癌疑いのある患者と家族へのアセスメントについて

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#1653 2021/12/05UP
癌疑いのある患者と家族へのアセスメントについて
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癌の疑いのある女子高校生とその家族についてのアセスメント内容です。精神面を中心にアセスメントを考えました。精神面をアセスメントする上でどんな事が大切でどんな事に注意するべきかを記載してあります。またその不安についてどのようにアプローチしていくのかなど参考にして頂けたらと思います。

アセスメントにはまず情報が必要となります。
情報と一言で言ってもその患者の年齢、性別、身体、生活背景、家族構成、食事内容や宗教など内容は多岐にわたります。多くの場合が必要な情報を入院時のフォーマットを使用することで、得ることができるようになっています。しかし、精神面については一概に入院時、収集可能な情報とは言えません。また入院時と入院中で精神面が変化したり、そもそも患者との信頼関係を築かなければ精神面に関する情報を得られないケースもあります。今回はそんな精神面のアセスメントに焦点を当てて看護を行った事例について記載しました。

私がまだ看護師歴5年程度だった頃のエピソードです。

当時高校生の女性が入院しました。患者は高熱精査の目的で入院となり、点滴治療と血液検査等を行いました。入院時の医師の説明では症状や検査データから、癌の可能性も否定できないとのことでした。まだ未成年の年頃の女の子にとっては精神的ダメージの大きな話だったと推察されます。また、その家族も同様のことが言えました。そこでこの患者と家族にはメンタルフォローが重要であると考え、チームでどのように対応していくかカンファレンスしました。アセスメントする上でも患者や家族がどう思っているかや現在の生活状況、病状理解などの情報収集を行いました。
アセスメントするにあたって情報を集めることは非常に大事なタスクとなります。情報の不足は充分なアセスメントにはなりません。多くの情報を集めた上で患者にとってどの情報が重要であり、不要であるかをカンファレンスしていくことが大切になります。
この患者に対してのアセスメントでは以下の内容が情報として挙げられました。
・年齢
・病状についての理解度
・睡眠状況
・食事摂取状況
・病状
・日中の様子
・不安の訴えの有無
・家族の様子

年齢は高校生。
病状についての理解度に関しては上記に記載はしませんでしたが理解している様子でした。
睡眠状況については夜間ときどき携帯を操作している様子もありましたが0時には眠っているようでした。
食事摂取状況については5割以上摂取出来ていました。
病状については入院時より発熱が見られたが点滴投与により解熱傾向にありました。解熱により倦怠感や頭痛の訴えはありませんでした。
日中の様子ではほとんどベッドで過ごしていました。
不安の訴えについては本人が直接看護師に話すことはありませんでしたが、家族に話している様子がありました。
家族の様子については看護師に直接不安を訴える様子もありましたが話すと少し楽になると話していました。

以上が患者の情報となります。情報では出来るだけ起こった事象をまとめると、チームでも固定観念に囚われず色々な見方のアセスメントが可能になります。次はその情報を元に行ったアセスメント内容を記述します。

年齢については高校生とまだ若いことが言えます。
次に病状についての理解度です。こちらは前述した年齢が影響する場合もあります。患者は高校生であり大まかな病状について理解するには充分な年齢と言えます。一方で思い込みやweb検索などを利用した独学による偏った知識を得る事も可能です。これにより病状について謝った見方をする可能性も考えられるため注意が必要です。私はよく患者に「どんな話でしたか?」と病状説明後に内容の認識確認のため質問します。これで病状についてどのように捉えたのか確認できるかと思います。
次に睡眠状況と食事摂取状況です。自分は癌かも知れないとなれば不安はあると思います。その不安は不眠や食欲不振に影響を与えると考えられます。特に入院中はただでさせ活動量が減り、病室のベッドにある時間が長くなってしまうため考えを巡らせ不眠や食欲不振となってしまうことがあります。そのため睡眠状況と食事摂取状況は身体的なアセスメントだけでなくメンタル的なアセスメントにおいても重要な項目と言えます。
病状については今回患者は高熱により入院しています。高熱による倦怠感や疼痛、吐き気などの症状がないか診る必要があります。今回のケースに限らずどんな病気においてもその病気事態が不安の原因という場合が殆どです。そのため私たちはできる限り症状が緩和するよう医師に指示を仰いだり声をかけたりすることも大切と考えます。
日中の様子については前述したようにベッドで過ごす時間が長くなってしまうため日中の患者への声かけが重要になるのではないかと考えます。また一人の時の様子なども重要です。
不安の訴えの有無については実際に不安が本当にあるのか、あるとしたらどんなことが不安なのかが大切です。こちらが思っている「不安」とは全然違うことで悩んでいるケースもあります。そのため信頼関係を築きいつでも不安を打ち明けられる環境を私たちが作っていくことが必要となります。
最後に家族の様子についてです。家族は毎日お見舞いに来る家庭もあれば、家の事情でたまにしか来れない家庭もあります。そのため家族が来られた時は積極的に話しかけるように心がけています。特に今回のような若い娘さんの親御さんともなれば家族も不安が大きいと考えられました。
この他にも細かな情報があるとは思いますがここでは割愛させて頂きます。
今回上記の情報上記の様な内容をアセスメントしました。そして精神面のケアを中心に接することとしました。具体的なプランとしては下記のようにまとめました。
O-P:表情、言動、睡眠状況、食事摂取状況、バイタルサイン、倦怠感の有無、頭痛や疼痛の有無、嘔気の有無
T-P:声かけ(病状について毎回聞くのは逆に不安を煽ることになるため、患者からでも声をかけやすい雰囲気作りの為のもの)、タッチング(必要に応じて)、
E-P:家族への来棟の促し(負担にならない程度)
これらをプランとして看護を提供しました。メンタルケアについてはまだまだアセスメントしプランに繋げられるものがあると思います。参考にして頂けたら幸いです。
最後にこの事例のその後についてお話しします。結論から言うと患者の癌は否定され、患者も家族も喜んで笑顔で退院していきました。その際患者と家族から「もし癌だったら、ここでの治療にするのか転院した方がいいのかすごく悩みました。不安な時に話を聞いてもらえて本当に良かったです。ありがとうございました。」と言葉を頂きました。
今回は若年の患者の話でしたが病院では様々な患者が来られます。それは高齢だったり疎通が困難な人だったり痛みに苦しんでいたりその人によって不安の原因は様々です。
私達は日常業務をこなしていく中どうしても多忙を理由に病状を優先してみてしまいがちです。しかし「病は気から」という言葉があるように精神面のケアは時にどんな治療より患者を助けることもあります。それは真剣な悩み相談だったり些細な雑談だったり様々です。患者が話したいと思った時に多忙ゆえにその気持ちを蔑ろにするのではなく、そのサインを見逃さず患者と接することが出来ればと考えます。

まとめ

私達看護師は病気を中心にアセスメントしがちですが病気と不安は殆どセットのようなものです。出来る限りの情報を集めた中でアセスメントしてみて下さい。そしてアセスメントする上で患者の不安についてもぜひ一考してみてください。患者は自分の事を考えてくれていると感じることが出来ればそれは僅かでも安心感を提供する事に繋がると考えます。

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