慢性期と異なり、急性期は退院支援を行う機会が少ないです。
そのようななかで急性期における術後患者のための退院支援とは、実際に私が心臓血管外科病棟で勤務していた経験を踏まえて退院支援のためのアセスメントの方法をお伝えします。
急性期の病棟での勤務の場合、退院支援が必要な患者さんは慢性期と比較すると少ないため苦手と感じている看護師は多いのではないでしょうか。実際、私もその一人でした。様々な患者さんの退院支援をサポートさせていただいて、今ではなんとかやっていけるようになりました。今回は、そのような急性期における患者さんのための退院支援のアセスメントについて考えていきます。
・急性期における退院支援の必要性
手術を受けられる状態の患者さんであれば、本来なら手術に耐えうる予備能が備わっている人が対象であるはずです。たいていの人が歩いて入院してきて、術後は自宅に退院するのが一般的です。しかし、合併症などで、通常の経過から逸脱してしまった患者さんはそうできない場合があります。また、近年では手術を受ける患者さんも高齢化がすすんでおり、予備能が低い状態で手術に臨む患者さんも少なくありません。中には、もとのADLが寝たきり状態の患者さんもいました。そのような患者さんが自宅に帰れるようなADLではないからといって、いつまでも病院に入院している訳にもいきません。病院の経営としてもできないことですし、なにより患者さんのためにも適した治療や看護を受けられる病院や施設にいったほうがよいでしょう。そのため、急性期における患者さんだからこそ退院支援が必要だといえるのです。そこで、看護アセスメントが必要となってくるのです。
・アセスメントとは
アセスメントとは一般的に、患者の問題点を主観的情報と客観的情報から分析していくことです。主観的情報は患者さんの症状や言動、思いなどがあり、対応する人によってそれを聞き出せたりそうでなかったりします。客観的情報はバイタルサインや検査データなど数値化や視覚化できるものであり、それは誰がどう見ても変わらないものです。そしてそれらの情報を統合させ、患者さんの全身状態を捉えていく過程がアセスメントになります。
・いつからはじめたらよいのか。
急性期の場合、退院支援が必要か判断するのは大体、術後合併症が発症した後や、術後のADLの状態をみてからではないでしょうか。家に帰るのが厳しいなと思ってから実行に移すには、そこから家の状態など退院に向けた情報収集が始まるわけです。ですが、それではもう遅いのです。私も以前はそのように考えていたのですが、手術が必要な患者は次から次へとやってきますので、術後の患者さんのADL回復を待ってあげることは難しいです。では、いつからはじめたらよいのかということになりますが、入院した日から始める必要があります。入院した日から少なくとも手術を受ける日までには、情報収集をしておいて患者さんがどのような状態で手術から帰ってきても対応できるようにしておく必要があります。なぜかというと、術後の疼痛や倦怠感などの辛さに耐えながら患者さんが自宅の状況を話してくれるでしょうか。起き上がることや歩くことでさえままならないのですから、おそらく無理だと思います。家族に聞くにしても、患者さんの面会に来ている短時間のうちに、その面会時間を奪って聞く必要があります。また、忙しい中で自分たちのスケジュールも合わせる必要があります。術前に聞いておけば、焦ったりそのような事態に陥ることはありません。
・退院支援のアセスメントはなにをしたらよいか
前述のように、まずは術前までの少しでも元気なうちに、現在の社会資源の活用状況として身体障害者認定や介護認定、ケアマネジャーやヘルパーなどの有無、自宅の構造、同居している家族とそうではないが連絡をとっている家族がいるのか、近所付き合いはどうか、家事は誰がおこなっているのか、現時点での退院先の希望の情報収集を行います。ここまでしておけば、術後の状況に合わせて退院支援のアセスメントがしやすくなります。術後は回復状況に合わせて、患者さんと家族の希望を聞きます。例えば、ADL的に自宅退院が可能だとしても、独居であったり、家事をする中心が患者さん本人であったり、生活を送るのが難しい場合があります。その場合、経済状況や宅配サービス、地域の利用できるサービスなどが活用できるか、本人の受け入れも可能か等をアセスメントします。次に、ADLが自宅退院では厳しい場合では、リハビリ病院や回復期の病院、施設などを検討して情報提供しておく必要があります。経済状況やADLの状態、自宅からの距離などを考えておくとよいでしょう。その際に、本当は家に帰りたい、もしくは帰してあげたい、など患者さんと家族の思いがあるかもしれません。では、なんとかして自宅へ退院できるように、に社会資源を活用したり自宅改修をしたりと調整していく必要があります。ここでは、患者さん・家族の気持ちを汲み取って、現在置かれている状況をつなげていくことがアセスメントとして重要となってきます。
・多職種との連携
退院支援における看護師の役割のうちの一つになるのが、多職種の連携の橋渡しになります。退院支援には、本人・家族の意思のもとで、退院先を決定していきます。多職種は、各々の職種が得意とする視点がありますから、現在の病状はどうなのか、ADLやリハビリの進み具合はどの程度か、本人・家族の希望はどうかなど多くの情報や考えがあります。そして、それをすり合わせていく必要があります。最も患者さんの身近にいて、いつでも必ず病棟にいるのは看護師ですから、医師やOT・PT・STなどの意見を常に聞くようにし、お互いにどこを目標としていくのか確認しあうことが大切な役割となります。
・アセスメントをするうえで大切なこと
ここまでお伝えしてきた中で、ここからが一番重要になります。それは、看護師の特性をアセスメントに活かすことです。看護師は他の職種と比べ、何に優れているのかというと最も患者さん・家族を理解していることです。普段のかかわりのなかで、どのような性格なのか、どのような歴史を歩んできたのか、どのような表情や症状なのかなどたくさんの情報を持っています。患者さんによっては、医師や家族には言えないことでも看護師には言えることが多くあります。それは不安や弱みであったり、痛みであったり多岐にわたります。なぜ看護師には言えるのかというと、入院中の患者さんにとって看護師が一番身近で毎日顔を合わせる唯一の存在だからではないでしょうか。。医師は疾患のことに目が行きがちであり、生理機能的なことを中心としたアセスメントになります。それが理学療法士であれば、筋力や肺活量など運動機能中心のアセスメントになります。看護師であれば、患者さんの生活を中心にしたアセスメントになります。退院した先になにがあるかといわれれば、日常生活が続いていくわけです。そこでよりよい生活を送ってもらうためにも、看護師しかできないアセスメントは多く、重要であるのです。
まとめ
急性期を脱した患者さんをいつまでも居させてしまうことは、適切なリハビリが行えなかったり、精神的にも入院に疲れてしまうといったデメリットが多く存在します。患者さんを適切な場所へ転院・退院調整することで、患者さん・家族にとっても安心してその後の生活を充実させて送れることになります。そのために、退院支援が必要であり、そのための看護アセスメント能力を日々磨き続けていく必要があるのです。
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