大学病院で働いている看護師の実態について

大学病院で就業したい方は、最先端の医療に関心のある方ではないでしょうか。
大学病院では最先端の医療を提供し、医療の最前線に立つ場所ですが、憧れだけで勤めるには非常に大変な現場ですので、メリットやデメリットについてお知らせします。

まず、大学病院の看護師になる方法です。
これは、他の病院と大きく変わらないと思うのですが、
国家試験程度の試験
小論文
面接
上記の試験に受かることです。

ですから、大学病院の看護師になること自体は難しくないと思います。
それよりも、大学病院で働き続ける方法が重要になると思いますので、そちらを重点的にお知らせしたいと思います。

大学病院は他の病院と比べて以下の点で大きく異なります。

○教育、研究の機能も兼ね備えている

したがって、学生がたくさん来ます。
学生指導やカンファレンスも業務に含まれますので、看護業務のみに集中したい方にはストレスかもしれません。

○研修医が多い

したがって、血管確保などは研修医が行います。
私のいた大学病院では採血や血管確保ができるようになる為には特別な研修の受講が必要でした。
他にも、多くの手技の殆どは研修医が実施するため、看護技術のスペシャリストにはなれません。
看護技術のスキルアップを望むならば、なんでも自分たちで実施しなければならない小さな病院での勤務をおすすめします。

次に、大学病院の看護師として特徴的だと思われる点をあげてみます（一般病院にもみられたこともありますが、大学病院では特に顕著だったと感じた点です）。

○研修が多い

時間外での受講必須な研修が月に2?3回あります。
私のいた大学病院ではポイント制で、ポイントが足りない場合はレポートの提出が必要でした。
また、毎月自分たちで病棟内研修を行っていました。
各担当数名がテーマを決めて資料を作成し、勉強会を開催します。先輩看護師が必ず参加して、開催している勉強会に対して意見や質問を述べてきますので、それらにもちゃんと答えられるだけの前準備が必要になります。
資料のコピペでは自分の理解も深まりませんし、先輩にもすぐにバレて質問攻めにされて泣きたくなることもありました。

○各キャリア（業務年数）ごとに必須のキャリアアップ研修がある

1年目は毎月で、実施した看護の共有や反省などでした。
年数が上がると、学生指導やプリセプター（後輩指導）の研修が一年を通じて実施されました。
また、各々で病棟の業務改善のための研究もありました。
もちろん研修や研究の準備は勤務時間外に行います。
それぞれ、発表はパワーポイントを用いて行いますので、最低限のパソコン技術も求められます。

○患者層が様々

貧富の差はもちろん、国籍を問わない患者様がいらっしゃいます。
裕福な方の中には医師に対してはおとなしくても、看護師のことは召使いのように考えている方も多くいらっしゃいました。
こちらに一切の非がなくても看護を否定されることも人間性を否定されることもあります。
私は数時間に渡って看護と人間性を否定され続け大学病院では働けなくなりましたので、他人に何を言われてもくじけない心の強さや落ち込んだときに相談できる相手がいることは重要だと思います。
ちなみに、看護師長は患者様の立場に立って、こちらの意見も聞き入れず、否定してきますので、上司が守ってくれることは期待しないほうがいいでしょう。
また、外国籍で日本で仕事をしていたり長年住んでいる方でも、医療用語は特殊なので伝わりにくいことがあります。
旅行で来られた方の場合は日本語が全く伝わらないこともあるので、日常会話程度の英語力は必要となります。

○サービス残業は当然

残業は自己申告制でした。
1年目に『残業が多いのは仕事の管理能力がないから』と植え付けられるため、主任や師長の許可がない場合はほぼサービス残業です。
はじめのうちは自分の仕事が遅いことが原因としてありますが、キャリアをつんでも、後輩のフォローや急患、急変対応、看護計画の評価などで定時で帰れることはまずありません。
私は2交代の職場でしたが、終電で帰れないこともしばしばありました。
ですから、家族がある場合は家族の理解と協力は必須です。
そのため、大学病院には若い看護師が多くいます。
未婚であっても、忙しすぎて日勤、夜勤を問わず、休憩を取れない日も多々ありますので、体力的に疲弊してしまい、あまり年齢を重ねた上で勤務を続けることは困難です。
外来でも整形外科や外科は混んでいて、19時ころまでは勤務していました（診療時間は16時まで）。
ですから、外来だからといって早く帰れるわけではありません。

○外来は1箇所を見ればいいわけではない

いくつかの外来を一度に見ることになります（眼科と耳鼻科など）。
したがって幅広い知識が必要です。
また、その日の状況で担当の外来が変わるため、事前準備ができないという実態もありました。
また、一方の外来看護を実施している際は別の外来が看護師不在となってしまうため、クレームにつながることもあり、視野を広く持って患者様をお待たせしないためのタイムリーな動き方が必要とされました。

○有給が取れない

毎月の公休も満足に取れない状況でした。
有給は病欠のときに使われていました。
有給を使い切って退職した人を私は知りません。

○連休が取れない

夏休み、年末年始休暇の希望は一応聞かれますが、3連休取れたらかなり運がいい方でした。
その代わり、連勤はあり、私は9連勤したことがあります。
日勤5日の夜勤2日で、さすがに倒れそうになりました。

○お給料がいい

残業代が出なくても、勤続10年未満でも手取りは毎月30万を超えていました。
また、ボーナスは夏と冬でトータル100万円は出ていました。
連休は取れませんが、夜勤明けの次の日を休みにして、スキーやスノボ、旅行にに行く人もたくさんいました。
私も年中ダイビングに通っていました。

○『今』の医療が学べる

院内の研修のみではなく、業者の実施する研修もたくさんありました。
業者の研修は病棟で多く使用される薬について、多い病気について、など、勤務をする上で知りたい情報をタイムリーに得られるので非常に有意義でした。
院外で開催される、多数の病院が集まるディスカッションにも参加できる機会があり、他院での情報を知ることで、現状の病棟看護をより質の高いものに改善することもできました。

○最新の機器が導入されやすい

最新の医療を提供するため、適宜最新の医療機器が導入されます。
もちろん、その際は業者からの勉強会があるので、最新機器でもキャリアを問わず、スムーズに業務に活用することができました。

○興味のあることを『研究』できる

病棟内で関心のあること、改善したいことについて、『看護研究』という形で自身で勉強し、認められれば業務内で活用することができます。
私は腎臓内科で写真付きの腹膜透析の接続手順のパンフレットを作成しました。
病棟で実際に腹膜透析を始めることになった患者様にはもちろん、外来で今後透析が必要な患者様に具体的なイメージをもっていただくことに貢献できました。
特に高齢の患者様にはスムーズに理解していただけて入院期間の短縮にもつながりましたし、新人看護師や異動してきたばかりの看護師の手技の理解のためにも非常に有効的でした。

○研修医が多いため、質問しやすく、医療的な理解も深めやすい

研修医は外来は持たず、病棟で勤務しています。
そのため、実施した手技や現在の病状について、質問しやすい環境があります。
研修医なので、難しい言葉ではなく、慣れない看護師にも十分に理解できるように解説してくれることがほとんどです。
図解までしてくれる先生もいました。

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