コロナ禍の今、自宅療養者が増えて在宅医療も増えてきています。病棟看護師から訪問看護師になるためにはどうしたらよいのか?病棟と在宅での看護の違いは何か?私自身の体験を元にご紹介していきましょう。
【訪問看護師とは】
訪問看護師とは主治医から発行される訪問看護指示書を元に在宅ケアにあたる看護師です。
医療的看護業務をはじめ、精神的・身体的ケアや在宅ケアサービスの支援や相談なども行います。多職種と連携し1人1人に合った支援を行います。
【病棟看護師と訪問看護師の違い】
病院は設備がきちんと整っておりその元で看護業務が行えますが、訪問看護師の場合はそういうわけにはいきません。自宅環境が十分ではない場合も多々あります。そういう中で看護業務を行わなければいけませんし、物品も病院のように揃っているわけではないので自宅にあるもので代用することもあります。病棟勤務が長い看護師が在宅へ転職した場合は1番最初に環境の違いが壁となるでしょう。病棟勤務が長いと病院の業務内容が当たり前になってしまい在宅看護に抵抗を感じることもあるでしょう、自分が病院で培ってきたものが在宅では通用しないことに悩むことがあるかと思います。また看護師としてのプライドが高すぎるのも訪問看護師としてはネックになります。それは看護師だから看護業務だけをすればいいという概念が覆されてしまうからです。訪問看護師は看護業務はもちろんのこと、精神面や身体面での支援や相談役も快くしなければならないことも多いです。大きい組織下で働く病棟看護師か、自分で判断しなければならない状況が多い訪問看護師か、同じ看護師でも大きく違います。
【訪問看護師に必要なこと】
①臨機応変に対応できること
病院のようにすぐに医師がいるわけでもなく、連絡してもすぐに指示がもらえるわけでもありません。緊急時はある程度自分で判断しなければならない状況にもなるでしょう。看護経験が少ないと訪問看護師として働くには厳しいかもしれません。緊急時の対処方法や処置方法もしっかり学び患者個人にあった対応を行うことが望まれます。救急看護などの勉強をして身につけるようにしましょう。
②多職種との連携、コミュニケーション能力
退院し自宅療養へ切り替わる時には病院の相談員、担当看護師、主治医と話し合い情報の共有をするカンファレンスが設けられることがあります。退院し自宅に戻った時にはケアマネやヘルパーなど介護事業所の方との連携が必要不可欠になります。
患者や家族との信頼関係を築いていくのにもコミュニケーションは絶対必要でしょう。情報を共有出来ていなければ見落とすこともあり、十分な在宅ケアを支援することも出来なくなるリスクもあります。多職種連携と患者と家族、それぞれに十分なコミュニケーションをとることは必ず必要となってきます。
③広い視野を持つこと
病棟看護師のように決められた看護業務を決められた時間にきちんと行うわけではないのが訪問看護師です。
患者や家族との距離はかなり近くなるため、いつもと様子が違うなどすぐに気付いてあげられるようになるのがベストです。心身のケアをして相談に乗りアドバイスをすることも時には必要となります。看護師だから看護業務だけしかしないと考えている方は訪問看護師は不向きでしょう。在宅ケアは様々な支援をして自宅での生活が成り立ちます。訪問看護師への転職を考えているのであれば、在宅ケアや在宅の介護・医療の仕組み、多職種の業務内容などをはじめに勉強をしておいたほうがよいでしょう。
④すべての科を知ること
病棟勤務ならば配属されている病棟の診療科の疾患や症状を知っていれば問題ないでしょう。しかし、訪問看護師は違います。専門の診療科はないためすべての疾患に対処しなければいけません。小児から高齢者まで自宅で療養されている患者は様々です。人工呼吸器を使用している方もいればホスピス緩和ケアの方もいます。病院ではあり得ないことでも自宅では当然のように行わなければいけないこともあります。小児看護から成人看護、救急看護など勉強しておくのも1つの方法です。
【訪問看護師のメリットとデメリット】
1 デメリット
①緊急時の訪問のとき
病棟看護師は日勤や夜勤などと2交代3交代と分かれての勤務となります。しかし訪問看護は24時間対応なのです。
当番であれば緊急用の携帯電話を持ち帰宅することになります、いつ電話が鳴るかわからないので夕飯時でもお風呂に入っている時でも電話が鳴ることがあります。必要があれば帰宅後でも深夜でも早朝でも緊急訪問し患者の状態を見に行くこともしばしばあります。当番制とはいえ土日祝日関わらず365日24時間なのでかなり大変ではあります。経験上、プライベートで遠方へ遊びに行ったりしたのはいつだったか正直もう覚えていません。お子さんがいるママさん看護師はご家族の理解や援助がなければ大変な仕事だと思います。病院のようにすぐに呼ばれたからといって訪問に行けるわけでもなく医師の指示もすぐに仰げるわけではないので1番苦労する点でしょう。
2 メリット
①患者との距離が近い
病院では何人もの患者を担当して見ていかなければいけませんが、訪問看護師の場合は1人1人の患者宅へ行くので1人の患者と向き合い支援中はその患者のことだけ見ていればいいのです。患者や家族との距離も近くなりそれぞれの生活背景や人生の話を聞くことも出来てとてもやりがいがありますし楽しいです。病院では経験出来ないようなことを経験することが出来ますし、ある程度自分の判断で動かなければならない状況もあるので看護技術が確実に上がります。
【訪問看護師になるためには】
看護業務に関しては点滴管理やルート確保、バルーン交換、入浴介助、褥瘡処置、胃瘻管理、吸引など病棟看護師とあまり大きな差はありませんがやはり技術面を鍛えるのであれば何年か病棟勤務してから訪問看護師へ転職するのが望ましいかと思います。在宅では出来る看護技術はある程度定められているため、看護師として出来て当たり前の技術ができないリスクは出てきます。訪問看護師から病棟看護師へなったときに技術面が伴っていないと苦労することも出てくるでしょう。
また新卒の看護師を募集している訪問看護事業所は少ないように見受けられます。
なかには新卒可という事業所もありますが、そういった事業所は教育体制が整っており在籍している看護師も認定看護師がいるなど十分な技術を身につけられる環境にあります。転職する際や新卒で就職する際には教育環境が整っている事業所を選ぶのがベストでしょう。
新卒で訪問看護師を目指すのであれば、病棟看護師と同等の技術を身につけなければならないこと、またそれなりの覚悟をもって就職することが重要です。
【訪問看護師だからわかること】
病棟に勤務していたときとは違い、家族や患者の生活スタイルや今までの人生背景などを重視し患者の意思を最優先のすることが在宅ケアの良い点です。今まで知り得なか
った患者1人1人の個性を知ることが出来ますし、病棟看護師の時よりも深く患者に関わることが出来るのが醍醐味です。病院でお会いした時には無口で口をきいてくれなか
った方も自宅に戻ると性格が変わったかのように明るくなり色々話してくれるようになる姿を見ることが出来るのも訪問看護師としての特権だと嬉しくなります。
看護師になってよかったと思う場面が在宅にはあふれています。病院で日々の業務と時間に追われ患者と向き合えてなかった私は、在宅で訪問看護を経験し色々なことを経験出来て本当に楽しいですし、嬉しく思うことが多くなったように思います。病棟看護師は患者の病気と向き合い、訪問看護師は患者個人と向き合い日々の業務をする、同じ看護師という仕事でもこんなに大きな違いがあるのだと実感できることでしょう。
まとめ
病棟看護師と訪問看護師、同じ看護師でも働く環境により提供する支援に大きな違いがあります。今後は更に自宅療養者が増え在宅へのニーズは高くなってくるでしょう。もちろん楽しいことばかりではありません、難しいことも多く出来ない自分に涙する日々もあります。ですがとてもやりがいを感じ魅力あふれる仕事だと私は思っています。在宅医療へ興味をもち少しでも転職を考えてる方や新卒で訪問看護師を希望している方に伝わればと嬉しいです。
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