看護師になって患者さんと関わる時に大切となるのは、アセスメントです。患者さんを理解するためにまず初めに行うアセスメントは、最初どのように行ったら良いかコツを掴むまでが大変ですよね。今回は、効率的に、アセスメントを行ってくための方法を紹介していきます。
◎情報収集が適切なアセスメントへの鍵を握っている
看護ケアの方向を統一して決めていくために、まず重要となるのが適切な情報収集です。アセスメントを行うためには、患者さんの全体像を把握する必要があります。
患者さんに関する情報には、以下の2つがあります。
①主観的情報(本人や家族が発言していること、目に見えて観察できること)
②客観的情報(バイタルサイン、検査結果といった数値化ができる情報)
患者さん1人に対して、たくさんの情報が溢れています。電子カルテや、実際に患者さんのところに足を運んで観察したことを、自分の中でまとめていくことが必要なスキルとしてあります。どのように必要な情報を集めて整理していけば良いのかを、以下に記載していきます。
◎アセスメントをするために
実際にどんな情報を得れば良いのかを詳しく見ていきましょう。
①患者の訴え、家族(キーパーソン)からの発言
②検査データ
③現在の状態、現病歴、既往歴
④服薬している薬(お薬手帳)
⑤家で生活していた時の様子、前に入院していた時の情報
最低限はこの情報は得られるようにしましょう。ここからかなり、患者さんの全体像が見えてきます。
それらの収集した情報を分析し、解決しなければならない課題を把握・客観的に評価することが、合併症や感染症などの初期症状を発見し、症状の進行を防ぐことにつながります。最初の観察と情報収集はとても重要です。
収集した情報の中から、今後どうなっていく必要があるのか、予測していくことが必要になります。
また、あらゆることを予測していくためには疾患の理解と、その患者さんに起きていることがどのようにその疾患に繋がるのかを理解することが必要になります。患者さんが持つ疾患をまずは調べて、理解することが大切です。
◎情報を整理するために、関連図に情報をまとめてみる
今ある情報をまとめるために、関連図を書いてみるのは、頭の中の整理にも繋がるので効果的です。
まず中心に患者さんを置きます。そこから患者さんの疾患や、主訴、症状など観察したことを書いていきます。そして次に予測できることを書いていきます。
そのように集めた情報がどう繋がって、どうなる可能性があるのかをまとめてみましょう。慣れていくと自然と頭の中で、関連図を組み立てていくことが出来るようになります。大変な作業にはなりますが、きれいに書こうとは思わず、まずは気楽に訓練だと思って、やってみて下さい。紙に記すことで、自分の考えていることや、足りない情報などが一目瞭然になります。
◎SOAPを使ったアセスメントの事例
ここで、アセスメントを行う時の例を見てみましょう。アセスメントをして評価をするためによく使われるのが、SOAPです。S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(アセスメント=分析・解釈のこと)、P(今後の計画・方向性)に分けて記載します。今回はこちらでアセスメントに結び付けていきます。
Aさんは、80歳代 男性の患者さんで入院経験がほとんどない方です。今回は発熱し、高齢のため念の為入院しました。今は解熱しもうすぐ退院を迎えますが、ほとんどをベッドの上で過ごしているようです。
S:本人の発言「最近あまり眠れません。慣れない入院生活のせいでしょうか。寝つきが悪くて困っています。」
家族からの発言「家では日中は起きて活動したりしていたんですけどね…。やはり入院生活で気が滅入ったのですかね。」
O:一日を通して、臥床している時間が多くなっている。日常生活動作は介助無しで行えているが、ふらつきがあることが多く見られている。夜間の巡視の際には、ほとんど眠れずに起きて、そわそわしている様子が見られる。
バイタルサイン測定時は、体温36.5°C、脈拍76/分、SPO2=97%。顔色は良好であるが、不安げな表情である。
A:睡眠不足による倦怠感があるためか、一日を通して臥床していることが多い。入院前と比べて、運動する機会が激減したことにより、筋力の低下が考えられる。そのため、転倒に注意が必要だと考えられる。1日の生活リズムが崩れており、夜間の睡眠の質が保たれていない可能性が考えられる。慣れない入院生活から、本人に不安な気持ちがあることが考えられる。
P:医師へ報告し、睡眠状態改善について相談する。場合によっては薬を服用してもらい、安定した睡眠を取れるように調整を行う。転倒転落を防ぐために、自分で出来ることであっても見守りや介助を行う。
日中の活動を増やして、適度な疲労状態を作り、夜間速やかな睡眠をとれるようにする。退院までに生活リズムを安定させるように、日中は起こす。前向きな声掛けを行い、本人を安心させられるようにしていく。
この時、S(主観的情報)と、O(客観的情報)からどんなことが今起きていて、今後どのようなことが起こるということが予測されるというアセスメントをしていることから、P(今後の方向)に繋がっていることが分かります。アセスメントは、今後の方針を決めるためにも、重要な判断材料となります。集めた情報から、もしかしたら~かもしれない、とあらゆる予測を立てて行くことが患者さんの状態の改善に繋がります。
またアセスメントは、「??が起きているから??」というように、主観的情報や客観的情報のエビデンスをもとに結果を記載します。そして語尾は「~だと考えられる」「~ようである」「~の可能性がある」という記述にします。S+O=Aとなり、これが結果としてPに繋がるというイメージです。急に突発的な情報がアセスメントに入ることはなく、繋がりを重視し、一貫性を持たせることが大切です。
よく使われているのがSOAPですが、フォーカスと言って、F(患者さんの問題点)、D(データ)、A(アセスメント)、R(レスポンス=DとAから考えられる結果)で記載することもあります。ですが、SOAPとさほど変わりません。違いとしては、Dに主観的情報と客観的情報が折り混ざっていると考えてください。基本的な考え方は同じです。もしかしたらフォーカスの方がすっきりとしていてまとめやすいという人もいるかもしれません。
◎アセスメントを行う上での注意点
十分なアセスメントをしないで患者さんの問題を決めてしまうことによって、適切な対応ができなくなってしまう可能性が高まります。そうなると、観察点が間違っていたり、情報が不足していたりすることに繋がり、適切な看護ケアを行えなくなってしまいます。患者さんを守る上でも、分かったつもりになってアセスメントが十分に行えていないことはとても危険なことです。
そうならないためには、観察とアセスメントをしっかりと行い、患者さんの小さな変化や異変を見逃さないことが大切です。少しづつでいいので、観察能力を高めて行けるように知識も経験も増やしていきましょう。
難しく考えずに、まずは気楽に頑張りましょう。
まとめ
いかがでしょうか。
アセスメントを難しく考えなくて大丈夫です。
まずは情報収集→そこから患者さんに起こるかもしれないことを予測していく→今後の方向性といった流れを掴めば、だんだんアセスメントを行うことにも慣れてくることでしょう。
数をこなせば、自然とアセスメント力が身についていきます。一緒に頑張って生きましょう。
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