくなった皮膚は、真菌による皮膚トラブルを起こしやすく、また刺激を受けやすい状態になってしまうのです。
私たちは医師に報告しましたが、次の在宅診療まで2週間という期間がありました。その間真菌に対する軟膏はなくどうするか?在宅診療を早めてもらうか?という話にもなりましたが、まずは1週間自分たちで対処してそれでも改善しなければ、在宅診療の予定を早めてもらうことになりました。
私たちがオムツのトラブルに遭遇したとき、そのオムツかぶれが真菌様なのかそうではないのかをアセスメントします。皮膚の状態を見ただけでは当然判別することはできません。ただ経験をしていると、ただのオムツかぶれかまたは真菌によるものか発赤や発疹などの状態から、少し予測ができるようになります。また直近の排泄状況やオムツ交換の頻度などを家族や本人から聞き取り、アセスメントしていくことで予測することも可能となります。
・オムツかぶれにはどのように対処するのか
在宅生活が長く、これまで皮膚トラブルを何度か起こしてきた利用者の場合、比較的いろいろな種類の軟膏を持っています。ステロイド剤、抗真菌剤、炎症性皮膚疾患治療薬、保湿剤や被膜剤など。
オムツの摩擦や尿や便の付着によって発生するようなオムツかぶれでは、すぐにステロイド系を使用するわけではなく、非ストロイド系の抗炎症作用のある軟膏で対応することが多いです。それでも炎症反応が強い場合には、ステロイド系を使用するということもあるのです。
しかし、それでも改善しない、むしろ発赤が悪化してしまったという場合は、真菌を考慮しなくてはいけません。
・自宅でできる真菌に対するケア
自宅でできる真菌に対するケアはどんなものがあるでしょうか。
私たちが手軽に利用出来るものの一つとして、抗真菌成分の入った洗浄液を使用することがあげられます。最近では液体タイプも泡タイプのものもあります。毎日使用できるものですし、しかも抗真菌成分が入っているのでオムツかぶれがなかなか改善しない時には使ってみるのも一つの方法です。
またオムツ交換の度に陰部洗浄をする人は比較的多いです。しかし毎回石鹸を使用して洗浄すると、皮脂が失われ、肌を守るべきものがなくなってしまうのです。私たちは、ある程度皮脂があることによって外的要因から皮膚を守ることが出来ます。また皮脂は皮膚の乾燥を防ぐ働きもあるのです。洗浄をしすぎると皮膚が湿潤し、柔らかく傷つきやすい状態になり、ただれる状態を作ってしまうのです。
オムツの性能もよくなり、尿取りパットでは〇回用と吸収力が良いものもあり、私たちは使い勝手のよさで選択できるようになりました。介護者の中には、頻回なオムツ交換が大変だと、とても吸収力の良い尿取りパットを使用する人も少なくありません。
しかしいつまでも濡れっぱなしのオムツをつけていると、やはり排泄物の刺激もありオムツかぶれを引き起こしてしまいます。では、頻回にオムツ交換をするほうがよいのかというとそうでもありません。陰部のふき取りや交換の刺激で摩擦による皮膚刺激が多くなりますし、何より介護者も疲れてしまいますから。
一番良いのは、昼間と夜の使い分け。昼間は介護者も活動する時間なので、比較的短時間でオムツを交換することも可能ではないでしょうか。しかし夜は疲労回復も図りたいし、まとまった睡眠時間は確保したいところです。そこで夜は吸収力が良いものを使用して利用者も介護者もお互いに睡眠時間を十分にとるといった工夫も重要です。
・褥瘡が出来てしまったら?
家族から「お尻が赤い」と連絡を受けて訪問すると、オムツかぶれではなく、すでに持続する発赤である褥瘡が出来ていることもあります。この時には、被膜剤やクッション性のあるドレッシング材で保護するなど悪化しないように対処します。
褥瘡が出来る場所はお尻だけではありません。あるケースでは、急に足が痛くて歩けないと訴えがあり、家族が気が付いた時には踵に褥瘡が出来ていたということもあります。室内なら何とか歩くことが出来たので、日中は椅子に腰かけて過ごしているうちに、常に靴下を履いていたために誰も気付かず踵に褥瘡が出来てしまったのです。
褥瘡は決して寝たきりだからできるというわけではありません。また見えない所ほど注意して皮膚の観察を行うことが重要であることを家族には指導しています。
冬は厚着をするし、四肢の動きも緩慢である高齢者を介護する家族にとって、服を脱がせて皮膚をチェックするというのは簡単なことではありません。しかしはやり、一日一度は褥瘡好発部位を観察することも大切なのですね。
高齢者でも適切なケアを行っていけば、皮膚トラブルもどんどん改善していきます。そのため、出来てしまったらできるだけ早期に改善を目指すことが目標になります。また日々のケアからオムツかぶれや褥瘡の予防に努めていくということが重要なポイントです。
まとめ
いかがでしたか?オムツかぶれも褥瘡も予防と早期発見が重要です。それでも出来てしまったら?やはり適切なアセスメントを行い、在宅にある資源でケアしていく方法を模索していくしかありません。そこでは家族の協力や医師やケアマネ、多職種連携が必要になります。今後訪問看護師を目指す時には、ぜひ参考にしてみてください。
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