私たち看護師は、受け持ち患者の状態変化をリーダーナースや医師へ報告することが頻繁にあります。
患者にとって不利益を被ることもあり得ます。SBARは、医療安全対策として多職種が長年の研究結果をもとに作成した『TeamSTEPPS』というプログラムの中の一つを切り取ったものです。当然「医療安全」にも関与していることであり、患者の安全・安楽を提供する看護師にとっては、欠かせないスキルと言えます。
医師へ報告する前に、本当に報告が必要なのか?を考える。患者の状態は、日々少しずつ変化している可能性があります。独りよがりの「おかしい」ではなく、他の看護師の観察した情報や最近の経過、医師の治療方針など、あらかじめ再確認しておきます。
実際に患者を看ている看護師の考えたことをアセスメントと言い、実例としてのアセスメントは
情報やデータ、患者背景を伝えた後、看護師が「こうではないか」と考えたことを伝えます。実際に患者の状況を見ているわけですから、より詳しくアセスメントできるはずですね。 参考例としては、以下のように伝えます。
「心筋梗塞の発作を起こしているようです」
また、何が起こっているのか分からない場合でも、以下のように伝えることでも可能です。
「患者の状態は徐々に悪くなっています」
「問題は何か分かりませんが、患者の状態は悪化しています」
特に、状態が悪くなっている場合や急変している場合は、その重大性を伝えられることが必要です。次に伝えることは、情報やデータ、気になること以外の情報について伝えます。
「四肢がダラリとしていて、はっきり話せません」
「皮膚は暖かく 湿潤しています」
「酸素投与は5Lフェイスマスクで行っています」
また、夜間休日など、担当以外の医師へ報告する場合、以下のような情報も伝えます。
「この患者は、慢性呼吸不全で在宅酸素使用中です」
「慢性腎不全で人工透析を行っている患者です」大事なことは、『起こっている状況 Situation(S)』を一番最初に伝えることです。
起こっていることとは、「血圧低下」「頻脈になっている」ということです。
私たちがよくやりがちなミスは、2番目に伝えましょうとされている『背景 Background(B)』をダラダラと伝えてしまうことです。
この『背景 Background(B)』を長々と話している間に、聞き手は何が問題なのか分かりにくくなります。
相手の顔の見えない電話の場合は、特に聞き手を混乱させてしまいがちです。
参考例としては、以下のように伝えます。
「○○さんが呼吸困難になっているので報告します」
また、医師の指示でSpO2 94%以下コールという指示があった場合は、以下のように伝えます。
「○○さんのSpO2 94%以下でコールの指示があり、現在SpO2 91%が持続しています」
このように、最初に何が起こっているのかを伝えることで、聞き手は「何を伝えられているのか」ということが分かりやすくなります。
しかし、これだけでは事実が分かりにくいので、収集した情報やデータつまり根拠、もしくは自分が気になる事を伝えます。
「バイタルサインは、血圧・・・脈拍・・・尿量・・」
「SpO2が急激に低下しています」
「脈拍が急激に上昇しています」
「突然、胸痛を訴えだしました」最後に、看護師が必要だと考えることを提案します。
私たち看護師は、患者のそばにいるわけですから、医師が到着するまでにできることが沢山あります。
参考例としては、以下のように伝えます。
「この患者をリカバリールームへ移動しておきます」
「何か検査の準備をしておきますか? 採血?画像?心電図?」
また、看護師がコールしても、医師が診察に来てくれないというジレンマも耳にします。
こちらの報告の方法を変えると同時に、何をして欲しいのか以下のように率直に伝えてください。
「すぐに患者を診にいらしてくださいませんか」
加えて、医師の診察や処置が終了した後は、以下のことを確認します。
「バイタルサインは、今は4時間ごとですが1時間ごとの観察として良いでしょうか?」
「次の状態変化時のDrコールは、どの状態としますか? 今は血圧80mmHg以下コールの指示ですが、現状からみて100mmHg以下コールとしてよろしいでしょうか?」
と、こうなります。フィジカルアセスメントの重要性。フィジカルアセスメントには、その情報を収集するためのスキル(基礎看護技術)とその情報を評価する能力(アセスメント能力)、さらに「おかしい」と気付いた後の対処(看護技術や蘇生技術)、報告するスキル(今回紹介したSBARが一例)などがあります。
どれか一つができても、またはどれか一つが欠けても患者にとっての安全・安楽は障害されてしまいます。
私たちは常に能力やスキルを研鑽し、看護師としての責務を担えるようにしなければなりませんね。
●状況(Situation)
●背景(Background)
●アセスメント(Assessment)
●提案(Recommendation)
※新人看護師でも使えるように、または焦ってしまって非効果的な報告とならないようにということから、SBARの前に「報告する前に」という準備段階があるので、正確には5つの要素で構成されています。
アメリカのワシントンDC州にあります、プロビデンス病院の看護師の教育方法として用いられている『SBAR(エスバー)』という手法です。
この『SBAR』は、医療安全対策として多職種が長年の研究結果をもとに作成した『TeamSTEPPS』というプログラムの中の一つを切り取ったものです。つまり、「分かりやすく相手に伝えること」は当然「医療安全」にも関与していることであり、患者の安全・安楽を提供する看護師にとっては、欠かせないスキルと言えます。看護におけるアセスメントの意味は、
患者さんの情報を収集すること
その情報の意味を考え、状態を評価すること
です。
ちなみに、アセスメントを辞書(デジタル大辞泉)で調べると、「査定」「事前影響評価」と出てきます。ある対象物を客観的に「評価する」「査定する」という意味合いです。看護大辞典によると、「患者の情報を収集すること。病状や病気あるいは状況の経過についての患者の主観的な訴えと臨床検査や身体診査・病歴などから得られた客観的データをもとに、疾病やその状況について評価・査定を行うこと」とあります。
看護過程では、何よりもまず「観察すること」「情報収集すること」が大切です。アセスメントは看護過程の展開にあたり、重要な第一歩となります。わかりやすく的確なアセスメントをするためには押さえておきたい大切なコツがあります。良いアセスメントは、その材料である情報をいかに適切に集め整理できるかにかかっています。
押さえておきたいのは以下の4つです。
「前提」の情報収集をしっかり行う
看護理論をもとに着目ポイントを整理する
「S情報とO情報」を正しく理解する
事実と推測を混ぜない
こちらの4つを順を追って実施していくことがアセスメントをスムーズに行うコツです。
例えば、お腹に手を当て、前かがみになり、眉間にしわを寄せて、「お腹が痛い」と話している患者さんがいます。
この場合、「お腹が痛い」はO情報として正しいでしょうか?
答えは違います。「お腹が痛い」は、患者さんの感じて発した言葉そのもののため、S情報になります。このケースでのO情報というのは、「お腹に手を当て、前かがみになり、眉間にしわを寄せている」という観察した事実になります。
このように、S情報とO情報を間違って整理すると間違ったアセスメントに繋がってしまうため、正しく理解することが大事です。
まとめ
同じ疾患の患者さんでも、「起きている問題」や「必要なケア」は個々で異なります。
そのため、教科書や参考書の内容をそのまま抜き出すと抽象的な表現になってしまいます。
個別性があるアセスメントをするには
・患者さんと向き合い必要な情報を収集する
・そこから、「患者さんに起きている問題」「必要だと思うケア」は何かを考える
ことが大切です。
まずは、S・O情報を正しく理解し、簡潔に記述することから始めてみてください。
情報が不足していたら翌日情報収集をすれば問題ありません。最初から完璧なアセスメントができる人はいません。
紹介した4つのコツを実践し、アセスメント力の向上に繋がれば幸いです。そばで支えて応援しますので一緒に頑張っていきましょう??
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