痛みに対する看護ってどのようにしていけばいいか知っていますか?患者さんが痛いと訴えてもどんな痛みなのか想像ができないので、どうケアに繋げればいいのか迷うことが多いのではないでしょうか。そこで今回は、痛みに対するアセスメント方法についてポイントを交えながら詳しくご紹介していきます。
痛みって何?
そもそも痛みって何のか知っていますか?まず、学会や学者さんによって発表されている痛みの定義についてご説明します。
国際疼痛学会
実際に何らかの組織損傷が起こった時、あるいは組織損傷が起こりそうな時、あるいはそのような損傷の際に表現されるような、不快な感覚体験および情動体験
MC CAFFERY
痛みと、それを体験している人が痛いと訴えるもの全てである。それは、痛みを体験している人が痛みがあると訴えるときはいつでも存在しているのである
代表的なものを2つ上げてみました。
え、結局どういう意味なの?と思う方も多いはずです。そこで、簡単に痛みの定義の特徴について以下にまとめてみました。
・痛みは主観的なものである
・対象の表情と痛みの強さは一致しない
・急性疼痛と慢性疼痛が混在している
の3つになります。
もう少しわかりやすくするために、この痛みの特徴を少し事例を交えながらご説明していきます。
(事例)
A氏、65歳女性。大腸癌に対する抗がん剤治療で月に2回外来通院中。治療中に看護師に以下の発言あり。「この前お腹とか腰が痛むことがあってね。主人に言うと歳のせいだから甘えるなって言ってきたのよ。自分だって腰が痛いってすぐに言うんだからお互い様でしょって鼻で笑ってやったわ、うふふ」
先ほどの3つの特徴を踏まえてアセスメントしてみます。お腹と腰が痛むと言っているので1つ目の主観的な痛みとして表現していることがわかります。
また、鼻で笑ってやったわ、うふふと雑談口調で言っているので軽い痛みのように捉えてしまいそうですが、A氏の表情や言動と痛みの強さは一致しません。そのことから、もしかするとお腹と腰の痛みは夫に訴えたくなるほどきつく感じる痛さだったのではないかと予測することができます。3つ目の急性か慢性疼痛かに関しては、どのような痛みだったのかもう少し聞いてみることが必要ですね。どのように掘り下げて聞き、看護に繋げていけばいいのかは次の項目でご説明していきます。
痛みのアセスメントってどうするの?
痛みのアセスメントのポイントは以下の9つになります。
①痛みの経過
②痛みの部位
③痛みの性状(感じ方)
④痛みの増悪因子・軽快因子
⑤痛みのパターン
⑥痛みの強さ
⑦現在行っている治療の反応
⑧痛みによって困ることはないか
⑨痛みの意味・薬剤に関する知識
少し項目が多いように感じるかもしれませんが、アセスメントを行う上で最低限確認が必要な項目になってきます。
今回は、③痛みの性状と⑥痛みの強さに関して詳しくご紹介していきます。
③痛みの性状について
痛みには、体性痛と内臓痛、神経障害性疼痛の3つの種類があります。
・体性痛
骨転移局所や創部の痛み、筋肉痛などの痛みのことを表します。「ここが痛い」など痛む場所がはっきりしていて、「動かすともっとズキズキする」、「ズキンとする」などと表現されます。持続した痛みが体動時にもっと痛むというのが特徴です。
・内臓痛
内臓痛は、イレウスやがん由来の痛みなどがあります。生理痛も内臓痛に入ります。痛みの特徴としては、局在が不明瞭でしめつけられる、鈍い、押されるような痛みとか、あとは、「この辺り」「この辺の痛み」と曖昧に表現される方が多いです。
・神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、がんの腕神経叢浸潤に伴う痛みや脊髄圧迫による背部痛、帯状疱疹後の神経痛、また化学療法後の手足の痛みなどがあります。神経障害性疼痛の痛みの特徴は、障害神経支配領域の痺れを伴う痛みです。「ビリビリと電気が走るような痛み」と表現される方が多いです。
⑥痛みの強さについて
痛みの強さは、スケールで表現してもらい評価します。
スケールの種類としては、NRSやフェイススケールでの評価が一般的です。
・NRS
NRSは、患者さんが感じている痛みを10段階の数字で評価するものです。
0?10の11段階に痛みを分けて、今現在の痛みがどの程度なのかを評価する段階的なスケールです。
患者さんに「今まで経験してきた中で一番痛い痛みを10とするなら、今は0?10のうちどのくらいですか?」などと尋ねて確認をしていきます。
NRSの数字の大きさによる痛みの程度は以下になります。
0 痛みなし
1?3 軽い痛み
4?5 中程度の痛み
7?10 強い痛み
・フェイススケール
フェイススケールは、NRSで答えることが難しい場合に使用する評価方法です。
患者さんの表情を見て、痛みの強さがどの程度なのか6種類の表情の尺度で評価します。
主に小児や認知症を有する高齢者の方など、数字を理解することが難しい方に使用します。
実際にアセスメントしてみよう!
では、先ほどのAさんの事例を通して①?⑨の痛みのアセスメントを一緒に行ってみましょう。
①痛みの経過→この前お腹と腰が痛いと言っていたけどいつ?
②痛みの部位→お腹と腰。それ以外に痛みを感じる場所はあるのかな?
③痛みの性状(感じ方)→どんな痛みなのか確認して、3つの痛みの種類のうちどれに当てはまるのかアセスメントしてみよう
④痛みの増悪因子・軽快因子→痛みの変動があるのか詳しく聞いてみよう
⑤痛みのパターン→詳しく聞いてみよう
⑥痛みの強さ→65歳で数字は理解できるからNRSで評価してみよう
⑦現在行っている治療の反応→化学療法での効果はどうなのか、採血結果や画像を見てみよう
⑧痛みによって困ることはないか→詳しく聞いてみよう
⑨痛みの意味・薬剤に関する知識→詳しく聞いてみよう
①?⑨の項目に沿ってアセスメントしてみると、半分以上情報がないことがわかりますね。ですが、情報がないことに焦る必要はありません。不足している情報が何かがわかれば、あとは聞けていない項目を情報収集すればあっという間にアセスメント自体は完了です。
ここまですごく簡単な感じでお伝えましたが、実際はそううまくいかないことがあるかもしれません。
業務が忙しくてゆっくりお話を聴く時間がない、またA氏自身が我慢しがちな性格で話したがらないということもあるかもしれません。その際は、聞けていないアセスメント項目の中で特に必要と感じる部分のみをこの時間は聴いてみようと、あえて情報収集する項目を減らしてみるのも一つの手段かもしれません。次の外来時には新たに聴きたい項目を追加して事前に時間が取れるよう調整してから聴いてみるのも良いですね。また、もしA氏が話したがらない場合には、なぜ看護師が痛みに関する情報を知りたいと思っているのか、痛みの状況を看護師が知ることで、痛みを緩和できる方法がないか一緒に考えていきたいと思っていることなど、こちらの想いもしっかりとお伝えした上でA氏の想いも聴き看護に繋げていくということも一つの方法としてあります。
痛みを訴えている患者さんがいたら、①?⑨のアセスメント項目を意識しながら主観的な痛みを客観的な痛みとしてまず評価してみてください。
そして、痛みを緩和するために必要な看護のケアにつなげるだけでなく、医師や薬剤師など他職種とも情報共有を行い、チームで患者さんの痛みを緩和するための方法を模索していくことも大切です。
まとめ
今回、痛みを訴える患者さんに対するアセスメントの方法についてご紹介しましたがいかがでしたか?私たち看護師が患者さんの言動や表情から痛みのSOSをしっかりと拾い上げ、どのような痛みなのかアセスメントし看護につなげていくことが大切になっていきます。
今回ご紹介した痛みの特徴やアセスメント方法を参考に、より良い看護につなげていきましょう。
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