どこの病院でもよく現場で使われる用語、つまり業界用語というものがありますね。私は病棟でも訪問看護ステーションでも勤務した経験がありますが、二つを比較してみると、同じような意味だけど働く場所が違えば表現の仕方が違うなと思うことがあります。
もちろん医療用語、看護用語は共通しているのですが、働く場所によって少し異なる言葉を紹介していきます。
・患者と利用者
私が病棟で勤務している時には、入院中の方を患者と呼んでいました。病院や診療所、クリニックなど、どこでも病院に訪れる人のことは患者と呼ぶのは当たり前ですね。
しかし訪問看護では患者とは呼びません。では何と呼ぶのか?それは、利用者と呼ぶのです。
転職してすぐの時には、この患者という呼び方と利用者という呼び方に戸惑いを感じました。では患者と利用者という言葉ではどのように異なるのでしょうか。
例えば患者。これは、何らかの健康上の問題があり、治療を受ける人のことをいいます。医療側から表現される言葉であり、医療サービスを受ける人をこのようにいいます。
一方で利用者というのは、医療や看護、介護のサービスを受ける人を表す言葉のこと。訪問看護に限らず訪問介護を受ける人も利用者と呼びます。
それでも何となく呼び方に違和感があるという人は、漢字から判断するのが一番わかりやすいです。患者というのは、その字の通り、患う人のこと。つまり事故や病気など、何らかの健康上の問題を患っている人のことをいいます。反対に、利用者というのは、理由はなんであれ、そのサービスを利用している人のことをいいます。つまり病気ではなくても、薬の管理のため、健康管理のためにサービスを利用するという人も訪問看護にもいるので、全部ひっくるめて利用者と呼ぶのです。
・病棟ではステる、在宅では看取る
病棟で勤務しているとき、患者が亡くなった時にはステるという言葉をよく使いました。病棟に入院している患者はとても敏感です。同じ病棟で何かあればすぐに気が付く人も。患者の誰かが亡くなれば、もちろんすぐに気付かれますが、やはり他の入院患者の前で看護師同士、医師と看護師、看護師と助手で亡くなったという言葉を出すことがはばかられることもあるのです。
そんな時に便利な言葉がステるなのです。病院で働いた経験がある人なら誰もが知っている亡くなったという言葉。ちらっと聞こえただけで耳に入ってくるのは当然。なぜなら知っている言葉だから。しかしステるという言葉は、一般の人が使う言葉ではありません。知らない言葉なので、何かを話していたが、なんといっていたのかわからないという場合が多いのです。そのため病棟では、ステるという言葉を使用していました。
しかし在宅では、ステるという言葉を使用したことはありません。私たちは在宅看取りをするので、○○さんを看取ったと表現します。多くの在宅看取りの場では、家族が最期を見ており、呼吸が止まった報告を受けて初めて私たちが訪問することがほとんどです。そして医師に連絡をして、死亡確認してもらいます。必ずしも死の瞬間に立ち会っているわけではありませんが、最終的に自宅で看取ったということを意味するのです。
病棟ではステるという言葉を無意識に使用していましたが、訪問看護師になった今では、全く使用しない言葉であり、やはり病棟独特であったなと思う言葉ですね。
病院に患者が入院してきたとき、私たちは患者本人や家族から、これまでの生活歴、病歴、家族背景など詳しく事情を聞き取ります。連絡先となる家族は近くにいるのか、持病は何か、薬の内服はあるのか、アレルギーはあるかなど、今後の治療において重要となることを知るために、入院に至るまでの病歴を聞き取り記入するのです。この時に記入する用紙が病棟ではアナムネ用紙とよばれていました。病院で統一された用紙担っており、ここに記入していけば情報が網羅され、他のスタッフが見てもすぐに状況がわかるようになっていました。
一方訪問看護ではどうかというと、時には情報をケアマネなどと共有するので、利用者連絡票という用紙を使用することが多いです。反対に、私たちがケアマネから利用者連絡票を受け取ることもあります。アナムネ用紙と名前は違えど、書かれていることは同じようなものとなっています。
どちらも患者、利用者の情報が詰まった重要なものです。これを一つひとつきちんと埋めていくことで全体像が見えていきます。またアセスメントするには足りない情報が理解できるようになります。入院初期、サービス開始初期の段階ですべての内容を情報収集していくことは大変ですが、少しずつでも把握していくことが重要なポイントです。
・申し送りとミーティング
病棟では2交代や3交代といった交代制で勤務していますね。そのため、自分の勤務の次の人へ患者の状況を伝えなくてはいけません。患者の情報だけではなく、医師からの指示や検査の結果など、必要な情報を決められた引継ぎの時間内に簡潔に伝えなくてはいけません。この時間を申し送りといいます。
最近では、電子カルテが導入されて、各自で電子カルテから情報収集することも出来ることから、口頭での申し送りが徐々に廃止されているところもあります。しかし電子カルテが導入されていない病院、診療所やクリニックなどではまだまだ引継ぎのための申し送りが継続されているところも多いです。
一方で訪問看護で行われているのがミーティング。訪問看護では、待機勤務をする人もいますが、基本的にみんなが日勤勤務をしています。そのため、みんなが出勤をして伝達事項や状況報告をすることがほとんどです。これを訪問看護ステーションはミーティングと呼んでいます。もちろんステーションによっては申し送りと呼ぶこともあります。
申し送りという言葉は、普通の会社などで使用される言葉ではなく、医療現場独特の表現です。会社などでは引継ぎといった言葉を使用することが多いのではないでしょうか。訪問看護では次のシフトの人に伝えるわけではないという理由から、申し送りではなくミーティングという言葉を使用されることも多いのです。
・ラウンドと訪問
病棟で勤務している時には、定時の巡回の時には、「ラウンドに行ってきます」とナースステーションを出ていきました。病棟内を巡回するのは、それほど広い場所ではありませんね。容易に一周できるほどエリアで、一つ一つの病室、ベット、患者の様子を見て回るのです。
一方で、訪問看護をする私たちは、自転車や車など移動手段を使って訪問しなくてはいけません。場所によっては10キロ以上とかなり距離があることもあります。一旦訪問看護ステーションを出て、訪問が連続するときには、2、3時間、ステーションに帰ってくることはできません。そのため、「訪問に行ってきます」と声をかけてから出かけるのが一般的です。
ラウンドという響きは、様子を見てすぐに戻ってくるというイメージが出来ませんか。例えば、電話がかかってきたときの対応でも、病棟のラウンド中であれば病棟内にいるということなので「すぐ呼びますのでお待ちください」と返事が出来ます。
しかしながら、訪問に行っている時にはすぐに対応はできません。ましてや訪問途中で運転をしていることも多いので、電話対応することも簡単ではないのです。そんなとき「訪問に出ております」と答えるだけで、電話をかけてきた相手はすぐにはステーションに戻ってはこないなということを理解してくれるのです。
まとめ
ここまで病棟と訪問看護を比較してよく使用する言葉を書いてみました。医療保険が介入する病院で使用する言葉と介護保険が介入する在宅訪問の違いでもあるといえます。
もちろんこの言葉だけがすべてではありません。しかし、探してみるともっと異なる言葉がありそうですね。
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