現在消化器外科病棟にて看護師として働いている看護師です。現役看護師として実際に経験した事例を通してアセスメントした内容を紹介いたします。患者様は膵臓全摘術を施行した70歳代前半の男性です。手術当日の夜勤帯で受け持ちましたが、急変してしまい、その際に対応した内容になります。
現役で総合病院の外科病棟で看護師をしております。今回紹介する事例は、外科病棟に異動となって初めてすい臓がんにて、膵全摘術を施行した患者様を受け持ったときの事例です。当日は私は夜勤でその70歳代前半の男性患者様を受け持ちました。数年前の事例のため、細かな数値などは記憶している範囲内で記載いたします。よろしくお願いいたします。
当日は日勤帯の午後に手術から帰室し、夜勤帯で私はその患者様を受け持ちました。患者様は夜勤入りの際には意識状態良好であり、既往歴に認知症や脳梗塞などもないため、コミュニケーションも問題なく可能な方でした。準夜帯ではバイタルサインも大きな問題はありませんでした。術後だったため、37℃台の発熱はありましたが、手術による侵襲熱だとアセスメントし、クーリングにて経過観察していました。そのほかは患者様に目立った自覚症状もなく、血糖値も100台後半にて医師の指示の範囲内で経過されていました。
21時頃に消灯する際に、患者より「のどが乾きます。」との自覚症状があったため、高血糖の可能性が考えられるとアセスメントし、血糖測定をすると、血糖値は200台後半でした。高血糖のため、医師の指示通りにヒューマリンRを皮下注射し、30分後に再度血糖測定をすると医師の指示する値まで下がっていたため、経過観察をし、消灯しました。
0時頃、患者より「環境がかわると眠れないですね。」と不眠の訴えがありましたが、0時を回っており、遅い時間に眠剤を使用すると翌日の日中に薬の効果が残ってしまい、昼夜逆転してしまう可能性もあるとアセスメントし、眠剤使用はせずに経過観察をすることにしました。上記の件や眠剤を使用することで、昼夜逆転してしまうリスクなどがあることを伝えると、納得し、薬を使用しない方向になりました。環境の変化や術後の不安もあると考え、患者様の話を傾聴し、精神的に落ち着いた時点で退室しました。
その後も2時間おきにラウンドを続け、心電図や血圧はモニタリングしており、問題なく経過していました。2時頃にかけて徐々に頻脈になってきており、患者のもとに行き、自覚症状を確認し、体温測定をすると、38℃台に熱が上がっていましたが、特に自覚症状はないとのことでした。医師の指示通り、解熱剤の点滴を施行し、頭とわきの下の2点にクーリングをして対応しました。術後の高熱は術後の患者様によくあることなので経過を観察することにしました。この時は頻脈に関しても高熱によるものだとアセスメントし、モニタリングを継続しました。この段階では、患者様にその他の自覚症状の訴えはありませんでした。
その後もモニタリングやラウンドを継続しており、今まであまり眠れない様子であった患者様も入眠している姿を確認できました。入眠しているところを声掛けするのも悪いと思い、声かけはせずにラウンドをしていました。
その後、3時頃に再度血糖を測定をすると、血糖が300台まで上昇しており、入眠されている患者様に声掛けし、自覚症状を確認するも反応が乏しく、今までと明らかに違った様子でした。高血糖による意識障害だとアセスメントし、Drコールしました。医師の指示通りにヒューマリンRを持続投与開始し、数値を観察していきました。膵臓を全摘出したことにより、インスリンホルモンが分泌されず、高血糖に陥り、ケトアシドーシス状態になり、意識障害が出現しているとアセスメントしました。集中治療を要する状態になったため、医師到着後はすぐに集中治療室に転棟することとなりました。
その後はヒューマリン持続静脈投与にて集中治療室で集中治療や看護を行い、徐々に回復され、数日後には一般病棟に戻りました。一般病棟に戻ってからは血糖測定を自分で測定できるように指導したり、ヒューマリンRの取り扱い方法や注射の仕方を指導し、血糖の自己管理ができるようになった時点で退院されています。
今回の事例を通して、当時学んだことはたくさんありました。膵臓を摘出した患者様は血糖の変動に注意し、もう少し早く異変に気付くことができればと思いました。患者の自覚症状がなくても、少しの変化からアセスメントし、もう少し早く気づいて対応できていれば昏睡するところまで高血糖にならなかったのではと思いました。今回の事例では、頻脈が出現した際に発熱によるものだけでなく、血糖を測定して早めに高血糖に気付き、インスリンを投与するなどの対応をしていればよかったと思う事例でした。また、不眠を訴えていた患者が入眠したことで起こすのは悪いと考えて声掛けをしなかったことも反省点でした。
今回の事例を経験したことでその後、膵臓摘出術の患者様に対する看護では意識して血糖をこまめに測定したり、自覚症状だけでなく、他覚的にみて症状がないかもよく観察し、少しの変化からアセスメントをするように心がけるようになりました。
看護師として働いているとこれらのようにひとつの判断が人の生死に直結してしまうような事例が多くあると思います。今まで10年近く看護師として働き、さまざまな経験をし、アセスメントする力は本当に大切なものであると学びました。患者様を精神的・身体的・社会的側面から観察してアセスメントをしていくことが大切だと考えます。身体面に関しては数値的な情報はもちろん、患者の自覚症状や他覚症状を合わせて広く全体的に患者様をみる力が必要だと思います。
今回の事例ではこの患者様は精神的側面からみると遠慮がちで人に迷惑をかけたくない性格の方だったので、もしかしたら少しの自覚症状があったかもしれませんが、心配をかけてはいけないと感じ、言い出しにくかったのかもしれません。そのように思わせないためにも「すこしの変化でもすぐに教えてほしいです。」などの声掛けをすればよかったと思いました。この経験からその後は患者様に遠慮せずに何でも話してほしいといった態度で接するようになりました。
アセスメントする力は経験がものをいうものだとも思いますので先輩からの話を聞いたり、実際にたくさんの患者様と触れて、看護させていただく中で学ぶものはたくさんあると思います。時には助けられない命があり、後悔したり、あの時どうして気づいてあげられなかったんだろうと自分を責めてしまうこともあると思います。しかし、看護師として働いていれば誰もが経験することなので一緒に働いているスタッフと共有したりしていければいいのかなと思います。
長くなってしまいましたが、ご覧いただき、ありがとうございました。私の経験が少しでも誰かの役に立てていればありがたいです。看護師は責任やプレッシャーがあり、緊張感が求められるような場面も多くあるので本当に大変な仕事であると思います。しかし、そのような仕事だからこそ、患者様が元気に退院されたときに感じる喜びも大きいです。
まとめ
結論を伝えますと、アセスメントする力は本当に重要なものだということです。自覚症状はもちろん他覚的にみて少しの変化でも気づいていく力が必要になります。自覚症状に関しては患者様によっては遠慮して伝えられなかったり、既往歴に脳梗塞や認知症などがある方は、自分で訴えることが難しい場合もあります。そのため、他覚的に広く患者様をみてアセスメントしていくことが大切です。
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