在宅で生活している高齢者の中には、自覚症状が乏しくても慢性心不全を抱えている方がたくさんいます。また、入院中は緻密な塩分や水分量の管理、体重管理、服薬管理でコントロールされた心不全症状が、退院すると短期間で再燃する事例も多いと思います。在宅での心不全患者の生活管理について、経験から学んだアセスメントと看護のコツをご紹介します。
心不全は、高血圧や動脈硬化、不整脈や糖尿病の既往がある高齢者に多くみられ、心臓が全身の機能に必要な血液を送り出すことできなくなる状態です。息切れ、動機、むくみなどを自覚するようになり、悪化すると活動や生活に大きな影響を与える病気です。しかし、食事の塩分量や水分摂取量を調整することや適切な薬を正しく飲むことで、症状は緩やかになり急性憎悪を予防することができます。入院中には看護師さんがお薬を運んでくれ、栄養士管理の食事が提供されます。また、病室で過ごす時間が長い入院生活では一日の水分量もだいたい決まってくるでしょう。看護師さんに言われて何気なく測る体重も増減の幅がだんだん少なくなり、退院を迎えると思います。そんな退院後、患者さんの日常生活を支援する(心不全コントロールのアセスメントとケア)コツは以下の6つになります。
1、一般的な食材やメニューに加えて、対象の患者さんが好きな食品や生活圏内のスーパーでよく買う食品、外食のペースや行動パターンについて情報収集をしましょう。食べる頻度の多い食品のおおよその塩分量を把握した上で、食事に関するキーパーソンにも協力を得ましょう。
退院して自宅での生活が始まると、毎日3食、家庭の食事で塩分量の把握を続けることはとても難しくハードルの高いことです。在宅の高齢者が食材を買って毎日イチから調理を継続することはほとんどないと言ってもいいくらいです。例えば、独居で買い物や調理は全てヘルパーに依頼している方もいます。全てをコンビニで調達する方や配色弁当を利用している方も多いです。スーパーやコンビニで手軽に買えるお惣菜やお弁当、菓子パン、加工品(ハムやウインナーかまぼこなど)には、想像以上の塩分が含まれています。また、麺類やお寿司、汁物、インスタント食品も要注意の塩分量です。患者さんが何をどのくらいの量、どんな頻度で食べているか、誰が食事準備をするのかを把握し食事のキーパーソンにも塩分摂取量管理の協力を得ましょう。家族に協力が得られる場合には、減塩調味料の提案や薄味調理の方法を伝える他に、食べたいものを我慢しすぎることよりも、食べるよろこびが持てる大切さを伝え、前後の食事で調整するなどの工夫も一緒に考えましょう。
2、1日の水分摂取量の目標を明確にしましょう。
医師から摂取量の制限について指示がある場合は、指示量が守れるような工夫が必要です。よく使うコップやペットボトルにメモリをつけておいたり、あらかじめ水筒やポットに1日量を準備してみたり、食事に含まれる水分量を把握しておくことなどができれば管理もしやすく、摂取量オーバーによる心不全症状の悪化を防ぐとこができると思います。
在宅生活では自宅で飲む量の把握はできても、外食中におしゃべりに夢中になってサービスの水を無意識のうちに飲みすぎてしまったり、飲酒の席でついつい飲みすぎたりしてしまうという落とし穴もあります。急にむくみが出たり、体重が増えたりと普段に増している心不全の症状に気づいた時は、前日の生活に普段と違うことはなかったか?と一緒に振り返ることが大切です。「食事には気をつけていたけど、無意識に飲みすぎていた!」と気づけることがあるかもしれません。バイタルサインやむくみに普段との違いがあれば注意深くアセスメントしましょう。
3、最低週に1回は体重を計りましょう。
心不全が悪化したときにわかりやすく目に見える症状としてむくみ(浮腫)があります。足首やふくらはぎ、手の指や手の甲が「パンパンに腫れている」、「足が重くて歩きにくい」そんな訴えがあればまず心不全の悪化を疑います。これは、心臓の働きが鈍くなった結果、体内の水分が適切に排泄されることが難しくなり体内に貯留している状態です。そのため食べる量にかかわらず2kg、3kgと体重が増えていくことも珍しくありません。しかし、体内に貯留した体液が肺やお腹の中に溜まってしまう体質の方は、息切れがひどくなったり、消化不良で下痢を起こしたりすることもあります。体重が増えているのに、目に見てわかるむくみがない方は要注意です。心不全悪化の兆候を見逃さないためには、普段の体重を知った上で「今日の体重は適切か」どうかのアセスメントが必要です。体重コントロールができていない、明らかな呼吸状態の悪化があるなどの場合は、利尿剤での治療が必要になることが多いのでできるだけ早く主治医に相談しましょう。
4、確実にお薬が飲める工夫をしましょう。
入院中は、時間になれば看護師がお薬を運んでくれます。しかし、退院すると規則正しい時間に食事を摂り、時間を決めて薬を飲むことの継続が難しい方がたくさんいらっしゃいます。入院中に朝1回/日の薬に調整してもらうことが理想ですが、1日3回飲まないといけない方は、飲み忘れが無いような工夫をしましょう。例えば、お薬カレンダーやお薬ケースは身近で買うことができるのであらかじめ1週間分をセットしておくのもよいですね。
利尿剤を飲むと排尿の量が増え、トイレにばかり行くことや失敗が気になりストレスになることから自己判断で中断される方もいらっしゃいます。自己中断は病状が悪化し、生命の危険を及ぼすことになる可能性もあります。日常生活に大きな影響があれば、一度医師に相談してみましょう。
5、脈拍や血圧の変動に注意しましょう。
心不全治療中の患者さんの多くは、血圧手帳を持ち、自己測定をしている方も多くいます。脈拍や血圧は、測定時間や活動量に大きな影響を受けるのでなるべく決まった条件での測定ができるように調整しましょう。測定値に異常があった時には、その時に感じた自覚症状や考えられる要因も記録しておくと次の受診時に医師に報告・相談画しやすくなります。お薬(利尿剤や降圧剤)の副作用で血圧が低値になったり脈拍が増えたり、不整脈が出ることもあります。心不全からくる症状は生命の危機に直結することも多いので、かかりつけ医や救急車、家族など緊急時の連絡先をわかりやすく表示することも大切です。
6、活動と休息のバランスを取りましょう。
「歩かないと弱る」「少しくらいの無理は大丈夫」という思いから活動量が増えてしまうことは、心不全症状の悪化を招くと言われています。散歩の距離や運動はもちろん、連続した家事や入浴動作も心臓に大きな負担になることがあります。家事を午前と午後に分けてみる、浴槽に浸かる時間を短くしてみる、入浴前後には横になって体を休めるなどの工夫が必要です。また、買い物で重たい荷物を持つ、洗濯物を干すといった両手を使う動作も心臓への負担が大きいため注意が必要です。自覚症状が伴わず活動の調整が難しい場合は、脈拍数の変動など数字を見ながら調整することも効果的です。
入退院を繰り返し予後が短くなっていく慢性心不全患者の多くは、自宅での生活の中で、症状コントロールのコツを取り入れることが難しい環境にあったと思います。在宅サービスで支援を受けながら、これらのコツをひとつでも多く取り入れ、悪化兆候の早期発見ができれば、よりQOLの高い生活を送ることができるのではないかと思います。
まとめ
心不全は、高齢になると多くの人が体験する病気のひとつであるといわれています。入院中に看護師から食事管理やお薬について、日常生活の注意事項についてなど教育を受けることが多いと思いますが、生活の中に取り入れ習慣になるまでは周囲の支援が必要です。自分らしさを大切にした生活を送りながら急性憎悪や次の入院を予防するために、患者さんを取り巻く在宅サービス者が、アセスメントやケアのコツを共有することでお手伝いができればいいなと思います。
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