ケアマネジメントのプロセスは介護職の介護過程だけでなく、他職種の支援過程やインフォーマルサービスを含む総合的な支援プロセスです。ですから、ケアマネジメントのプロセスや施設サービス計画書(ケアプラン)等における介護過程の位置づけ及び役割を理解して実践することが重要です。
アセスメントを受けての「計画立案」という役割が組織の中で機能していれば、介護過程の「計画立案」が実践されていると考えられます。ケアマネジメントのプロセスで作成される施設サービス計画書(ケアプラン)等と連動した、介護過程における「計画立案」は、その大きな流れと連動して、いかに機能するか、そのための仕組みを組織で定着させられるかが大切なポイントです。事例報告の中ではそのヒントが数多く掲載されています。
介護福祉士養成課程における教育内容の見直しの中では、介護と医療連携の実践力、認知症ケアの実践力、地域生活支援の実践力、チームマネジメント力と並んで介護過程の実践力が求められています。
さて、ここまで見てきたことからもわかるとおり、これらの実践力はどれも介護過程の実践に紐づいてくると言えるのではないでしょうか。利用者本人が望む自立した日常生活を支援するためには、多職種と協働し、認知症の人への支援や地域生活支援をチームで実践していかなければなりません。この時、根拠に基づいた介護実践でなければ、介護チームメンバーがバラバラな介護を行い、多職種との連携もできなくなってしまいます。介護過程は利用者が願う自立した日常生活を送るという目的を成就するために、根拠に基づいて行われる一連の介護実践の進め方であり、考え方の枠組みです。介護過程の実践は結果として、社会が求める介護実践につながるのです。
一方で、介護現場には多くの負荷がかかり、アセスメントにおける人手不足や教育の課題などがいくつも山積しています。それは、事例報告施設も例外ではありませんでしたしかし、介護過程の実践に取り組み、書式を導入したり、会議体や教育システムを構築していくことで、少しずつ形にしていきました。そこから得られた成果は、個別ケア実践、介護職のキャリアアップシステムの構築、チームビルディング、離職率の低下、ケアの質の向上と多岐に渡ります。時代と社会に求められる介護実践の要に介護過程があります。の取り組みの先には多くの成果があり、また課題の解消にもつながります。今の組織、現場をより良いものに変えていく可能性が介護過程の実践にはあります。個別介護計画は、施設サービス計画書(ケアプラン)等に記載された、利用者様の総合的な支援の方針、生活課題(または生活ニーズ)、目標などを踏まえ、介護職が行う具体的な介護方法や優先順位、頻度を示した計画書です。福祉施設・事業所により、個別ケア計画、個別援助
看護計画、介護計画等の呼称があります。
看護保険施設における個別介護計画は法定義務でありません。一方で障害者支援施設では個別支援計画は法定義務となっており、制度上の違いがあります。事例を見てみますと、個別介護計画がある事例に加え、個別介護計画はなくとも施設サービス計画書(ケアプラン)と一体的に運用されたり、独自の書式が個別介護計画に相当したりと、利用者のより良い個別支援が行えるよう様々な工夫がされていることがうかがえます。
個別化んgp計画またはこれに相当する書式があることで、利用者様へどのような介護を行うかが「共有化」され、看護職の勤務年数やアセスメント経験に左右されず、一定のサービスを実施することが可能となります。高齢・障害領域を問わず、どの看護施設・事業所でも同様のお悩みを抱えているようです。人材育成は、一朝一夕にできるものではありません。個別介護計画は介護職の専門性を発揮できる部分として位置づけ、さらに教育教材としても用いるなど人材育成の効果も併せた仕組みを構築している事例がうかがえます。
アセスメントシートは、何を使っても同じではないですか?という質問については、事例をみるとわかるように、既に開発されている書式を利用していたり、独自に作成 ・変更していたりなど、様々な書式が使用されています。施設サービス計画書のように国が指定する標準書式のようなものはありません。どのようなケアを行いたいかを施設によって決ていいものです。事例では、既に開発されている書式をもとに、オリジナルの項目などを設け、独自の個別介護計画を作成しているところがあります。書式を埋めるだけの作業では負担になりますね。介護過程の目的は各書式の空欄を埋めることではなく、PDCAサイクルとして実践し続けることにあります。事例報告施設は書式の工夫があることはもちろん、それらを運用するための仕組みが一緒に機能しています。施設で取り組む際は、それぞれの書式をPDCAサイクルの中で何のために用いるのかを明確に位置づけることが要です。埋めて終わりではなく、運用設計の構築を目指すために事例の仕組みを参考にしてみてください。まずは、施設の中で介護過程の実践を導入していくことを検討するための委員会を開催してみてはいかがでしょう。既存の委員会と紐づけても良いかもしれません。現場の中核人材を巻き込むこともポイントです。次に委員会の中で、自分たちの施設の現状と課題を分析、目標の設定をしてみましょう。分析結果と目指す目標に応じて使いやすい書式や仕組みを検討し、負担のない範囲から少しずつ導入してはいかがでしょうか。重要なのは、一気に進めようと思わないことです。どの事例報告施設も中長期的に現場のオペレーションを変更していきました。
少しずつ、現状に合わせながらできることに取り組む形で大丈夫です。事例報告施設の書式には、現状にあまり負荷をかけずに始められるものもあります。一つの書式の導入でも、職員の意識が利用者に向くきっかけになることは本調査研究の効果検証でも明らかになっています。介護過程の実践は中長期的に定着を目指すことが重要です。組織の仕組みの変更やICTの導入なども関わってくる可能性があるので、委員会など現場や管理層などが一緒に推進していく場が必要かもしれません。
事例報告施設からは、離職率の低下や教育効果、仕事の効率化が報告されていますので、中長期的には大きなメリットを得られると思われます。障害分野は、サービス管理責任者による個別支援計画の作成が義務づけられていることが介護保険施設と最も違う点です。ただ、義務化されているが故に形式的になっているという課題もあります。加えて、利用者の年代が幅広く、地域生活や利用者の高齢化、若い利用者にとっては親という家族の思い、十分とは言えない看取り体制、強度行動障害等の支援において、より細やかな支援サイクルが求められるなどの特徴があります。しかし近年、多様な介護人材が従事する傾向は介護保険施設と同じです。そうした意味で、介護過程によって、ケアの質の担保や個別ケアを推進していくことは分野を問わず求められています。
・狙い
●施設サービス計画書の目標と介護目標や達成基準を横並びにすることにより、支援の総合的方向性を意識しつつ、介護職としての生活支援を関連づけて行えるようになる
●視覚的にわかりやすい補足資料により、ケアの細かい点まで統一することができるようになり、新人や外国人介護職の理解促進にも役立つ。施設サービス計画書を意識した書式にして、更に個別介護計画を日々の支援の軸に据えているため、常にケアマネジメントと連動した介護過程の展開になるよう構造的に設計している。日常的な支援の記録、評価の記録はSOAP方式により、項目ごとに分類 ・ 整理し、評価時の目標の達成状況や計画の修正、変更に際しての根拠となるようにしている。
まとめ
日々の支援の中で職員個々の気づきをいかすために『ケアカンファレンスノート』を設置。普段から目につくような環境を作り、気づきの共有機会を増やし、ケースカンファレンス時の着眼点や参画意識の向上に役立てている。主体的に看護に取り組み、また複数人で対話する機会を増やすことで、結果的に職場風土やモチベーションの向上につながっている。実践の中で、「変更事項欄」を更新することで、ケアチームにおけるケアの標準化につなげている。実践の中で気づいた個別看護計画の変更の必要性を○×で評価しスピーディーにチーム内で共有している。
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