診療看護師は、基本的には医師が担当する仕事の一部を担うことができるので、医師不足や医師不在の状況下で活躍が期待されています。キャリアプランとして診療看護師を選択肢に入れている方もいるのではないでしょうか。
そこで、このコラムでは診療看護師の概要や仕事内容、なる方法についてご紹介していきます。。 そのチャンスを有意義に使っていただけるように、ポイントをまとめました。
診療看護師となる方法と仕事内容とは
日本における診療看護師とは、国立病院機構によって認定された、医学的なスキルと知識を併せ持つ看護師の名称です。ナースプラクティショナー(Nurse Practitioner、NP、NP看護師)と呼ばれることもあり、一般的には診療看護師(NP)と表記されます。なお諸外国の看護職位Nurse Practitionerと区別するため、国立病院機構などではJapanese Nurse Practitioner(JNP)と呼称することもあります。
診療看護師になる方法としては国家資格は、必要ではないものの、一般の看護師よりも裁量の大きい働きができるために、高齢化に際して医療ニーズの急増が見込まれる日本において、活躍が期待されています。
診療看護師が、一般の看護師と異なる主なポイントは以下の3つです。
1.医師の作成した手順書による指示で「特定行為」を行うことができる
特定行為とは、診療の補助であり、厚生労働省によって定められた研修を修了した看護師が手順書に基づいて医師の指示を待たずに実施することのできる、21区分38行為のことです。特定行為の実施には「胸腔ドレーンの抜去」や「経口用気管チューブの位置調整」などが含まれており、総じて実践的な理解力・思考力・判断力と専門的な知識・技能が必要だとされています。
2.「相対的医行為」を的確に行える
医行為のうち、看護師が行うことができるものを相対的医行為、医師にしかできないものを絶対的医行為といいます。診療看護師は医学的な知識を学んでいるため、診察や検査結果の評価といった相対的医行為を積極的に行うことが可能です。そのため基本的には医師が行うような仕事を部分的に肩代わりすることができるので、医師の負担を軽減したり、医師が不在・多忙な場合に診療機能を維持させたりすることが期待されています。
3.治療と看護の両面から検査・処置・説明を行える
診療看護師は、看護と治療の両面で教育を受けているため、患者の症状に対して素早く的確な処置をすることができます。また治療内容を把握し、専門的な知識に基づいた説明をすることも可能です。
診療看護師の仕事内容
診療看護師は一般的な看護業務の他に、どのようなことをしているのでしょうか。以下に挙げるのは、診療看護師の仕事内容の一部です。
診察、手術助手などの相対的医行為
診療看護師が行う相対的医療行為は、診察や腹腔穿刺、気管内挿管、採血、検査データの評価など多岐に及びます。診療科によって仕事内容は異なるものの、共通して医師の仕事をサポートないし肩代わりするような働きが期待されていることが特徴的です。
医師と連携し各種プランを作成する
診療看護師は、医師と連携して、クリニカルパスやリハビリのスケジュールといった治療に関わる各種プランの作成・見直しに携わります。
医師と看護師の連携を中継する
現場の看護師にとって、医師よりも診療看護師のほうが声をかけやすい存在であることも多いでしょう。そのため診療看護師は、医師や他部門と看護師との連携を支える中継役としての機能も担っています。また医師が不在・多忙の際には、診療看護師が医師の判断を仰いで迅速に対応し、看護師の指示待ちの時間を短縮することが可能です。
看護スタッフの教育
診療看護師は、基本的に看護経験が豊富で、治療に関わる専門的な教育を受けています。それだけに現場の看護スタッフに、教育をする機会も多いようです。
診療看護師の給料
診療看護師は「診療看護師(NP)資格」が必要な職種です。資格の取得や更新には、診療看護師になるための努力とキャリアパスが要求されるので、診療看護師の資格を有するということは、高い看護スキルを有していることの客観的な証明材料に成り得るといえるでしょう。そのため診療看護師の資格を持っていれば、給料アップにつながったり手当がついたりする可能性があります。
診療看護師になるには
診療看護師になるには、特定の過程を経て、最終的に国立病院機構に「診療看護師/JNP」として認定される必要があります。以下に挙げるのは診療看護師になるための一般的な流れです。
【過程1】看護実務経験が5年以上あるのが条件
診療看護師になるには数年を要しますが、まずは看護実務経験が5年以上あることが条件です。
【過程2】大学院に2年在籍し卒業する
診療看護師(NP)を養成している日本NP教育大学院協議会が認定するNP教育課程の大学院に、2年間在籍します。大学院で学ぶのは医学や看護学、特定行為についてです。大学院で所定の単位を取得したのち、研究の審査や試験の合格を経て卒業し、修士(看護学)の学位を得ることによって、NP認定試験の受験資格を得ます。
【過程3】NP認定試験に合格する
日本NP教育大学院協議会のNP認定試験を受験し、合格します。
【過程4】国立病院機構に診療看護師として認定される
国立病院機構によって診療看護師に認定されます。なお同機構は診療看護師を「医師の指示の下で一定の範囲の診療行為を提供することのできる、 診療と看護の能力を併せ持つ看護師」と定めています。
特定看護師とはどう違う?
特定看護師とは、厚生労働省の定める「特定行為に係る看護師の研修制度」を修了した看護師を指します。なお特定看護師とは、資格名や正式名称ではありません。特定行為に係る看護師の研修制度の普及・活用にあたり、「特定行為研修を修了した看護師」を便宜上、略して呼んだものです。
特定看護師は、あらかじめ医師が作成した指示書をもとに、医師の指示を待たずに特定行為を実施することが出来ます。また特定看護師になるには、指定された研修機関で特定行為研修制度に基づく研修を受けることが必要です。
診療看護師と特定看護師は、「医師の作成した指示書によって医師の指示を待たずに特定行為をすることができる」点において類似しているため、しばしば混同されることもあります。しかし両者にはいくつか違いがあります。
民間資格「NP資格」の有無
前述の通り、特定看護師は資格名ではなく、特定行為研修を修了した看護師のことです。一方、診療看護師はNP資格を有しています。NP資格を得るには、一定の実務経験や大学院でのNP過程の履修、修士の保有などが必要になるため、NP資格の保有は高い看護スキルを有することの客観的な証明の材料になるといえるでしょう。
また、NP資格は数年ごとの更新が必要です。その資格更新に向けて、診療看護師は継続的に学習をしていかなければなりません。
必要な実務経験の違い
診療看護師の場合、大学院のNP教育課程に入るには、一般的に5年以上の実務経験を有することが条件に定められています。一方特定看護師になるための特定行為研修は、3~5年以上の実務経験を有することを想定してるものの、明確な条件は定められていません。
学ぶ場所の違い
診療看護師は、看護師が大学院に通って単位を取得し、卒業する必要があるので、修士(看護学)の学位を得ることができます。特定看護師の研修先は、大学や大学院、病院などさまざまで、必ずしも学位を得られるとは限りません。
実施できる特定行為の幅の違い
特定行為は、21区分38行為あります。
特定看護師の場合、この行為を全て学ぶことのできる研修機関は数箇所しかありません。基本的に研修は数区分の限定的なもので、現場で実施できる特定行為も、研修を受けた区分に制限されます。そのため特定行為を学ぶ研修期間を選ぶ際には、習得したい特定行為の区分を学べる研修機関を選ぶことが必要になるといえるでしょう。
一方、診療看護師は施設によって異なるものの基本的には、全ての特定行為、あるいは大半の特定行為が大学院卒業後に付与されます。
制度ができた時期
診療看護師の養成は、大分県立看護科学大学院修士課程で平成20年に始まりました。特定行為研修が施行されたのは平成27年です。つまり先に診療看護師の養成が始まり、後に看護師の裁量拡大を求める声を受けて法制化したものが、特定行為研修だということができるでしょう。なお、特定行為研修が法制化されて特定看護師が増えたことを受け、国立病院機構は、「診療看護師の存在意義は、特定行為の実施のみならずチーム医療効率化のキーパーソンに移行しつつある」としています。
アメリカのナースプラクティショナーとはどう違う?
アメリカでは、看護師の職位が細分化されています。その中でも、基本的な看護師資格にあたるRegistered Nurse(レジスタードナース、RN)の上位職種とされるのが、Nurse Practitioner(ナースプラクティショナー、NP)です。
NPに特徴的なのは、一般的な看護業務の他に、診断・処方・投薬といった一定レベルの診断や治療を行うことができる点です。医師が少ない地域では、NPがプライマリーケアの主体になっているケースもあり、州によってはNPが独立して診療所を開設することもできます。
NPの導入によって看護師の裁量を拡大する動きは、医師不足の解消や医療コストの削減といった面で注目を集めており、近年はオーストラリアやイギリス、カナダでもNP制度を取り入れています。日本においても医師不足や医療ニーズに対応するため、アメリカのNP制度の導入が検討されてきました。しかし日本の法律では、看護師は医師の指示を受けなければ処方や投薬といった医療行為を行うことができないために、アメリカのNPに該当する資格は日本にはありません。
アメリカのNPと日本の診療看護師(NP)は混同されがちですが、行える医療行為の幅も異なるうえ、互換性もありません。仮に日本で診療看護師(NP)の資格を取ったとしてもアメリカでそのまま用いることはできないでしょう。ただし、医師が不足している状況下において、看護師の裁量を拡大することで医療を維持させる、という目的においては共通している部分もあるといえます。また、そもそも日本の診療看護師(NP)の創設には「日本の制度下で、アメリカのNPに倣った」という背景があるため、言い換えれば診療看護師はアメリカのNP資格の日本版ということもできるでしょう。
なお日本看護協会は、高齢化に際し、在宅医療や医療ニーズの急増に備えて、アメリカのNPのような資格の創設が必要だとしています。
まとめ
いかがでしたしょうか?資格取得支援制度がある病院なら、学費や研修費用を病院が負担してくれたり、研修を受けている間の給料を保証してくれたりします。
また、そのような病院なら、資格取得後もその病院で診療看護師・特定看護師として活躍できる場を整えてくれていることが多いですのでこれを機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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