手術室看護師が教えるアセスメントのコツ

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#1555 2021/08/30UP
手術室看護師が教えるアセスメントのコツ
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手術室看護師は器械出しのイメージが強いと思いますが、実は、麻酔で眠り自分の意思を表現できない患者さんを、カルテに記載されている情報、手術の内容及び手術の状況、そして生体モニターからアセスメントし、患者さんに必要なケアを判断しています。

●間接介助業務・外回り看護師ってなに?

皆さんは、手術室看護師が普段どんな業務をこなしているか知っていますか?「メス」と言われてメスを渡す、いわゆる器械出し看護師のイメージが強いのではないかと思います。実は、手術室看護師の役割は2つあり、今回はもう一つの役割「外回り看護」と呼ばれる看護業務についてお話します。
簡単に言えば、清潔野を担当するのが器械出し看護師、器械出し以外の手術業務全般担当しているが外回り看護師です。器械出し看護師は、医師と直接やりとりしていることもあり「器械出し看護師のほうが技術が必要で大変そう」と、思われているかもしれません。しかしそれは大きな間違いです。

●実際に外回り看護師って何をしているの?

手術中必要になった物品を準備し、麻酔科医の補助業務を行うのも、器械出し看護師に清潔操作で渡しているのも、術中記録を行うのも、電気メスや撮影機械などの機材が正常に動いているか確認するのも、全て外回り看護師の業務です。
私たち手術室看護師と病棟看護師との1番の違いは「ほとんどの場合、手術当日に初めて担当の患者さんと会う」という部分です。つまり、カルテから読み取れる情報を元に患者像を構築し、常にアセスメントしているのが外回り看護師です。
麻酔科医は常に術室内に滞在している訳ではありません。もちろん、術室内に滞在している場合は麻酔科医が生体モニターをチェックし、薬剤の投与や必要なケアの指示を行ってくれます。しかし、麻酔科医が不在の場合、生体モニターを常に監視してアセスメントをする。異常があれば報告し、指示を仰ぎます。麻酔科医が不在の間、麻酔科医の役割を担っているのも外回り看護師の役割です。
手術室でのアセスメントなんて、病棟で役に立たないと思っていませんか?「眠ってる患者さんのアセスメントなんて参考にならない」と思う方も多いと思います。しかし、アセスメントとは、状況を正しく評価・分析することで、適切な対応をとることです。患者さんの状態に関わらず、私たちが行うアセスメントは同じ物なのです。さらに、患者さんが自分の意思や状況を伝えられない分、私たちは患者さんをさまざまな角度からアセスメントしています。

●常にアセスメントするってどういうこと?

手術中の患者さんは、全身麻酔であれば意識はありません。つまり、自分の意思を表現できない状況にあります。その時にポイントとなってくるのが、生体モニターと麻酔機(人工呼吸器)モニターです。手術室で使用している生体モニターは、脈拍、血圧、経皮的動脈酸素飽和度に加え、食道温や皮膚温、膀胱温、直腸温などの体温(術式によって使い分けています)、必要があれば動脈ラインやスワンガンツカテーテル、中心静脈圧、麻酔科医によっては脳波モニターや筋弛緩モニターなど、さまざまな波形がモニタリングされています。それだけでなく、麻酔機モニターは全身麻酔の患者さんの生命が関わってきます。呼吸数や換気量、気道内圧、カプノグラムなどを見ることができます。麻酔機モニターの異常は、患者さんの呼吸の異常。つまり、患者さんの生命に直結しているのです。
リアルタイムで変化し続ける生体モニターから、「今、患者さんに何が起きているのか」「患者さんには何が必要なのか」を考える必要があり、患者さんの変化を見逃すことは、患者さんの訴えを無視しているようなものです。だからこそ、常に患者さんの変化に気を配りアセスメントをし続ける必要があるのです。
生体モニターや麻酔機モニターはリアルタイムで患者さんの状態を教えてくれるとても重要な情報です。それだけに限らず、患者さんを知る情報は生体モニター以外にもたくさんあります。カルテから読み取れる患者像、既往歴、手術の内容及び手術の状況、出血量や輸液量、尿量や色、使用薬剤、末梢冷感や浮腫、動脈血ガス分析、血液検査、そして生体モニターからアセスメントし、患者さんに必要なケアを判断していきます。

●アセスメントと記録

まず間違って欲しくないのが、「記録を書くためにアセスメントしているわけではない」ということです。私たち手術室看護師は、病棟看護師のようなSOAPを記録に残すことはほとんどありません。バイタルサインや出血量、使用薬剤、行ったケアなどは全て記録に残っていますが、アセスメントの内容は簡易的にしか記録に残りません。自分のなかでアセスメントして医師に相談し、指示されたことや許可の出たケアを行い、行ったことを記録に残しています。つまり、アセスメントの部分はほとんど残らないのです。他の看護師の手術記録を見る際にも「○○になったから△△したんだろう」「△△してるから○○になったんだろう」など、常にアセスメントしています。
このことから、上手な記録の仕方が知りたいのか、アセスメントの仕方が知りたいのかで、学ぶことは大きく変わってくるのが分かるかと思います。
以上を踏まえて、アセスメントを学びたい人に最初に伝えておきたいことは、アセスメントで1番必要な物は「知識」だということです。病態生理はもちろん、解剖、薬剤、疾患など、知識が無ければアセスメントはできません。
アセスメントと記録は別とお話しましたが、アセスメントが上手な人は記録も上手だったりします。それってなぜでしょうか?答えは簡単です。「知識」の量が違うからなんです。

●具体的にどうアセスメントするの?

私は普段、「アセスメントをする」というより、「結果を考える」「繋げて考える」ことを大切にしています。たとえば出血量が多い手術の場合、
・出血量が多かったらどうなるのか?
→血圧が下がる、尿量が減る、脈拍が増える、呼吸数が増える

・呼吸数が増えるとどうなるのか?
→phが上がる

・phが上がるとどうなるのか?
→低カリウム血症、痙攣の可能性

・低カリウム血症になるとどうなるのか?
→麻痺、嘔吐、不整脈など

つまり「出血量の多い手術では、不整脈が出現する可能性がある」という結果が予想できます。手術中、患者に不整脈が出現した場合、カリウム値はどうなっているか?phはどうなっているか?呼吸回数は?出血量は?というふうに逆から辿っていくことで、原因を追求することができ、アセスメントすることができます。つまり、「出血多量のため(呼吸数が増えアルカローシスになったことにより、カリウム値が下がって)不整脈を引き起こした可能性がある。」と記録することができます。
※看護師の仕事はあくまで診療補助業務なので、診断や断定はできません。記録に残す際には断定せず、「可能性があるため医師に相談した」や「疑いがある」という言葉で締めましょう。

●簡単にアセスメントする方法はないの?

誰しも最初から上手にアセスメントできるわけではありません。多くの疾患、多くの患者さんとかかわり、勉強することでできるようになっていきます。
アセスメントが上手な人に共通していることは、「生体反応の関連図が頭に叩き込まれている」ということです。不整脈ひとつをとっても、「過去にPCIをしている」「BNP値が高い」などの要因があれば原因は変わってくるでしょう。「不整脈」と言うワードからどれだけ枝分かれした知識を持っているかで、アセスメントの厚みも内容も全然変わってきます。
最初は上手にアセスメントしている人の記録を読み、自分の中でパターンをつくり、そこに自分の知識を付け足し、紐付けしていくことで少しずつアセスメントができるようになっていきます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
アセスメントと記録は別物です。アセスメントが上達すれば、自然と記録も上手になっていくでしょう。しかし、記録が上手になってもアセスメントは上達しません。最初から上手なアセスメントができる人はいないのです。上手なアセスメントをする先輩の記録を読み、自分の知識を繋がることから始めていきましょう!

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