患者アセスメント・病態の安定化

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#1486 2021/06/23UP
患者アセスメント・病態の安定化
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看護師として働くうえで、患者さんが出す些細なサインに気が付くことがとても重要になります。重症化する8時間前に患者さんのバイタルには何かしらの変動がみられるということは科学的にも証明されています。そのサインをいち早く読み取ることが急変を予防することに繋がります。

看護師として働くうえで、重要なことは患者さんの些細なサインを見逃さない事です。アメリカ心臓協会では急変時のアルゴリズムを5年ごとに更新しており、ここ最近になり2020年のガイドラインが正式に日本語として発表されました。ガイドラインが変更になり、BLS(一次救命処置)にも変化がみられるようになりました。今後看護師として働くうえでは、医療者として知っておく必要がありますし、最新の知識を使用してアセスメントすることがとても重要になってきます。
今回はガイドラインが2020年に変更になった点で何が違うようになったのかを分かりやすく記載し、今後看護師として働く人や現在看護師として働いている人のアセスメント能力の向上につながればと思っています。
では早速ですが大まかな変更点を紹介します。

①テクニカルスキルに大きな変更はとくにありませんが認知スキルの部分が拡大されました。

BLSの手順や内容については大きな変更点はみられずガイドライン2015のままで概ね対応できるやり方となっています。ただ記載されている内容については学習範囲が拡大されました。成人・小児・乳児の蘇生法や練習内容についてはほとんど変化がないものの。特殊なケースとして記載されていた妊婦の蘇生や溺水、アレルギー対応などが記載されるようになりました。特に溺水に関しては通常のアルゴリズムとは完全に異なる内容が盛り込まれています。
では具体的に何が変わったのかというと補助呼吸の回数が変更になっています。ガイドライン2015では、「脈あり、呼吸なし。」のケースでは成人の補助呼吸は5~6秒に一回換気。小児への補助呼吸は3~5秒に一回とされていました。つまり、倒れている人や急変している患者をみたら、肩などをたたき意識レベルの確認をします。意識がなければ応援を要請し、そのあとに頸動脈にて脈拍を確認しつつ同時に呼吸状態(胸の上り)を確認します。この時に脈拍は触知できるが、呼吸が確認出来ないというときに上記の対応を行います。その換気に要する時間が、今回ガイドライン2020では成人への補助呼吸6秒に一回、小児への補助呼吸2~3秒に一回となりました。成人については換気回数が具体的に決められたことで、統一した換気方法となりました。小児については換気の回数が重要視された形となり、呼吸管理の重要性が認識されるようになりました。

②妊婦の蘇生

以前よりガイドラインには記載されていたのですが、今回BLSレベルで記載されるようになりました。妊婦となると一般の傷病者と違い苦手意識が出てくる印象をもっている人やどのように対応したらよいのかを考える看護師も多くいると思います。妊婦であってもCPRはするべきですし、AEDも当然普通に使うことは知れています。ちなみにAEDを妊婦に使用しても胎児への影響はありません。それに付け加えてLUD(手的子宮左方移動)が記載されるようになりました。これは周産期では普通に知られている話ですが、妊婦が仰臥位になると大静脈が圧排されて静脈環流が悪くなります。胸骨圧迫では通常時の血流の1/4しか出せないとされる中突き出た腹部を左側に引き寄せるようにして大静脈の圧迫を軽減させることが重要とされています。想像していただくとわかる通り、一人では出来ませんので二名以上の救助者がいる場合に行います。一人は妊婦の左側に位置して、両手で腹部を左側に引き寄せるようにした状態で、残りの救助者が胸骨圧迫をおこなうという形になります。

③女性患者への留意点

今までの救急蘇生法では、地肌に手をおいて胸骨圧迫をすることが謳われていましたが、ガイドライン2020では女性の傷病者に対して、胸骨圧迫の段階では必ずしも服を脱がせなくても良いという点が明記されました。AED使用の際は必ず服を脱がせるのですが、アクセサリー類はパッドにかからなければ外す必要がないとなっています。

④溺水患者の対応方法

溺水患者の急変時には人工呼吸が先だという事が明記されるようになりました。よくあることではありませんが、高齢者病棟や精神科病棟では一概にないとはいえない出来事が溺水です。実際にその場にあたったときにきちんとアセスメントして対応できることが望ましいのでしっかりと認識しておく必要があります。溺水者の蘇生法では手順がC(循環)→A(気道)→B(呼吸)ではなくA(気道)→B(呼吸)→C(循環)が望ましいという点はガイドラインレベルでは言われていましたが、BLSプロバイダーコースに発展した形で入ってきました。つまり溺水の救助手順は呼吸確認、呼吸なし→人工呼吸2回→脈拍確認、脈拍なし→30対2のCPR開始です。最初の人工呼吸2回は酸素供給というだけではなく、咽頭痙攣などで喉が閉じているのを開放させる意味合いが含まれていると考えられます。

⑤CPRコーチ

ACLS(二次救命処置)では、蘇生チームの役割分担としてリーダー役がCPRの質を管理していたのですが、治療や原因検索に集中できるように別の人がCPRの質を管理するコーチ役として管理するというものです。病院で現在つてめている方は急変時の業務のなかで実際にちかい動きはしていると思いますが、これば明文化されたことになります。CPRコーチの役割は、胸骨圧迫のための足台を準備したり、ベッドの高さを調節したり、蘇生の質を保つために深さ(5~6cm)・速さ(100~120回/分)・戻りなどの質をフィードバックし調整をはかります。具体的な指示を出す役割が増えることで効果的な蘇生方法につなげることが出来ると期待される重要な役割がくわわりました。

⑥救命の連鎖にリカバリーが増えた。

ガイドライン2015では
院外で人が倒れた場合:救急対応システムに応援を要請→質の高いCPR→除細動→高度な蘇生→心拍再開後の治療
院内で人が倒れが場合:早期認識および予防→救急対応システムに応援を要請→質の高いCPR→除細動→心拍再開後の治療
とされていましたがガイドライン2020ではこの後にリカバリーという項目が追加されました。これは心停止からのリカバリーは退院後も長期化することが予測され、転帰によっては心停止生存患者に特異的介入が必要になることがあります。心停止の基礎疾患に対応するためにリハビリテーションを提供したり、患者および家族に対して心理的サポートを行う必要があるとされています。蘇生だけではなく、その後についてもケアを持続することが重要だと言われるようになりました。
主に変更になったのは上記の点です。看護師として病院に勤務するということは患者さんの命と向き合うことを意味しています。もしもの時に自分が冷静に行動できるのか、きちんとしたエビデンスのある技術を現場で実施できるのかは自己学習にゆだねられている部分が多いのが現状です。昔の知識や技術のままそれを継承している病院は少なくともあります。病院で教わることや教育されていることが全て正しいと思うのではなく、自己研鑽を常に行っていくことは患者さんを守ることにもつながります。自分のアセスメント能力向上を目的とした学習は継続して行うことを強くお勧めします。

まとめ

救急蘇生法は5年ごとに見直しが行われ、統計をとりながら常に最善の蘇生方法をエビデンスをもとに作成されています。今ある環境になれることも大切ですが、もしもの時に消えかかっている命を救うのは自分自身かもしれません。効果的な治療方法が現場で提供できるように常に学習を続けていくことが重要です。長くなりましたが、少しでもお役に立てる内容であればと思います。

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