救急看護師と聞くと、とてもハードルが高く大変な職場、というイメージを抱く人もたくさんいるでしょう。
救急看護師が働く現場はそのイメージ通り、「緊急的に処置が必要とされる、極めて危険な状態に陥った」患者さんと向き合うものです。
そんな現場だからこそ、看護師として求められるものがたくさんありますが、では救急看護師として働くには、どうしたらいいのでしょうか。
①<救急看護師の現場>
救急看護師とは、緊急的な処置を必要としている患者さんの、医療対応をする看護師です。
では実際、どんな現場で活躍しているのでしょうか。
1.救急医療施設
救急医療が設置されている病院の中で、救急看護を行うことを、主な仕事内容とする看護師です。
急病や事故、災害時など一刻を争う救命救急の現場において、救急看護として医療活動を行います。
救急医療は24時間365日にわたり、患者さんに対応することが特徴です。
患者さんの重症具合により、一次二次三次救急と大きく分類されています。
一次救急とは、病気やけがの程度が軽く、入院の必要性が低い患者さんの対応をするところです。
それに対し、一次二次救急施設で対応ができないほどの、重症な患者さんを受け入れるのが三次救急であり、「救命救急医療センター」と呼ばれることもあります。
事故などによって生じた突発的な外傷や急性疾患、または慢性疾患の緊急的な憎悪などの状況に合わせ、救急処置を施します。
心肺停止や脳卒中など、命の危機に瀕しているほどの重症患者の受け入れを行うのが、三次救急の特徴です。
2.救急医療施設以外でも
救急看護師として勤務する現場は、救急医療施設だけではありません。
ドクターヘリに医師と同乗し、救急看護を行うのも救急看護師の仕事です。
そのほか、災害時に急いで現場へ向かい、被災した人に対して医療活動を行う救急看護師もいます。
日本国内で発生する災害に限らず、海外で発生した災害にも、派遣されて医療活動を行うこともあります。
また、救急看護に関する専門知識を生かし、看護学生や新人看護師に指導したり、救急看護の専門的な研究をすることも、救急看護師の仕事の1つです。
②<救急看護師になる方法とは>
1.看護師の国家資格取得
救急看護師になるために必須となるのが、「看護師の国家資格」です。
看護大学や看護短大、看護専門学校のいずれかの学校に通学し、卒業することで受験資格を得ることができます。
救急看護師は、医療に関する高度な知識や技術、迅速な判断力が必要となることから、看護師としての向上心だけではなく、重篤な患者さんと向き合う覚悟も必要です。
2.経験を積んだのち
一般的な看護師としてある程度の経験を積んだのちに、救急医療施設へ異動して働きます。
救急看護師は、より高度な医療活動が求められるため、看護師としてのある程度の経験は必要不可欠です。
まずは救急医療施設以外の現場で働き、看護師としてのスキルをアップさせてから、さまざまな状況に対応できる力を身に着け、救急看護師として従事します。
そのため、学校を卒業してすぐに救急医療の現場に救急医療看護師として配属されることは、ほとんどありません。
救急看護師は、看護技術はもちろんのこと、より迅速な対応力や判断力も求められるため、一般看護師としての経験は欠かせないものとなっています。
3.救急看護師としての勤務を希望する
救急看護師として働くためには、看護師の国家資格を取得できれば、その他絶対に必要となる「資格」があるわけではありません。
看護師としてある程度の経験を積んだのち、救急看護師として勤務することを希望します。
何次救急の指定病院で働きたいなど、具体的な目標を明確に定めておくことが、救急看護師として働くための方法です。
③<救急看護師に求められるもの>
救急看護師は、希望すれば誰でも簡単になれる看護師というわけでもありません。
では、救急看護師として働くには、どんなことが求められるのでしょうか。
1.救急看護認定看護師
救急看護の「スペシャリスト」と、認定された看護師に与えられる資格です。
日本看護協会において実施されている「認定看護師制度」の中の1つであり、この制度が発足した当初からある資格でもあります。
同じ救急看護師の中でも、より熟練した看護の技術を持つ人に与えられる資格です。
実務経験を5年以上積むことで、救急看護認定看護師の資格取得を目指すことが、可能となります。
救急看護師として必ず必要な資格というわけではありませんが、スキルアップのための目標となるものであることに間違いありません。
2.迅速な対応力
救急看護の現場は一刻を争うことが多く、患者さんの容態を見て、すばやく対応を見極める必要があります。
どんな看護活動を施す必要があるのか、迅速な判断が求められ、救急看護師としてのスキルが試されるものです。
患者さんの重症度合いによって、治療を受ける優先順位をつけるものを「トリアージ」といいますが、このトリアージの判断を救急看護師が行うこともあります。
トリアージは、患者さんの基本的な情報を聴取したのちに、症状の状況を即座に判断するための、経験と知識が求められるものです。
3.家族への対応
救急看護の現場では、患者さんの家族への対応も仕事の一環です。
命にかかわるほどの、重篤な状態にさらされた患者さんの家族は、不安とパニックに陥りやすくなります。
患者さんの置かれている状況と病状の説明や治療方針など、家族への説明も救急看護師の重要な仕事です。
家族の心のケアとして、冷静な対応力が求められます。
4.平常心の維持
救急医療の現場は、時として残酷な現場となってしまったり、深刻な状況に置かれることも決して稀ではありません。
治療の方針によっては、延命治療の判断を迫られる家族の姿を見ることもあるでしょう。
看護師としてだけではなく、一人の人間として辛い立場を経験することも多くなります。
ですが、そんな過酷な状況に惑わされ、心が乱されると、冷静な判断や迅速な対応ができなくなってしまうものです。
どんな時でも平常心を保ち、救急看護活動に集中できる精神力が求められます。
5.体力
看護師という職業そのものがハードで、激務ではありますが、救急医療の現場は、さらにハードな現場です。
24時間365日体制であるため、いつどんな時に重篤な患者さんが運ばれてくるかわかりません。
常に緊張感が続き、死に直面する患者さんの対応にあたることも多いため、著しく体力を消耗します。
それだけの業務をこなすだけの精神力と体力が、必要です。
④<救急看護師に向いている人>
1.看護師としての向上心が強い人
救急看護師として一人前になるには、多くの経験が必要ですが、それと同じくらい常に向上心を持っている人ほど、救急看護師に向いています。
救急看護認定看護師の資格取得を目指したり、少しでも多くの看護知識を得る努力をすることで、救急看護師としての技術も向上していくものです。
救急看護師としてのスキルアップを目指し、研修や勉強会を実施している病院もあります。
2.協調性を大事にする人
救急医療の現場は、いつも緊張感にあふれています。
医師や救急看護師が力を合わせ、1つのチームとして医療活動を行う必要があります。
スムーズな看護活動を行うためには、それぞれがお互いにしっかりとコミュニケーションを取り、連携して作業をこなさなくてはいけません。
お互いの信頼関係が何よりも大切なものとなってきますが、それと同時に、コミュニケーション能力も重要な能力となります。
お互いの存在を尊敬し、信頼して1つのチームとして機能させる必要があるからこそ、協調性が重要なのです。
3.責任感が強く精神的に強い人
どんな仕事にも責任感は求められるものですが、看護師という職種は特に責任感が求められる職種です。
そんな中でも救急看護師は、緊急性の高い看護活動を行う必要があり、死に直面する場面にもたくさん出会うことになります。
命に対する責任感と、自分が担っている職務に対する責任感の両方をしっかり持ち、強い精神力で仕事に臨める人ほど、救急看護師に向いている人です。
まとめ
救急看護師という仕事は、看護師なら誰でも簡単にこなせる仕事というわけではありません。
高度な看護技術に、高度な知識、強い責任感と任命感など、常に「高度」で「強い」ものが求められます。
看護師としてのスキルをしっかりと積み上げたうえで、ようやくなれるのが救急看護師です。
緊迫した現場の中で、常に緊張感とスピード感を持ちながら、的確で迅速な対応ができるスキルが必要とされています。
救急看護師として働きたいという強い意識を持ち、経験を積みながら明確な目標を立てることで、救急看護師への道は開かれていくのです。
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